激闘後半
ディアブロの肉体が、環境に応じて変貌を遂げていく。
皮膚は硬質化し、関節は異様に歪み、まるで人の形を模した異形の化物となった。
「……おまえ、それで人のつもりか? 気持ち悪ぃぞ!」
ガイルは嘲りながらも、ぞっとするものを覚える。
「うるさい!!」
苛立ちをあらわにしたディアブロが、腕を鋭い刃へと変化させ、ヴィルへと襲い掛かる。
「頭に血が上ったら……おまえの方がよっぽど脳筋じゃねぇか!」
ガイルは笑う。だがその眼は、本気で戦いに狂う仲間を前に、皮肉と畏怖を混ぜ合わせていた。
ヴィルは魔力を纏い守ろうとするが、その力は触れた途端、瞬く間にディアブロに吸収されていく。
魔法の優位性は打ち消され、残るは純粋な肉体と技だけの勝負。
いかに剣神と呼ばれたヴィルとて、肉体のみで延々と戦い続ければ疲弊は避けられない。
鋼のような肉体にも、額には汗が滲み始めていた。
対照的に、ディアブロは全身に無数の裂傷を負いボロボロになりながらも、なお変態的な回復を見せる。
そして、その背後には未だ余力を残すガイルが立っていた。
「……っ」
ヴィルは静かに息を吐き、覚悟を決めたように全身の力を巡らせる。
その気配に、さすがのガイルも軽口を止め、瞳を細める。
「……あれはヤベェな。食らったら終わりだ……」
冗談を言う余裕は、もうなかった。
一方、ディアブロは距離を取り、息を整えつつ再生を図る。
その身体にガイルが治癒を流し込み、戦場の均衡を繋ぎ止める。
遠くでは、血に塗れたグレサスが立ち上がっていた。
自らの血を見下ろし、笑みを浮かべる。
「ほんとに……どこまでも……!」
その声には怒りと歓喜がないまぜになっていた。
次の瞬間、彼は己に治癒を施し、なお立ち上がる。
——この戦場に集う者たちは、ゲームの「最強キャラ」そのもの。
死属性を除く、あらゆる力を使いこなし、肉体と魔力を極めた「壊れ」の存在故のタフな戦いとなる。
戦場は一瞬の静寂を迎えたかに見えた。
だが次の瞬間、ヴィルは凄まじい速度でディアブロを掴み上げると、そのまま大地を揺るがす勢いで遠方へと投げ飛ばした。
「……っ、ちっ!」
吹き飛ばされるディアブロの姿を見て、ガイルは即座に理解する。
——引き剥がされた。
次の瞬間には、ヴィルの剣が自分へと迫っていた。
猛攻。
怪力と技が一体となり、嵐のような斬撃がガイルを襲う。
受け切ることは不可能。全身は切り刻まれ、肩からは力が抜け落ちていく。
「……くそが……。やれよ……」
ガイルは笑うように呟き、死を受け入れるように瞳を細めた。
だがその刹那——。
遠くに吹き飛ばされていたディアブロが激しい魔力を収束させ、ヴィルへと放つ。
それは確かに届いたはずの一撃。だが、死属性の加護を纏うヴィルの前で、光は無惨に霧散した。
「……バカな……」
ディアブロは愕然とする。
——このままではガイルは助からない。
そう誰もが思った瞬間、戦場に轟音が走った。
セバスが吹き飛ばされ、頭から血を流しながら地面を転がる。
追うように現れたのは、血に濡れた額を拭いもせず、なお狂気じみた光を宿したグレサスだった。
互いに頭突きを放ち合った末の姿。だがその眼は、まだ戦意を失ってはいない。
「はぁぁぁぁぁっ!!!」
グレサスは咆哮とともに、倒れかけのセバスへ渾身の一撃を振り下ろす。
だが刃は落ちなかった。
ヴィルが割り込み、鋭い金属音とともにその剣を受け止めていたのだ。
「……ヴィル」
グレサスは低く言い放つ。
「貴方はそちらで、決着をつけるべきでしょう」
「ふん……」
グレサスの眼はなおも血走っていた。
だがヴィルは一歩も退かず、言葉を重ねる。
「私は、そもそも決闘などしていません」
次の瞬間、ヴィルの蹴りがグレサスの体を吹き飛ばす。
宙を舞った騎士王は大地を抉りながら転がった。
その隙を逃さず、ディアブロはガイルの体を掴み取り、距離を取る。
「まだ終わっていないぞ……!」
回復の魔力を流し込み、ガイルの命を必死に繋ぎ止める。
——混沌はさらに広がり、戦場は誰も制御できない修羅場と化していた。




