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【悪役転生 レイズの過去を知る 】―俺だけが知る結末を…。―(現在物語を大幅にリライト中)  作者: くりょ
レイズは強くなる

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魔族の動機



魔族たちは戦慄していた。

――効かない。

炎も、壁も、何ひとつ通じない。


そして、目の前で拳を振るう青年と、それを支える老将の姿に気づいた瞬間、背筋を凍らせる。


「こ、これが……アルバード……」


誰かが呟く。その声は戦場の空気を一変させた。

魔族の眼に血の涙が浮かぶ。怒りと怨嗟が渦巻きながらも、恐怖に揺らいでいた。


それでも一歩も退かず、武器を構える者たち。

彼らの覚悟を見届けるかのように、ヴィルが一歩前に出る。


刹那、轟く声が村に響き渡った。


「――私が、ヴィル・アルバードだ!!!」


その声は地鳴りのように響き渡り、大地すら震えるかのようだった。

「なぜだ……何故、おまえたちはここを攻めた!!!」


その名を耳にした魔族たちの身体が硬直する。

「ヴィル……アルバード……だと……!?」


震え。狼狽。

その名は、魔族の世界においても“畏怖”と同義であった。


「ば、化物が……!」

「分が……悪すぎる……!」


瞬く間に動揺が走り、魔族たちは戦意を失い始める。

誰もが悟っていた――この場に残ることは、即ち死を意味する。


次々と後退し、散り散りに退いていく魔族たち。

その背にヴィルの視線が突き刺さり、誰ひとりとして振り返ることができなかった。




レイズの視線の先には、まだ息のある魔族が倒れていた。

先ほどの一撃で致命傷を負ったはずだが、その瞳にはまだ憎悪の火が消えていない。


レイズはゆっくりと歩み寄り、しゃがみ込み、静かな声で問いかけた。

「……どうして、攻めてきた。どうして人を殺した」


魔族は苦しげに呼吸を繰り返しながら、口の端から血を滲ませる。

「……人間……お前たちが……先に我らの同胞を……殺したのだ……」


その声はかすれ、今にも消え入りそうだった。

だが、告げる言葉には揺るぎない怒りが宿っている。


「同胞……?」

レイズは眉をひそめる。

その響きが妙に耳に残り、胸をざわつかせる。


魔族は、血に濡れた牙を見せるようにして呻いた。

「……幼い……我らの同胞……イェイラを……殺した……」


「……イェイラ?」

レイズの喉が、ひくりと動く。

心臓が大きく脈打ち、思考がかき乱される。


その名は――忘れることなどできるはずがない。

かつて、共に笑い合い、支え合った少女の名。

メルェ・イェイラ。


「――誰から、その話を聞いた」

レイズの声は低く、押し殺すようでありながら、今にも爆発しそうな怒気を帯びていた。


魔族の目が、わずかに揺れる。

「……人間……お前た……同じ人間が……我らに告げ……」


「人間……?」

レイズの胸の奥で、冷たい何かがざわめく。


「……アルバードに住む者たち……あの娘を……罪人に仕立て……そして……」


魔族の声はそこで途切れた。

血の泡が唇から零れ落ち、喉が小さく鳴る。

「……我らは……決し……許さ……」


最後の言葉を吐き出すように呟き、その身体はぐったりと力を失った。


レイズはその場に膝をついたまま、しばらく動けなかった。

指先が震えている。

胸の奥に渦巻くのは、かつてないほどの怒りと、どうしようもない悲しみだった。


「……メルェ……」

その名を、ただ噛みしめるように口の中で転がす。


背後でイザベルが顔を覆い、息を呑んでいた

それはレイズの感情だけで十分に理解できた。


そして――ヴィルが口を開いた。

その声音は低く、だが重く響いた。


「……アルバード“家”が殺したのではない。

しかし――アルバードに住む人々が、メルェ・イェイラを追い詰め、命を奪った。

……その事実を、何者かが魔族に告げ口した。そういうことだ」


ヴィルの言葉が静かに降り、重苦しい沈黙が場を支配した。



イザベルは、ルーヴェ村に広がる惨状を目の当たりにしながら、唇を震わせた。

焼け落ちた家々。倒れ伏す人々。血の匂いがまだ空気に残っている。


「……いったい、何故……どうしてこんなことに……」


その声はか細く、震えていた。

信じられない、信じたくない――そんな思いが、瞳に滲む。


イザベルにとって、魔族も人もただ「遠い話」だった。

それが今、目の前で交錯し、憎しみの果てに命が奪われている。

理解が追いつかず、ただ立ち尽くすしかなかった。


一方で――ヴィルの表情は違った。

彼の瞳は深い怒りに燃え、皺だらけの拳が小刻みに震えている。


「……アルバードに住む者たちが……あの少女を殺した。

その歪められた真実が、魔族をここまで動かした……」


噛み締めるような低い声。

その声音は、己の責務を背負う当主のそれだった。


そしてレイズもまた、瞳を見開いたまま、立ち尽くしていた。

胸の奥から、押しつぶされるような感情が湧き上がる。


「……メルェを……」


声が震える。

過去の惨劇と、いま目の前の血の光景が重なっていく。

奥歯を噛みしめ、拳を握ると、爪が食い込むほどに力が入っていた。


「……許さない」


それは叫びではなく、地の底から響くような低い声だった。

レイズの瞳に宿った怒りは、もはや消せない炎のように燃え盛っていた。


イザベルは、その光景に息を呑み、ただ両手を胸に当てる。

彼女には怒りを燃やすこともできない。ただ震え、涙を浮かべるしかなかった。


そして――ヴィルとレイズ。

二人の怒りは、静かに、しかし確実に次の行動へと繋がっていくのだった。





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たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。 完結済の長編です。レイズたちの物語をぜひ最初から。
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