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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を…。―(現在物語を大幅にリライト中)  作者: くりょ
レイズはリヴェルを知る

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化物達集う

再び、ガイルの周囲で膨大な魔力が一点へと収束していく。


先ほどまで怒りを露わにしていたその顔から、いつの間にか感情らしいものは消えていた。冷たく、無機質な瞳だけがヴィルを捉え、その掌へ集められていく魔力は周囲の空気そのものを歪ませるほど濃密なものへと変わっていく。


だが――その暴発を許すほど、ヴィルは甘くない。

「遅い」

短い声と同時に、ヴィルの姿が消えた。


次の瞬間にはガイルの目前へと踏み込み、抜き放たれた剣が横薙ぎに振り抜かれる。凝縮されていた魔力とガイル自身を覆う分厚い魔力障壁。その双方へ、ヴィルの一閃が真正面から叩き込まれた。


轟音。

魔力が弾け、衝撃が大地を走る。

ガイルの身体が宙へ浮き、そのまま数十歩先まで吹き飛ばされた。


同時だった


ヴィルがガイルへ踏み込んだ瞬間、セバスもまたディアブロとの距離を一気に詰めていた。

「ッ……!」

ディアブロは反射的に周囲の魔力を吸い上げ、自らを守るための力へ変換する。


だが。

「させますか」


セバスの大剣が振り下ろされた。

受け止めるのではなく、押し潰す。

そう表現した方が近かった。


凄まじい重量と膂力を乗せた一撃がディアブロの防御を上から叩き潰し、その身体ごと大地へと沈める。

地面が砕けた。

土煙が舞い上がる。

一瞬だけ、静寂が訪れる。


しかし。


それで終わるほど、この場に集まった者たちは生易しくない。


「……っつぅ……」


土煙の向こうから声が聞こえた。

ガイルだった。


ゆっくりと身体を起こし、口元についた血を親指で拭う。その表情には痛みこそ浮かんでいるものの、致命傷を負った者の顔ではない。


むしろ。

笑っていた。


「てめぇらが……アルバードかよ……」


ヴィルは答えない。

ガイルは自分の身体を軽く確かめる。

傷はある。

だが深くない。


先ほどの一撃を真正面から受けながら、結果として残ったものはかすり傷に近い。


そして少し離れた場所でも、砕けた地面の中からディアブロがゆっくりと身体を起こしていた。


「……なるほど」

口端が吊り上がる。

「この肉体と魔力があれば、問題はない」

その様子を確認したヴィルは、剣についた土埃を静かに払い落とした。


そして一歩。

前へ出る。


「帰れ」


低い声だった。

叫んでいるわけではない。


だが、その場にいる誰よりもはっきりと聞こえた。


「おまえたちが来た場所へ引き返せ。それができぬというのなら――その命で償わせるまでだ」


ヴィルの宣告とともに、空気が変わった。

ガイルの笑みが消える。


「……ほんと面白ぇな」


低く呟く。


「俺とディアブロを前にして……まだ自分が上だと思い込んでやがる。その態度がよぉぉ」


ガイルの瞳から、遊びの色が消えた。

先ほどまでとは違う。


明確な殺意。

本気でヴィルを殺すつもりの眼だった。


「よせ、ガイル!」

ディアブロが鋭く声を飛ばす。

「今は決戦の時ではない!」


だが。

ガイルはヴィルから目を逸らさない。


「知るかよ」


再び魔力が膨れ上がる。

ディアブロはその様子を見て、わずかに眉を寄せた。


「……仕方ない」


そう呟き、自らもセバスへ視線を向ける。

ヴィル。

セバス。

ガイル。

ディアブロ。


四人の強者が互いの間合いを測り始める。


そして。

その異常な魔力のぶつかり合いを――遠くから感じ取った者がいた。


空を切り裂くように、一つの影が戦場へ降り立つ。


着地と同時に土煙が舞い上がり、そこから一人の男が姿を現した。

グレサス。

王国最強の剣。

その姿を確認した瞬間、ヴィルの目が細くなる。


セバスもまた、大剣を握る手に力を込めた。

だが。

当のグレサスは、すぐには剣を抜かなかった。


まずは見る。

ヴィル。

セバス。

そして。


見覚えのない二つの強者。


一人は異常なほど巨大な魔力をその身へ宿している。

もう一人は――。


「…………」


グレサスの視線がガイルで止まった。

人間ではない。

少なくとも、まともな人間ではないだろう。

魔族に近いのか?

だが、自分が知る魔族とも何かが違う。

それでも。


間違いなくこいつも強い。

それだけは一目で分かった。

ガイルから漂う圧。

膨大な魔力。


そして何より、先ほどヴィルの一撃をまともに受けながら、ほとんど戦闘能力を失っていない。

もう一つは魔物のような存在。

ディアブロ。


こちらも尋常ではない。

セバスの大剣を受けたにもかかわらず、既に立ち上がっている。


魔力を吸収するような動きも見えた。

そして――。

その二人が。

ヴィルとセバスを相手にしている。


「…………」


ほんの数秒だった。

だが。

グレサスの中では、その数秒で十分だった。

ヴィル。

セバス。

この二人がアルバードにおける最大戦力であること。


少なくとも、今この場にいるアルバード側の戦力としては間違いなく頂点に位置する二人だ。


そして。

二人とも――ここにいる。

アルバード領内ではない。

屋敷でもない。

街でもない。

本拠地から離れた、この場所に。


しかも。

ヴィルの前には、あの二人がいる。

あの魔族紛いの男とディアブロ。


どれだけヴィルが強くても一人で簡単に処理できる相手ではない。

少なくとも、即座にアルバードへ戻れる状況ではなくなっている。


ならば。

残るのは――セバス。

グレサスの視線が、ゆっくりとセバスへ移る。


そして。

笑った。


(……なるほど)


偶然だった。

王国が用意した状況ではない。

あの二人と手を組んだわけでもない。

名前すら知らない。

だが。

だから何だというのだ。

敵が敵を食い止めている。

それならば。

利用すればいい。


ヴィルを、ガイルとディアブロが拘束する。

セバスは――自分が拘束する。


そうすれば。

今、この瞬間。

アルバードは。

二人の最大戦力を同時に失う。


グレサスの視線が、後方で待機している王国騎士たちへ一瞬だけ向けられた。

戦力差。

距離。

帰還に要する時間。


ヴィルとセバスがこちらを振り切る可能性。

それらを頭の中で瞬時に組み立てていく。

そして。

結論が出た。


――今だ。


アルバードを攻めるなら。

これ以上の好機はない。

グレサスはようやく剣の柄へ手を置いた。


「アルバード」


その声に、全員の視線が集まる。

そしてディアブロを見た。


「その化物……」

「……あ?」

続いてガイルを見る。

「そして魔族の紛い物は――俺に寄越せ!」


空気が凍った。

「…………」

ガイルの眉が動く。


そして。

「だれがぁぁ!?……紛い物だとォォ!?」


怒声とともに、魔力が爆発的に膨れ上がった。

「よせ、ガイル!」

ディアブロが止めるが、既に遅い。

「誰が紛い物だ! もう一回言ってみろ、この野郎!!」


だが。

グレサスはガイルを見ていなかった。

煽った。


ただ、それだけ。

あの男がどちらへ怒りを向けるのか。

そしてヴィルとの戦いを止めるつもりがあるのか。

それを確かめただけだった。

案の定。


ガイルは完全に戦闘態勢へ入っている。

ヴィルが静かに一歩前へ出た。


「私一人で十分です。下がれ、グレサス」


その一言。

グレサスの口元が、さらに吊り上がった。


――十分。


ならば。

そうしてもらおう。


「ならば俺が、いまここで叩き斬る!」


グレサスが踏み込む。

一見すればガイルへ向かったように見えた。

だが。

その軌道へ。

巨大な剣が割り込んだ。


「止まれッ!」


セバス。

刹那。

剣と剣が激突した。


轟音。

衝撃波が爆ぜ、地面の砂と小石が一斉に吹き飛ぶ。


外で控えていた王国騎士たちも思わず身体を伏せる。


「ぐっ……!」


グレサスの身体が後方へ弾かれる。

だが。

着地した男は――笑っていた。


思った通りだった。

セバスは止めに来る。


アルバードへ敵意を向ければ、この男は自分を放置できない。

ならば。

これでいい。

ヴィルの前にはガイルとディアブロ。

自分の前にはセバス。


アルバード最大の二枚が。

完全に分断された。


グレサスは剣を構えたまま、背後へ叫んだ。

「デュラン!」

その声に、王国騎士たちの中からデュランが顔を上げる。

「……グレサス?」

「聞け!」


グレサスの声が戦場へ響く。


「俺がここでセバスを止める!」

デュランの表情が変わった。

「おまえたちは――アルバードを落とせ!」

「…………!」


一瞬。


騎士たちの動きが止まった。

意味を理解したからだ。

これは小競り合いではない。

偵察でもない。


アルバード領へ武力を向ける。

その命令だ。


「グレサス! それは――!」

デュランが声を上げる。

だが。

グレサスはセバスから目を離さない。


「見れば分かるだろう!」


剣を構えながら叫ぶ。


「ヴィルはあの二人から離れられん! セバスは俺がここで縫い付ける!」


そこで初めて。

デュランも理解した。


ヴィル。

セバス。

アルバードを支える二つの巨大な戦力。

その二人が。


今。


同時に本拠地から離れている。

しかも。

帰れない。


「こんな好機が――もう一度あると思うか!」


グレサスの言葉に、騎士たちが息を呑む。

「行け!」

その命令で。


王国騎士たちは動いた。

一人。

また一人。

戦場から離脱し、進路をアルバードへと変えていく。

セバスの目が鋭くなる。


「貴様……!」

ようやく意図を理解した。

グレサスは最初から。

ガイルたちを倒すために割り込んだのではない。

利用したのだ。


あの二人がヴィルを引き付けている、この状況そのものを。


「そういうことか、グレサス……!」


セバスの殺気が膨れ上がる。

だが

もう遅い。


グレサスは剣を肩へ担ぎ、愉悦を隠すことなく笑った。

「まずはおまえだ、セバス」

そして。


剣先を向ける。


「ここから一歩も動かすつもりはない。おまえを斬り伏せた後で――ヴィルの首も落としてやろう」


セバスは答えない。

ただ。

大剣を構えた。


グレサスがここにいる限り。


王国騎士たちを追うためには、この男を突破しなければならない。


そして、その頃。

ガイルはヴィルを指差しながら笑っていた。


「俺とディアブロを、一人で十分だと……?」


口元が大きく吊り上がる。


「なぁ、ディアブロ! ここまでコケにされて引けるわけねぇよなぁ!」


「…………」


ディアブロはすぐには答えなかった。

既に感じ取っていた。

先ほどまで周囲にいた王国騎士たちの魔力が、次々と遠ざかっている。


その方向は。

アルバード。


「……なるほど、そうきたか」


ディアブロもまた、状況を理解した。

王国が動いた。

そして。


それを止めるべきヴィルとセバスは、ここにいる。

ならば

自分たちにとっても。

もはや引く理由はない。


ディアブロは静かに口端を吊り上げる。


「……あぁ」


そして。

ヴィルを見る。


「引く理由は、もはや無い」


魔力が膨れ上がった。


「ならば良い。ここで終わらせよう。アルバードも王国も……」


ヴィルは何も答えない。

ただ。

剣を握る手へ力を込めた。

遠ざかっていく王国騎士たち。


追うことはできない。

目の前には。

ガイル。

そしてディアブロ。


背後では。

グレサスとセバス。


偶然が重なり。

敵と敵が互いを利用し。

誰一人として同じ目的を持っていないまま。

最悪の形で。


戦の構図が完成した。


ヴィル――対――ガイル、ディアブロ。


セバス――対――グレサス。


そして。


二人の最大戦力を失ったアルバードへ向かう――王国騎士たち。

グレサスは剣を構えながら笑う。


彼にとって。

この戦いは偶然ではなくなっていた。

目の前に転がり込んできた偶然を。

勝機へと変えた。

アルバードの二大戦力が揃って領外にいる。

その片方を、魔族たちが食い止めている。


ならば。


もう片方を自分が止めればいい。

それだけのことだった。

大地を揺るがす死闘が。


そして――アルバードを巻き込む新たな戦火が。

ついに幕を開けた。

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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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