表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を…。―(現在物語を大幅にリライト中)  作者: くりょ
レイズは強くなる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
114/795

小さな角


レイズの胸に渦巻く想いは、ただひとつ。


――知りたい。


それだけだった。

憎しみでも、怒りでもない。とにかく真実を、この目と耳で確かめたかった。


魔族たちが退散していった方角へ、レイズは颯爽と駆け出す。

やがて、アルバードと魔族の領土を隔てる境界を越え、未知の世界へと足を踏み入れていく。


もちろん理解していた。

いかに自分の死属性が“壊れた”力を持っていようと、魔族の群れに囲まれれば勝ち目はない。

それでも足は止まらなかった。


――仲間を想い、感情で人を襲った魔族。

彼らに、どうしても聞かなければならない。


その答えこそが、メルェの死と、積み重なった憎悪の真相へと繋がるのだから。


境界を越えた瞬間、空気が変わった。


そこに広がるのは、同じ大地であるはずなのに、まるで別の世界。

空は鉛色に曇り、風はひどく冷たい。

湿った土と焦げたような匂いが鼻を突き、森の木々は黒ずみ、枝の先には葉ひとつ生えていない。

それは、静寂


だが、その静けさは決して安らぎをもたらすものではなく、何かが潜んでいるという圧迫感を孕んでいた。


レイズは一歩、また一歩と踏み込む。

背中を伝う汗が冷たく、喉がからからに乾く。


――ここが魔族の領土。


そう理解すると同時に、肌に突き刺さるような殺気を感じる。

だが怯むことはなかった。

むしろ胸にある「知りたい」という渇望が、その恐怖を押しのけていた。


暗い森の奥で、複数の影がゆらりと姿を現す。


魔族――。

その瞳は血走り、憎悪の炎で燃えていた。

牙をむき出し、怒りに震えながら叫ぶ。


「よくも……人間!!」


刹那、無詠唱の魔法がレイズに襲いかかる。

炎の矢、氷の槍、闇の刃。

次々と殺意が形をとって突き刺さる――はずだった。


だがレイズは一歩も止まらない。

その全ては触れる前にかき消え、灰のように霧散していく。


抵抗しない。

敵意も見せない。


ただし、自分を守ることだけは決して揺るがせない。

その意思が死属性に宿り、目に見えぬ防壁のように彼を包んでいた。


魔族たちは一瞬、恐怖に喉を鳴らした。

それでも彼らは退かない。


レイズはゆっくりと歩みを進める。

焦らず、威圧せず、ただ確かに前へ。


――知りたい。

その一心で。


魔族たちは互いに目を合わせ、息を荒げながら叫ぶ。


「魔法がきかない……だと……!?」


恐怖が混じった怒声が夜気を震わせる。

それでも彼らは退かない。

怒りが理性を押し潰し、次の手段に出る。


「ならば――肉を裂いてやる!!」


刹那、筋骨隆々とした魔族が前に出る。

獣のような咆哮を上げながら、その腕に宿すのは人ならざる怪力。

地面を砕きながら振り下ろされた拳は、岩をも砕くはずの一撃だった。


だが――「ガキィン!」と甲高い音が響く。


レイズは剣を構え、冷静に受け止めていた。

細いはずのその体は、びくともしない。

受け止めただけではない。力を込めて押し返すと――


「ぐっ……!」


逆に魔族の腕が大きく弾かれ、よろめく。

その怪力を軽々とあしらった事実が場を支配した。


「ば……馬鹿な……魔法も効かず、接近も……通じない……」


「なに者だ……こいつ……」


怒りに燃えていたはずの魔族たちの目から、次第に炎が消えていく。

残ったのは――戦慄。


一人、また一人と武器を握る手が震え、足がすくむ。

レイズは追撃しない。

ただ剣を静かに構え、淡々と立っている。


それは無言の圧力。

とんでもない力を宿す少年を前に、やがて魔族たちは戦意をなくしていった。

レイズは短く答える。


「俺はメルェの仲間だ。アルバードの者だ」


魔族の一人が低く唸るように言った。

「イェイラの仲間……? にわかには信じがたい。だが、それにしても――アルバードか。ヴィルに続いて、おまえまで……本当に恐ろしい一族だ。」


レイズは食い気味に声を張り上げた。

「御託はいい 誰から聞いたんだ!! 俺が――メルェの仇を取る」


その言葉に魔族たちが一斉に息を呑む。

「……人間が、我らの同胞の仇を……?」

ざわめきが広がり、空気が張り詰める。


一体の魔族が怒気を込めて問い返した。

「ならば貴様はどうするつもりだ!? アルバードに住む人間どもを、皆殺しにしてくれるのか!?」


レイズは剣を握る手に力を込めながら、しかし声は冷静に返した。

「違う。俺は誰かを皆殺しにするためにここに来たんじゃない。――メルェのために、真実を知りたいだけだ。」


その言葉に、魔族たちは一瞬沈黙する。怒りを向け続ける者、困惑をにじませる者――感情は交錯していた。


やがて一際大きな気配を放つ魔族が一歩前へ出る。

「……人間よ。真実を求めると、その言葉が偽りでないのなら、聞かせてやろう。だが忘れるな。我らが語るのは“我らに伝わった真実”だ。受け入れられぬのなら、ここで血を流すことになりますよ?」


レイズは一歩も退かず、その視線を受け止めた。

「構わない。知るために来たんだ。」


人形の魔族は重く頷き、言葉を続ける。

「わかりました。――あの日、我らの幼い同胞イェイラは……確かに“人間の手”によって命を奪われたと、私たちは聞かされた。


人の形をとった魔族が、静かに一歩前に出る。

その眼差しには怒りや憎しみだけではなく、真実を伝えようとする確かな意志が宿っていた。


「……我らにこの話を伝えたのは、人間の一人でした。」


レイズが目を細める。魔族はゆっくりと続ける。


「髪は暗く長く、乱れのない身なりをし、顔立ちは人のものですが……口元の笑みは、氷のように冷たい。」


一呼吸置き、魔族は記憶を探るように言葉を紡ぐ。

「指には指輪をはめていた。家紋のような刻印が見えましたが……我らには意味まではわからない。」


「彼はこう告げた。『アルバードに住む者どもが、メルェイェイラを弄び、殺したのだ。復讐を果たせ』と。」


声が低くなり、魔族たちの間にざわめきが広がる。


「……我らは信じた。大切な幼き同胞の死に、理由が欲しかった。」


そういって小さな角を見せる。

これがどういう意味かレイズはしっていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ