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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を…。―(現在物語を大幅にリライト中)  作者: くりょ
レイズは強くなる

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グレサスの提案

しばらくの静寂が流れた。


誰も口を開かない。

レオナルディオは死んだ。

だが、その死によって全てが終わったわけではなかった。


むしろ残された者たちは、これから先の答えを求められていた。

そんな重苦しい空気の中、不意にグレサスが口元を歪めた。


「フッ……」


小さく笑う。

そして、いつものように軽口を叩くような口調で言った。


「これが――我が王国が招いた顛末だと、俺が国へ戻って伝えてやろう」


誰も口を挟まない。


「アルバードは力を失うどころか、新たな力を得てより巨大になった」


そう言って肩をすくめる。


「崩すことなどできはしない」


その視線がヴィルへ向いた。


「さて、どうする?」


口元に笑みを浮かべる。


「俺を見逃すか。それとも、ここで決着をつけるか」


一拍置く。


「好きに選べばいい」


静寂。

グレサスの視線を受けながら、ヴィルは黙っていた。

ここでグレサスを討つ。

それは難しいことではない。

ヴィルも理解している。


セバスもいる。


アルバードの戦力だけを見れば十分可能だ。

だが、その先はどうなる。


王国との全面戦争。

失われる命。

増え続ける憎しみ。


勝利したとしても、その先に残るのは新たな怨嗟だけだ。


そしてヴィルの胸を最も強く縛るのは、一人の男の存在だった。


――リヴェル。


かつての最愛の息子。

人も魔族も共に笑い合える未来を夢見た男。

ヴィルはその願いを忘れたことがない。


だからこそ感情に任せて剣を振るうことはできなかった。


アルバードの不滅を示す。

それは今のヴィルにとって最も重要な使命だ。

だが、本当に不滅とは力なのか。


敵を斬り伏せることなのか。

ヴィルは静かに目を閉じた。


そして思い出す。


レオナルディオの言葉を。

あの男が望んだものを。


人と魔族を裂き、憎しみを増幅させ、復讐の連鎖を生み出すこと。


もし今ここで剣を抜けば、アルバードは勝つだろう。


だがそれは同時に、レオナルディオの計画を完成させることに他ならない。


ヴィルはゆっくりと目を開いた。

そして静かに剣先を下ろす。


周囲の空気が揺れた。


「――違う」


低く、しかし揺るぎない声だった。


「ここで血を流すのは、我らの望みではない」


グレサスが目を細める。


「確かに力を示すことはできる。だが貴様らのやり口は他人を焚きつけ、憎しみを撒いた。それに乗せられて我らが刃を交えれば、結局は貴様らの計略が完成するだけだ」


そしてヴィルは言い切った。


「アルバードの不滅を証明するならば――刃ではなく、真実を明らかにすることでなければならない」


その言葉に続くように、セバスも静かに口を開く。


「真実は隠し通せません。ですが暴力で覆い隠せば、ただ悲劇を繰り返すのみです」


セバスはグレサスを見据える。


「私たちがなすべきことは、証拠を示し、関係者の責任を明確にすること。それこそが未来へ繋がる道となる」


グレサスは鼻で笑った。


だがヴィルとセバスの目を見た瞬間、その笑みは僅かに歪む。


武の世界なら理解できる。

力で示すこともできる。


しかし真実を公にし、世間へ向き合い、裁きと説明を行う。


それは剣では解決できない強さだった。

ヴィルは最後に告げる。


「我らはアルバードを守る。だがその守りは、血で血を返すことで成るものではない」


視線が全員へ向けられる。


「真相を明らかにし、癒えぬ怨嗟を暴き、未来の惨劇を防ぐ。それこそが我らの示す“不滅”だ」


重い沈黙が落ちた。


「ここで戦うか。真実を明かすか」


グレサスを見据える。


「おまえが選べ」


誰も動かない。


誰も言葉を発しない。


それは力を誇示する容易い勝利を捨て、より困難で、より尊い道を選ぶ宣言だった。


だが――


レイズだけは違った。


怒りはまだ消えていない。


拳を握る。


血が滲むほど強く。


「……結局」


震える声が漏れる。


「何も救えなかったじゃないか……」


誰も口を挟まない。


「メルェも……村の人たちも……魔族だって……」


唇が震える。

そして感情が溢れ出した。


「全部だ!!」


怒声が部屋に響く。

ヴィルはその叫びを真正面から受け止めた。


否定しない。

叱責もしない。

ただ静かに語りかける。


「レイズ」


優しい声だった。


「違います」


レイズが顔を上げる。

ヴィルは穏やかな眼差しのまま続けた。


「お前は、すでに救っている」


「……何を」


掠れた声。


「怒りに飲まれず、ここで剣を振り下ろさなかった」


その言葉にレイズが目を見開く。


「それだけで新たな血は流れなかった」


ヴィルの声は静かだった。

だが力強かった。


「お前が踏みとどまった時点で、未来の命は救われている」


レイズは何も言えない。

ヴィルは続ける。


「それがメルェの魂を繋ぐことにもなる」


沈黙。

悔しい。

苦しい。


納得などできない。

それでも。

その言葉は確かに胸へ届いていた。


セバスは静かに目を閉じる。

今は答えを教える時ではない。

レイズ自身が見つけるべきだからだ。


そんな中、グレサスが肩をすくめた。


「……なるほどな」


小さく呟く。


「アルバードが滅びぬ理由が分かった気がする」


軽口のような言葉だった。

だがその瞳に侮りはない。

そこにあったのは――確かな畏怖だった。


レイズは深く息を吐く。

そして顔を上げる。


瞳の奥にはまだ怒りの炎が燃えている。

だがそれは破壊のための炎ではない。


歩み続けるための炎だった。


「……分かった」


静かな声。


「だけど」


拳を握る。

メルェの角を強く握り締める。


「メルェを利用して、人と魔族を争わせて、全てを壊そうとした計画」


真っ直ぐ前を見据える。


「絶対に変えてやる」


一拍。


「この世界の在り方を――俺は繰り返さない」


ヴィルはその姿を見つめる。

そして静かに頷いた。


「そうですね」


その短い言葉だけが、冷たい空気の残る部屋に確かな温もりを残していた。

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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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