SS 勇者様の内政チート?(6 )
いつもながら大変遅くなって申し訳有りません。
今回は今まで以上に難産でした。
4回も書き直したのですが、採用しなかった話の一部を別の短編に作り直したほどです。
この話が煮詰まってまとまらないので、短編を作っていてまた時間が取られたのも遅くなった原因です。
本当に申し訳有りません。
「いずれにしろ、政治や軍事などの大勢の人と関わる場合は、個人の知識や能力より、大勢の人を使いこなすことが重要なようです。
知識や経験は本人が持って無くても、それらを持っている部下を登用して使えばいいのですから。
その人達を使う度量を持ち、大勢の人々の信頼を得ることができれば社会を変革することも可能でしょう。」
ファランシア姫は話を続けた。
「勇者様はお一人でドラゴンと戦われましたが、軍隊を率いて戦う場合は単に個人の技量や力でなく組織としての軍隊を管理運営する能力が必要になります。
軍隊とはいえ戦っていない時間の方が圧倒的に長いので、平和時の訓練やその他デスクワークの方が大変だと我が国の将軍が言っておりました。
そして、そういう平和時を疎かにしていたら絶対勝てないそうです。
また、武器を持って戦うだけが戦争ではありません。
その前に必要な数の兵士を集め、それに十分な武器兵糧を準備することから始めなければなりません。
その軍隊を途中なんのトラブルもなく目的地に移動させるのも大変です。
こちらの世界で参勤交代の時の様々なトラブルを面白おかしく描いている映画があって、平和な時さえこれほどトラブル続きなら戦時はさぞかしと、私は笑いながらも心配になりました。
戦場についても予想外に長期間布陣を続ける場合があって、指揮官は対応に追われるそうです。
さらに戦の後は負傷者の救助や捕虜の扱い、略奪暴行の防止など更に時間も手間もかかる仕事が待っています。
兵士の殆どは帰国したら貴重な働き手なのですから、死傷者が増えたら労働力の減少につながります。
それに占領地で略奪暴行が横行したら、住民の不満が高まり反乱や敵国への内通などの危険が増し、それを防ぐため治安維持に多大な費用と人員が必要になります。
例え戦争に勝っても、多くの戦死者を出したうえ占領地に多くの経費と人員を割かれては戦果を得たとは言えません。
私はこちらで戦争は外交の一部であり、失敗した結果であると教えられました。
さらに、経済を無視した戦争は有り得ず、そういう戦争は長期的には自国の衰退を招くとも。」
僕は姫様の話に息を呑んだ。
僕の領地経営に関する話のはずが姫様の話は戦争にまで発展している。
僕が唖然として見つめていると姫様は話を続けた。
「勇者様は、戦争と御自分と何の関係があるのかとお思いのようですね。
でも勇者様の領地は以前我が国の領土をたびたび脅かした隣国アッテラとの国境沿いにあるのです。
国王陛下はドラゴンが居なくなり、土地が以前のように実り豊かになった後に必ずアッテラが攻めてくると考えています。
ドラゴンと直接戦って荒廃した土地を得てもなんの利益にもならないので、他国は弱った我が国を放置していました。
しかしこのままでは、遠からずアッテラが攻めてくるでしょう。」
ファランシア姫はしばらく僕を見つめた後、ゆっくり言葉を続けた。
「ただし、勇者様がいらっしゃれば別です。
彼らもドラゴンをお一人で倒した勇者様と戦おうとはしないでしょう。
アッテラ以外の国も勇者様が我が国の味方となれば態度を変えます。
だからこそ国王陛下は勇者様に国境沿いの領地を与えたのです。
王室に保管してあった魔法の武器は死んだ兄が全て持ち出してドラゴンとの戦いで使い果たしてしまいました。
幾つかは勇者様がドラゴンを倒した後に回収しましたが、使い物にならなくなったり見つからない物も多数あります。
ドラゴンのいた10年間の食糧輸入などで武器以外の王家の財産も大幅に減っています。
他国は我が国の足元を見て価格を吊り上げるのですから尚更です。
勇者様がドラゴンの財宝を半分下さるとおっしゃったとき、国王陛下が非常に喜んだのは勇者様も覚えておられるでしょう。
本来国王たる者は本心を人に悟られないようにすべきなのですが、それを隠すことが出来ないほど困窮していたのです。
貴族たちも弱っています。領地からの収入が全く無くなった者も少なくないのです。多くは、それまで蓄えていた資産を食い潰す形でようやく生活していました。
もはや領軍を維持出来なくなった貴族も少なくありません。そして、貴族達の王家への忠誠心も以前よりも落ちています。自分達を守ってくれない王家に忠誠を尽くす理由はありませんから。」
ひと呼吸おいて、意を決したように姫様は続けた。
「だからこそ、藁にもすがる思いで勇者様を召喚したのです。」
「勇者様は、御自分が外交問題や国内の貴族たちとどういう関係があるのかとお思いでしょうが、内政や軍事に限らず大勢の人間に関わる事柄はすべて密接に関係しあうのです。
先ほど申し上げたように戦争が外交の一部とすれば国政と無関係に戦争は考えられません。
戦争はしないのが一番良いのですから、抑止力としての軍隊なら平和時のあり方は戦場での作戦遂行能力や名軍師の知恵よりも重要です。
個人の武芸や魔力などは論外です。少々強くともなんの意味もありません。
勇者様のようにドラゴンに匹敵するほどの力でもない限り。」
もはやファランシア姫の独演会になった感じだ。
姫様は思っている事の全てをここで吐き出そうとするかのように話しを続けた。
僕たちは呆然としながらそれに耳を傾けていた。
「そして貴族は単に国王の家臣というだけではなく、個々の領地の統治者なのです。
貴族同士の付き合いは、友達付き合いとか隣人との付き合いというレベルではなく、国とさほど変わらぬ外交関係があります。
一番ありふれたもので結婚契約というものがあります。貴族同士で花嫁や養子の持参金等の扱いや、側室に子供が生まれた後に正室に子供ができた時の相続権をどうするかというようなという問題まで契約が取り交わされます。
国内の貴族が外国の貴族や王家と結婚や交易など外交関係を結ぶことは、私たちの世界では普通にあることなのです。
王家とは言っても、国内で最も大きく強力な貴族であり、日本の昔の将軍家と同じよう存在なのです。
王家に力があり頼りになる時は皆が従いますが、そうでなければ各自が勝手なことを始めるでしょう。
それは幕末の将軍家と同じように考えてくだされば解り易いでしょう。
現在は全ての貴族が弱体化しているので相対的な力関係が以前と同じなために、一見国内が安定しているように見えます。
同様に外国との関係も先ほど申し上げたように荒廃した土地を苦労して手に入れてもなんのメリットもないので一時的に安定しているのです。」
「あの、その貴族の相続権とか国の法律で決まってないの?」
沢渡さんがおずおずとファランシア姫に尋ねた。
確かに国内の法律はある程度整備されていたはずだ。
「国王が決めた法律はありますが、貴族同士の力関係もありますし、こちらの世界ほど平等でもありません。それに細かく法律が整備されている訳ではありません。
はっきり言いますと、力のある者が恣意的に適用できる抜け道だらけの法律しかないのです。」
「それはこちらも同じだな。」
タクがつぶやいた。
「同じ訳ないだろ。」
僕が反論すると。
「東日本大震災の復興資金の使い道で、復興関係と銘打って役人たちの拡大解釈で本来の用途以外に使われていたじゃないか。同じようなもんだ。」
そう言われると反論出来ない。キチンと法整備されているように見えて、法律に詳しい人にとっては穴だらけだというのも聞いたことがある。
異世界関連法案の件で橘検事と話をしていた時、苦笑いしながら言われたことがある。
「何から何までがんじがらめに法律で縛っては息が詰まるでしょう。細かいことは本来常識とか良識で判断するものなの。でも、最近はその良識を弁えない人が増えているのよね。」
「姫さんの言いたいことは何となく解かる。でも、そんな大きなことでなくバカ殿様の領地経営や今後の開発計画なんかはどうするんだ。」
タクが改めてファランシア姫に尋ねた。
「ですから、他の貴族や周辺諸国の思惑を無視して勇者様の領地の開拓だけを進める訳にはいかないのです。
勇者様は御自分の領地に来た流民に簡易住居を与え食料援助をしていますが、周辺の貴族が領地復興の為に連れてきた農民たちは何の支援も与えられず、雑草や木の実を食べながら僅かな農具を武器に魔獣を狩って命がけで肉を手に入れなければ生きていけない者もおります。
その為勇者様の領地に領民が逃げ出して復興の人手が無くなってしまうと、不満を抱いている貴族も少なくありません。
元々農地開拓をする農民は、領主から僅かな支援しか得られず、住む所も洞穴や倒木を寄せ集めたあばら屋が普通です。
しかし、今の領主達はその僅かな支援さえ出来ず、荒地に農民を連れてきて開拓しろと命じるだけの場合もあるのです。
勇者様は今まで領民の暮らしや流民の援助について余り熱心に考えていなかったとおっしゃいましたが、それでも勇者様の領地に住む人々は他の土地に居る者よりはるかに恵まれています。
もし、今まで以上に領地経営に力を入れれば周辺貴族の反発は修復不可能なほどに大きくなりかねません。
とは言え、現実を知った後までそのままでおられるほど無情な方ではないことも存じ上げております。」
姫様は人が近づく気配に話を止めた。
レストランのスタッフがお代わりの紅茶を注いでいる間僕たちは何気ない話をしていたが、姫様だけは無言のままうつむいていた。
僕たちだけになってからも、姫様は僕のことをじっと見つめて口を開こうとしない。
「あの・・・」
沢渡さんが姫様に声をかけると同時に、姫様も口を開いた。
「勇者様。・・・いえ志村様。
私と結婚してください。」
ファランシア姫の突然のプロポーズに僕は耳を疑った。
なんで領地経営の話が結婚につながるんだ。
ただでさえ他の貴族との軋轢や国際問題も絡んで話がおかしな方向に広がっていると感じていたのに、結婚まで一足飛びにいくのが解からない。
僕は頭の中が真っ白になって何も考えられなくなっていた。
自分でも思わぬ方向に話が飛んでしまいました。
後はファランシア姫に丸投げしようかな。
実際は続きの部分も半分くらい書いてあるので次は早く投稿できるんじゃないかと・・・・




