ガルシアとイザベルの再会
こうして一同のやり取りは幕を閉じた。
――その後。
イザベルとガルシアはようやく再会を果たす。
ガルシアは震える両手で娘を抱き締め、堪えていた涙を溢れさせた。
「イザベル……すまなかった……! お前を、こんな争いに巻き込んでしまって……」
イザベルもまた目に涙を浮かべ、父の胸へ顔をうずめる。
「お父様……私は大丈夫です」
震える声でそう答える。
「お父様が私のことも、おじいさまのことも……そしてアルバードのことも考えてくださっていたのは、ちゃんと分かっています」
そっと顔を上げる。
「最善を選んでくださったのですよね……?」
ガルシアは娘の肩を強く握り締めた。
「ああ……」
苦しそうに目を閉じる。
「だが私は間違えていた」
震える声。
「アルバードを信じ切ることができなかった……」
そして。
ゆっくりと視線を向ける。
その先にいたのはレイズだった。
ガルシアは深く頭を下げる。
「レイズ……様」
その声には後悔と感謝が混ざっていた。
「どうか……私のかわいい娘をお願いします」
一拍。
そして。
「この娘は……貴方に差し上げます」
「……は?」
レイズは固まった。
あまりにも唐突だった。
しかしガルシアは真剣だった。
「イザベルが貴方と共に歩むと決めた理由……今なら分かります」
真っ直ぐレイズを見る。
「レイズ様」
力強く言う。
「貴方なら必ず娘を守ってくださる」
「私はそう確信しました」
イザベルの顔が一瞬で真っ赤になる。
「ちょっ……!」
慌ててガルシアの腕を引っ張る。
「お、お父様ぁぁぁ!?」
顔を真っ赤にしながら叫ぶ。
「なに言ってるのですか!?」
さらに引っ張る。
「勝手に話を進めないでくださいぃぃ!!」
場にいた者たちの間に、思わず笑いが漏れた。
つい先ほどまで重苦しい空気に包まれていたとは思えない。
涙と笑いが入り混じる、不思議な空気だった。
そんな中。
レイズは黙っていた。
胸の奥には、まだ怒りが燻っている。
メルェのこと。
魔族との血の約束。
レオナルディオのこと。
忘れられるはずもない。
だが同時に。
脳裏を過ったものがあった。
イザベルへ投げつけてしまった冷たい言葉。
拒絶するような態度。
あの時の悲しそうな表情。
そして理解する。
自分は彼女を傷つけたのだと。
ガルシアの言葉を前に。
レイズは否定できなかった。
だからこそ。
深く息を吐き。
重みを込めて答える。
「……ああ」
短い返事。
だが確かな意思があった。
レイズはイザベルを見る。
「イザベルは」
一拍。
「言われなくてもな……」
真っ直ぐ告げる。
「俺がずっと守る」
静かな言葉だった。
そこに色恋の響きはない。
愛の告白でもない。
ただ。仲間を守る。家族を守る。
そう決めた男の誓いだった。
ガルシアは目を見開く。
そして。
堪えていた涙を隠そうともせず微笑んだ。
「……なんと立派な御仁に……」
震える声。
その言葉を最後に。
ガルシアは娘を託す安堵と感謝を胸に、静かにその場を後にした。
残されたイザベルは、ただ呆然としていた。
きっと。
レイズはそういう意味で言ったわけではない。
それくらい分かっている。
分かっているのに。
「……ずっと守る」
その言葉だけが胸に残る。
温かく。優しく。何より嬉しく。
イザベルは思わず俯いた。
頬が熱い。
隠しきれないほどに。
レイズの不器用な優しさ。
その全てが愛おしい。
イザベルは胸元をぎゅっと押さえる。
そして誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。
「……ずるいです…お父様も…レイズ君も」
だが、その表情は。
これまでで一番幸せそうな笑顔だった。




