↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を…。―(現在物語を大幅にリライト中)  作者: くりょ
レイズを知る。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/357

尊厳を取り戻したレイズ。

リアナが丁寧にタオルを動かしていた、その時だった。

「――当主様ぁぁ!!」


突然の大声。

俺は思わず肩を震わせる。

だが、鍛練と羞恥の疲労で思考は半分溶けていた。

「んぅ……なぁに……」


力なく返事をする。


「もう……なんでもいいんだよ……」


どこか悟ったような声。

その姿を見たリアナの瞳が大きく揺れた。


「当主様……」


ぽろり。

涙が零れる。


「お身体が……」


震える声。


「こんなにも縮んでしまって……」

「……へ?」


俺はゆっくり顔を上げた。

そして自分の身体を見る。

少し緩くなった服。

以前より締まった腹。

引き締まり始めた輪郭。


――理解した。

(そうか)

(ついにか)

(ついに俺は――)


感動で震える。

そして勢いよく立ち上がった。


「どうだぁぁぁ!!」


両腕を広げる。


「痩せたぞぉぉぉ!!」


堂々宣言。


「すごいだろ!?」


胸を張る。


「嬉しいだろ!?」


自慢げである。

非常に自慢げである。


だが。


返ってきたのは拍手ではなかった。

リアナは涙を拭いながら言う。


「こんなにも無理をなさって……」

「え?」


使用人の一人が口元を押さえる。


「当主様が……」


別の者も目を潤ませる。


「そこまで追い込まれていたなんて……」

「え?」


空気がおかしい。

全員がおかしい。

喜んでいない。

誰も喜んでいない。


むしろ。

全員本気で心配している。


「え? なんで?」


理解できない。

痩せたんだぞ?

むしろ喜ぶところだろ?

だが周囲の反応は真逆だった。


「当主様ぁ……」

「ご無理を……」

「もっとお休みください……」


どんどん空気が重くなる。

そして気付く。

自分はまだ裸だった。

使用人たちの視線が一斉に集まる。

俺は一瞬で顔を真っ赤にした。


「ねぇぇぇぇぇ!!」

両手で身体を隠す。

「早く服を着せてぇぇぇぇぇ!!」


悲鳴が屋敷中へ響き渡った。



数分後。


ようやく服を着せてもらった俺は、深い安堵の息を吐いていた。


「ふぅ……」


裸よりは百倍マシである。

尊厳が守られた。

たぶん。きっと。しかし。


歩き出そうとして違和感に気付く。

「ん?」


腰回りが妙に軽い。

「なんか緩くないか?」


視線を落とす。

服に余裕がある。

以前より明らかに余っている。

俺の顔がにやけた。

(おぉ……)

(やっぱりだ)

(痩せた)

(俺、痩せた)


心の中で勝利の鐘が鳴り響く。

これは革命である。

歴史的快挙である。


アルバード家始まって以来の大事件である。

俺は満足げに歩き出した。

その瞬間。


ずるっ。

「……あっ」


嫌な感触。

遅れて理解する。

腰が軽い。

非常に軽い。


そして。

ズボンが落ちた。


「…………」


沈黙。

屋敷の空気が止まる。

俺も止まる。

使用人も止まる。

世界が止まる。


そして。


リアナの顔が真っ赤になった。

リアノも真っ赤になった。

使用人たちも慌てて視線を逸らす。

俺は数秒かけて現実を理解する。

理解した。


完全に理解した。

「だれかぁぁぁぁぁぁ!!」


両手で必死に押さえる。

「助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


訓練場での雄叫びすら超える絶叫が、アルバード家に響き渡るのだった。



てか――


さっきまで平然と俺の裸を見てたくせに!!

なんで今さら恥ずかしがるんだよ!!

そこは恥ずかしがるなよ!!

順番がおかしいだろうがぁぁぁ!!!


俺の叫びに、リアナとリアノはさらに顔を赤くする。


リアノは両手を胸の前で握りしめ、もじもじと視線を泳がせた。


「い、いえ……その……」


言葉が続かない。

耳まで真っ赤だ。


「も、申し訳ございません……!」


深々と頭を下げる。


「謝るなぁぁぁぁぁ!!!」


俺は即座に叫んだ。


「なんでそこで謝るんだよ!!」

「いや、でも……」

「でもじゃない!!」

「申し訳ございません……!」

「だから謝るなってぇぇぇぇ!!」


リアノは完全に混乱していた。

リアナも慌てて駆け寄る。


「も、申し訳ございません当主様!」


「お前もかぁぁぁぁ!!」


増えた。

謝罪する人間が増えた。

全然解決していない。

むしろ悪化している。


使用人たちもどうしていいか分からず右往左往している。

誰もズボンを直そうとしない。


なぜだ。


今やるべきことは明らかだろう。


「誰か!!」


必死にズボンを押さえながら叫ぶ。

「まずはこれを何とかしてくれぇぇぇぇぇ!!!」


その悲痛な叫びと、

「申し訳ございません!」


という謝罪の声だけが、

こうして静かなアルバード家にいつまでも響き渡るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。