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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を、今度こそ覆す―(現在物語を全話を丁寧に修正しています。180-189話修正、大幅に加筆しました。)  作者: くりょ
レイズを知る。

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おじいさんフィルター

ヴィルはふと問いかけた。

「して、なぜダイエットをしたいのですか?」


俺は即座に両手で腹を掴み、ぽよんぽよんと揺らしてみせる。


「ねぇ! ヴィルたちの美的感覚どうなってるんだよ!!」

ヴィルは顎に手を当て、本気で悩み始めた。


「そうですね……私から見れば、かわいい孫のようなものです。」


「あぁぁぁぁ!? それ絶対おじいちゃんフィルター入ってるだろ!!」


俺は天を仰いだ。

「それでも痩せたいの! かっこよくなりたい! そして強くなりたいんだ!!」


その言葉に、ヴィルの瞳が僅かに細められる。

「……強く、ですか」


小さく呟くと、ヴィルは背後の棚へ向かった。そして一本の木刀を取り出し、何の躊躇いもなくこちらへ放り投げる。

「では、これを使いなさい」

「うわっ!?」


慌てて飛び退く。

次の瞬間――ドォンッ!!

訓練場に重い音が響いた。


俺は木刀を見て、ヴィルを見た。

そしてもう一度木刀を見た。


「そのさ……ヴィル」

「はい」

「頼むから投げて渡すのやめて…ください。」

「はて?」


本気で首を傾げている。

「それは重木といって、この大陸でも特に密度の高い木から削り出したものです。そのサイズなら、そうですね……今のレイズくらいの重さでしょうか」


「余計になげるなぁぁぁぁぁぁ!!!」

思わず全力で叫ぶ。


「死ぬだろ!! ていうか俺と同じ重さの木刀を片手で投げるな!! 化け物なのかお前は!!」


ヴィルは穏やかに笑った。


「ですが、先ほど持ち上げてみせたではありませんか」

その視線はどこか誇らしげだったが、俺はそれどころではない。

俺は鼻で笑う。


「ふっ……見てろよヴィル。俺なら優雅に木刀を持ち上げて――」


もちろん持ち上がらなかった。

「…………」


そして。

「んぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」


訓練場に意味不明な雄叫びが響き渡る。


歯を食いしばり、顔を真っ赤にし、全身をぷるぷる震わせながら必死に力を込める。


優雅さ?

そんなものはない。

欠片もない。それでも諦めなかった。


やがて木刀が少し浮く。

さらに力を込める。

そして――

ついに持ち上がった。


その姿は英雄というより、洗濯機に放り込まれた子犬だったが、それでも確かに持ち上げていた。


ヴィルはそんなレイズを静かに見つめる。

諦めない。逃げない。

できないと決めつけない。


その姿は、ヴィルの知るレイズそのものだった。

(……これなら)


胸の奥で何かが動く。

長い年月止まっていた歯車。


諦めていた未来。

(これなら進められる)


レイズはまだ弱い。まだ未熟だ。

だが確かな意思がある。

ならば自分もまた前へ進める。


ヴィルの胸の奥で、止まっていた大きな歯車が静かに動き始めていた。

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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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