女の争い
レイズが疲れた身体を横たえたとき、ディアナが膝をつき、静かに水差しを差し出した。
「喉が渇いているでしょう、レイズ様。」
その自然な優しさにレイズが手を伸ばそうとした瞬間、リアノが立ち上がる。
「それなら、私がやります!」
声はいつになく鋭かった。
しかしディアナは一歩も引かず、青い瞳を真っすぐにリアノへ向ける。
「私は私の誇りにかけて、レイズ様を守ると決めています!」
リアノはその言葉に顔をしかめ、
「ですが、あなたは王国の方ではありませんか……!」
ディアナは強い意思を宿した声で言い返す。
「そんな問題ではありません。レイズ様は私と信頼を結びました。それに王国は関係ないのです!」
その重い言葉の応酬に、少し離れた席で本を読んでいたイザベルがちらちらと視線を向け、
「……なにやってんのよ。レイズくんの顔が面白いことになってるじゃない。」
と、ため息混じりに呟く。
実際、レイズは「えっと……その……」と困惑の極みにあり、視線を宙に泳がせていた。
リアノはなおも食い下がる。
「私は一番近くでレイズ様をお守りするんです!」
するとディアナは、リアノをまっすぐに見つめて告げる。
「あなたがレイズ様に恋心を抱いているのは、知っています。だから、私が守るので安心してください!」
「な、な、な、なにを言ってるんですかぁぁ!!」
リアノは顔を真っ赤にし、両手をぶんぶん振って否定するが、その姿はまるで図星を突かれたようだった。
イザベルはその光景に目を細め、心の中で(やっぱりリアノも……そういうことね)と呟くと、
本を閉じて立ち上がった。
「レイズくんの隣に立つのは私です。父とも約束をしています! それにレイズくんも、私をずっと守るって言ってくれたんだから!」
女三人の激しい三つ巴が始まる。
その横でリアナが軽い調子で口を開いた。
「みんな、レイズ様のことが好きなんですね。あ、私もレイズ様のこと好きですよ?」
その一言が火に油を注ぎ、場の空気はさらに熱を帯びる。
レイズは、その光景を前にただ苦笑するしかなかった。
彼女たちにとって、いやアルバードにとって、自分がどれほど大切な存在かは理解しているつもりだった。
だが彼女たちの想いが、アルバードとはまったく関係のない方向に向かっていることだけは、まだ知らないでいた。




