未来と交差する。
ヴィルは深い皺を刻んだ顔で、低く告げた。
「わかりました……ガルシア・レイバード。確かに、あの日ここへ来ていた。
だが、それだけではなかった。王国から数名の騎士も同行していました。」
この場には沈黙が広がった。
ヴィルは続ける。
「私は彼らを全員覚えている。……一人ずつ名を挙げていきます。」
その声音には、まるで過去の罪を洗いざらい吐き出すかのような覚悟が滲んでいた。
一つ、また一つと名が並べられていく。
その中に、レイズの耳を鋭く打つ音があった。
――レオナルディオ。
その瞬間、レイズの目が見開かれる。
「……ッ!!」
握った拳が震え、深く爪が食い込む。
頭の中で点と点がつながる。
「そっか...なるほどな……」
低く、押し殺した声がこぼれる。
「レイバードと王国……すでに繋がってたのか。」
その言葉には、怒りと同時に確信がこもっていた。
レイズの脳裏で、線と線が繋がった。
――レイバードを倒す。
それはただの一族間の争いなんかじゃない。
「……つまり」
拳を震わせながら、レイズは声を低くする。
「レイバードを倒すってことは……王国そのものを敵に回すって意味になるんだ。」
その言葉が落ちた瞬間、場の空気が凍りついた。
イザベルは顔を真っ青にし、息を呑む。
ヴィルの表情もまた険しくなる。
「王国最強の騎士団……そして、背後には王家そのものの影響がある。レイバードと王国が繋がっているなら……アルバードは、国を丸ごと敵に回すことになる」
静かにそう告げたレイズの声には、怒りと同時に、重すぎる現実を突きつけられた苦悩が滲んでいた。
レイズはふと、寒気を覚えた。
――もし、俺がここにいなかったら?
もし、この場に立っていたのがヴィルただ一人だったら?
その答えはあまりにも明白だった。
レイバード……いや、王国そのものは、すでにアルバードを滅ぼすために動いていた。
そして、そこに魔族の怒りまで加わっていたら――?
「……そうか」
思わず声が漏れる。アルバードが滅亡した姿が、ありありと頭に浮かぶ。
王国に利用され、魔族からも襲われ、孤立したまま叩き潰されるアルバード。
その光景があまりにも自然に想像できてしまう。
「……レオナルディオ」
その名を口にした瞬間、胸に嫌な確信が広がった。
彼はゲームではレイバードの一員。
そして王国と手を結び、カイル達を逆に追い詰める側に立つ存在だ。
――こんなにも早く。
――こんなにも近い未来に。
アルバードには、確実な破滅の影が迫っていた。
「ヴィル……ひとつ聞かせてくれ」
レイズは険しい眼差しを向けた。
「アルバードは……なんでこんな僻地にあるんだ?」
ヴィルは短く息をつき、遠い昔を思い返すように口を開いた。
「ここは、魔族と人が無用に争わぬため……防波堤の役割を担っている。
アルバードは王国の地図上では人の側に位置します、ですが....実際には――魔族との仲介地とも言える。」
「仲介地……」
「えぇ。だからこそ、王国からは疎まれてきたでしょう。
アルバードの存在は、彼らにとって“戦の口実”を奪う壁でもあるのです」
ヴィルの声音は穏やかだったが、言葉のひとつひとつは重くのしかかる。
レイズは黙り込んだ。
ようやく理解できた気がした。
王国の狙い――それは魔族の死体から得られる“魔石”だった。
「魔石……か」
「...魔族の体内に眠る宝石は、強大なエネルギー源。
王国にとっては喉から手が出るほど欲しいもの
しかし、アルバードが私がそれを許さなかった」
ヴィルの言葉に、レイズは奥歯を噛みしめる。
――アルバードは、人側に立ちながらも、魔族の尊厳を守り、戦を抑止してきた。
だが、それは同時に王国の欲望を阻む“邪魔者”でもあった。
「……俺はずっと勘違いしてた」
レイズは低く呟く。
アルバードは人のために、魔族を牽制しているだけだと思っていた。
だが、それなら――これほどの戦力を持ちながら、なぜ魔族は滅びていないのか。
答えは単純だった。
アルバードは“滅ぼすため”にあるのではなく、“両者を守るため”にそこにあったのだと、




