老兵と若兵
こうして――ヴィル、レイズ、そしてイザベルが共に出立することが決まった。
その決断に、セバスもクリスも声を上げる。
「私も行きましょう。」
「どうか私も――」
だがヴィルは首を横に振り、重々しく言い放った。
「必要ありません。むしろ、屋敷に戦力が残らぬことの方が心配です。」
その言葉に、セバスもクリスも黙り込むしかなかった。
否定ではない。
それは絶対的な自信に裏打ちされた判断であり、同時に彼らへの揺るぎない信頼でもあった。
――残る者もまた、この家を守る戦力である。
そう理解しているからこそ、二人は何も言えず、ただ深く頭を垂れて受け入れるしかなかった。
セバスはまっすぐ ヴィル に向き直り、深々と頭を下げた。
「……どうか、ご無事で。」
それは仕える者としての言葉であると同時に、長年寄り添った友としての切なる祈りだった。
その視線には、誰よりもヴィルを案じる気持ちが宿っていた。
一方で、クリスは迷うことなく レイズ を真っ直ぐに見つめた。
「レイズ様――次は必ず、私が共に行きます。」
それは忠誠の誓いにとどまらず、未来を背負う者としての強固な決意だった。
セバスの言葉はヴィルへ、クリスの言葉はレイズへ。
その対比は、まさに「今」と「次代」を繋ぐ光景であり、アルバードの重みが確かに受け継がれていく瞬間だった。
三頭の馬が用意され、出発のときが迫る。
ヴィルは迷いなく手綱を取り、イザベルも軽やかに跨った。
しかし――一人だけ、馬に跨れずに立ち尽くしていた。
レイズだ。
馬の背を前に、どうにも体が動かない。
「……ちっ、ゲームじゃボタンひとつで乗れたのに……」
心の中で悪態をつきながらも、額に汗がにじむ。
そんなレイズに気づいたイザベルが、手綱を引き寄せて笑った。
「ほら、レイズくん。こっちに来て。大丈夫、ちゃんとできるから。」
レイズは顔を少し赤らめながら歩み寄る。
だが、その瞳には確かな決意が宿っていた。
「……悪いな、イザベル。でも行くぞ。」
ぎこちなくも鞍に手をかけ、ようやく馬に跨る。
その瞬間、三人の馬が揃い――重々しい覚悟を抱きながら、出発の合図が鳴らされた。




