表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を、今度こそ覆す―(現在物語を全話を丁寧に修正しています。180-189話修正、大幅に加筆しました。)  作者: くりょ
レイズを知る。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/792

だ、だれかタオルを、、

先に湯から上がったヴィルは、何事もなかったかのように静かに姿を消していた。


 残されたのは、湯船に浸かるレイズただ一人。


「……あぁ、極楽だ……」


 肩まで湯に沈み込み、大きく息を吐く。


 全身を包み込む温もり。

 心地よい疲労感。

 何も考えずにいられる至福の時間だった。


 だが――ふと手を握ろうとした瞬間。


「はぁ……力が入らねぇな……」


 苦笑が漏れる。当然だった。

 一日中、木刀を振り続けたのだ。


 腕は痺れ、肩は重く、

 指先にさえ力が入らない。

 過酷な鍛錬の代償である。


「今日はもう寝るしかないな……」


 そう呟きながら、ゆっくりと湯から立ち上がる。そして脱衣所へ足を踏み出した、その瞬間だった。

 入り口に立っていた二人の少女と目が合う。


 リアナ。

 そしてリアノ。


「…………」

「…………」

「…………」


 時が止まった。

 三人の視線が交差する。

 沈黙。 静寂。

 そして次の瞬間。それはそれは美しく。

 どこまでも透き通った悲鳴が脱衣所に響き渡った。


「キャーーーーーーーーーーーッ!!!!!」


 リアナでもない。

 リアノでもない。

 ――レイズの声だった。


◇◇◇


「キャーーーーーーッ!!!」

 悲鳴は屋敷中へ響き渡った。


 当然、騒ぎを聞きつけた使用人たちが次々と駆けつけてくる。


「な、何事ですか!?」

「お当主様のお声が!」

「大丈夫ですか!?」


 脱衣所の扉が開かれ、

 集まる使用人たち。

 そして彼らが見たものは――


 全裸で立ち尽くすレイズだった。

「…………」

「…………」

「…………」


 空気が凍る。

 レイズの頭も真っ白になる。

(終わった……)


 人生が終わった気がした。

 羞恥心が限界突破する。

 だが、当主としての威厳だけは捨てられない。

 レイズは震える唇で静かに告げた。


「……だ、誰か……タオルを……持ってまいれ……」

 威厳など欠片も残っていなかった。

「は、はいっ!!」


 真っ先に反応したのはリアナとリアノだった。 二人は慌てて駆け寄る。


「レイズ様、失礼いたします……」

「すぐにお召し物をご用意いたしますので……」


 左右から丁寧に身体を拭かれる。

 その手つきは優しい。

 優しいのだが――


(やめてぇぇぇぇぇ!!!)


 周囲には使用人たちがずらりと並んでいる。

 誰も笑わない。

 誰も茶化さない。

 ただ真剣な顔で見守っている。

 それが逆に辛かった。

 あまりにも辛かった。

 もはや公開処刑である。

 レイズは涙目になりながら俯く。

(なんで俺だけこんな目に……)


 誰にも届かない心の叫びだった。

 その頃。


 一人のメイドが廊下の先で立ち止まっていた。

「……今の声は……」


 聞き覚えのある声だった。

 あまりにも懐かしく。

 あまりにも忘れられない声。


「今のは……レイズ……なのですか……?」


 呆然と呟く。

 すると背後から静かな声が響いた。


「リリアナ」


 振り返る。

 そこに立っていたのはヴィルだった。


「ヴィル様……」


 ヴィルは穏やかな表情のまま続ける。

「少し話があります」


 その言葉にリリアナは小さく目を伏せた。


「……えぇ」


「わかりました」

 そうして二人は静かにその場を後にする。

 メイド長――リリアナ。


 彼女もまた、本来のレイズと深く関わってきた人物の一人だった。

 だが。

 今のレイズはまだ知らない。

 この屋敷には――


 自分が思っている以上に、本来のレイズを想い続けている者たちがいることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ