レオナルディオの信念。
レオナルディオは淡々と、しかしどこか誇らしげに言葉を続けた。
「……もちろん、仕向けたのは私です」
静かな声が響く。
「だが、最後に彼女を殺したのは――人間だ」
レイズの瞳がぎらりと光る。
ヴィルも。
セバスも。
その言葉に鋭い殺気を隠そうとしない。
だがレオナルディオは怯まなかった。
「アルバードの庇護がなければ、魔族はどれほど幼い子供であろうと脅威でしかない」
肩を竦める。
「人は恐怖する」
「恐怖は憎悪を生む」
「そして憎悪は刃を振るわせる」
冷たい声だった。
「それが現実です」
誰も反論しない。
できない。
事実だからだ。
レオナルディオは続ける。
「だが魔族も同じだ」
「村を焼き」
「人を殺し」
「憎しみを広げてきた」
視線がヴィルへ向く。
「だから人と魔族は決して交わらない」
「血の報いが血を呼ぶ」
「憎しみは終わらない」
ヴィルの眉間に深い皺が刻まれる。
レオナルディオは笑った。
「アルバードはその連鎖を止めようとした」
「だが、それこそが誤りだ」
「悔恨を晴らす機会を奪ったに過ぎない」
セバスの拳が低く唸る。
今にも飛びかかりそうな殺気。
だがレオナルディオは構わず続けた。
「私は魔石が欲しかった」
「王国が必要としていたからだ」
レイズの奥歯が軋む。
「世界は広い」
「戦場はこの地だけではない」
「隣国との競争」
「覇権争い」
「技術開発」
「その全てに魔石が必要だった」
そして静かに言い放つ。
「魔族は資源だ」
重い沈黙。
レオナルディオはレイズを見る。
「そして同時に」
「人類共通の敵でもある」
誰も言葉を返さない。
長い沈黙の後。
レオナルディオは静かに立ち上がった。
その顔に恐怖はない。
諦めもない。
ただ全てを終えた者の静けさだけがあった。
「……分かりました」
傍らの剣を手に取る。
ゆっくりと抜き放つ。
金属音が静かに響いた。
ヴィルが目を細める。
セバスも動こうとする。
だがレオナルディオは二人を見なかった。
ただ真っ直ぐレイズを見つめる。
「私は負けました」
静かな声。
「ですが――レイズ」
初めて名前を呼ぶ。
「あなたに負けたのではない」
剣先を自らの喉元へ向ける。
「この世界の在り方に負けたのです」
レイズは睨み続ける。
だがレオナルディオは笑った。
どこか自嘲するように。
「メルェを利用した罪は消えない」
「ですが後悔もしていない」
その言葉に場の空気が張り詰める。
「私は私の役目を果たした」
「それだけです」
そして最後に。
「あなた方が正しいというのなら――」
小さく息を吐く。
「この先の世界で証明してみせてください」
誰も止めることはできなかった。
レオナルディオは迷いなく剣を押し込む。
鮮血が飛び散った。
身体が揺れる。
それでも最後まで瞳は閉じない。
レイズを見つめたまま。
ゆっくりと崩れ落ちていく。
血が床を染める。
静寂。
誰も動かない。
誰も言葉を発しない。
こうして。
アルバードを裏から操り、
メルェの悲劇を生み出した男。
レオナルディオは、その生涯に幕を下ろした。




