表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を…。―(現在物語を大幅にリライト中)  作者: くりょ
レイズは強くなる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
124/287

ヴィルのプロローグ

現時点で――いや、この大陸において最強の存在。

それがヴィル・アルバードだった。


アルバードの守護者にして最大の壁。王国であろうと魔族であろうと、その名を知らぬ者はいない。誰もがその力を認め、誰もがその存在に畏怖を抱く。だが、そのヴィル自身は誰よりも冷静に現実を見つめていた。


アルバードはすでに窮地に立たされている。


王国の思惑。レイバードの陰謀。そして積み重なっていく数々の問題。それらは水面下で静かに進行し、いずれ必ずアルバードへ牙を剥く。どれほど強大な力を持っていようと、一人で領地そのものを守り続けることはできない。その事実をヴィルは誰よりも理解していた。


だからこそ覚悟はとうの昔に決まっていた。


最後の戦いが訪れたなら、セバスと共に命を散らす。


自分たちが盾となり、その間に少しでも多くの者が逃げ延びられるようにする。クリスがいる。イザベルもいる。若い世代に未来を託し、自分たちはアルバードと共に滅びる。それがヴィルの描いていた結末だった。


だが、その未来は一人の少年によって大きく変わることになる。


レイズだった。


当主としての器を持たず、周囲からも期待されていなかった孫。弱く、幼く、自らを諦めているようにさえ見えた少年。


しかし、ある日を境にレイズは変わった。

努力を惜しまなくなった。


誰かのために怒り、誰かのために悩み、誰かのために行動するようになった。


そして何より、その成長速度が異常だった。


魔法も剣も知識も精神も、まるで別人になったかのように伸び続けている。普通なら何年もかかるような成長を、レイズは短期間で積み重ねていた。


その姿を見続けた結果、ヴィルの中から絶望は消えていった。


もはや微かな希望ではない。

未来を託すに足る確かな希望。

アルバードを任せられる存在。


そう断言できるほどの光を、レイズは放っていた。


ヴィルに迷いはない。

自らが死ぬことを恐れてはいない。

むしろ最後にやるべきことは明確だった。


王国へ示すこと。

セバスがいなくとも。

ヴィルがいなくとも。

アルバードは決して滅びないことを。


新たな当主がいることを。


その事実を叩きつけることだけだった。

そして今、ヴィルはレイズを見ていた。

怒りに震えている。


拳を握り締め、唇を噛み締めている。


もし以前のレイズであれば、ヴィルは警戒しただろう。感情に任せて暴走しないよう止めたはずだ。


だが今は違う。

ヴィルは理解していた。


レイズが何に怒り、何に悲しみ、何に苦しんでいるのかを。


その感情は偽りではない。

誰かの人生を覗いただけの人間が見せられるものではない。


自分のことだから怒れる。

自分のことだから苦しめる。

自分のことだから涙を流せる。


目の前の少年は、レイズの人生を自分自身のものとして受け止めていた。

だからこそヴィルは確信する。

たとえ何が起きていようと。


たとえ以前と変わって見えようと。

目の前にいるのはレイズではない誰かではない。


間違いなくレイズだ。

ヴィルは静かに目を細めた。


「やはり……レイズ…」


その呟きには安堵が滲んでいた。

「お前は…ちゃんとそこにいる…」


その言葉は誰にも届かない。

だがヴィルにとっては何よりも大きな意味を持っていた。

レイズではない誰かではない。

レイズが、レイズとしてここにいる。


それだけで十分だった。

脳裏に浮かぶのは自身の息子リヴェルとセシルの姿だった。


二人が愛し、繋いだ子。

そしてそれは自分にとってもかけがえのない孫。


その少年が今こうして成長し、自らの足で未来へ進もうとしている。

ヴィルは静かに息を吐いた。


胸の奥に広がる感情は戦いへの高揚ではない。

勝利への執念でもない。

ただ純粋な喜びだった。


祖父として、大切な孫の成長を見守ることのできる喜び。


その温かな感情が、ヴィルの胸を静かに満たしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ