そして舞台は急速に動き出す
ある日、アルバードの空を震わせるような気配が訪れた。
魔族領から、巨大な二つの魔力の波動が轟きながら空を渡ってくる。
ヴィルは静かに天を仰ぎ、隣でセバスも同じ方向を見上げる。
クリスも気付き、レイズもその圧に息を呑んだ。
遠く王国の地においても――グレサスはその気配を察知していた。
「……間違いない。奴らは、この地を目指している。」
最強の剣神である彼の直感が、迫る危機を告げていた。
ヴィルはすぐに判断し、落ち着いた声でセバスに告げる。
「あれは……我らで止めねばならぬものだ。」
セバスも頷き、静かに背に背負っていた巨大な大剣を解き放つ。
普段は決して晒すことのない“本当の獲物”。それはただの剣ではなく、彼の誇りそのものだった。
ヴィルも武器を取り、共に前へ歩み出す。
二人はすでに覚悟を固めていた。
「レイズ」
ヴィルは振り返り、短く告げる。
「あれは、私とセバスで必ず止める。――お前は、ここを守れ。」
その言葉に、レイズは強く頷く。
胸の奥で確信していた。
――あの気配は、間違いなくディアブロ。
もう一つは、きっとガイル。
だが、恐れる必要はない。
いまのヴィルとセバスなら、死属性の加護を受けた二人なら、余裕で制圧できるはずだ。
だがレイズは気付いていなかった。
ヴィルはすでに、限界を迎えていたことを。
レイズは信じる。
――ヴィルとセバスなら必ず勝てる。
死属性の加護を持つ二人がいれば、敵はもはや脅威ではないと。
しかし、彼は気付いていなかった。
ガイルもディアブロも、すでに彼の知る歴史の姿を大きく越えていることに。
彼らは「命脈の泉」で魔力を犠牲にし、肉体を研ぎ澄ませていた。
その変化を知らぬまま、レイズは安心しきっていた。
未来を知るはずの彼自身が――歴史の改変に取り残されていたのだった。




