尊厳を取り戻したレイズ。
リアナが俺の体を拭いている最中、不意に声をあげた。
「――当主様ぁぁ!!」
その真剣な声に、俺は一瞬ギョッとしたが……力の抜けたように、ぼそりと返してしまった。
「ん……なぁに……もう、なんでもいいんだよ……」
疲労でぼやけた頭から漏れた、諦めの言葉。
リアナの目に涙が浮かぶ。
「当主様……お身体が、こんなにも縮んでしまって……」
俺は、はっと顔を上げた。
(――そうか! ついに……痩せたんだ!)
胸を張り、尊厳を取り戻すように言い放つ。
「どうだ! 痩せたんだぞ! すごいだろ! きっと嬉しいだろう!」
だが――返ってきたのは歓声ではなかった。
「……こんなにも、大変な鍛錬をなさったんですね……」
リアナの瞳にあったのは、喜びではなく、純粋な“心配”の涙。
周囲の使用人たちも次々と声をあげる。
「そ、そんな……当主様が……」
「お身体が……」
その目はどれも驚愕と不安で満ちていた。
全員にまじまじと見つめられ、俺は顔を真っ赤にして叫んだ。
「……ねぇ! 早く服を着せてぇぇぇ!!!」
ようやく服を着せてもらい、俺は胸を撫で下ろした。
裸よりはずっとマシだ。……だが、着心地に妙な違和感があった。
「……ん? なんか緩いな」
確かに布が余っている。
(おぉ……これはやっぱり痩せた証拠だ!)
そう内心でドヤ顔を決めつつ、歩き出したその時――
ずるっ。
ズボンがずり落ち、尻がちらりと覗いた。
「……っっ!!」
一瞬で顔が真っ赤になる。
背後からは使用人たちのざわめき。
リアナとリアノの頬もみるみる赤く染まっていく。
「だ、だれかぁぁぁ!! 助けてくれぇぇぇぇぇ!!!」
訓練場での雄叫びよりも大きな声が、屋敷に響き渡った。




