私は貧乳じゃない
「あ? なんだお前?」
「おとなしく受付に行け。それと、エリナは俺の女だ。気安く話しかけるな」
いや、違うから。勝手に彼氏ヅラしないで。
「ああ? お前、ダンか? 体を売ることしか能がねえくせにチョーシ乗んなよ」
「そうムキになるな。しかし意外だな」
「なにが?」
「貧乳のエリナに興味を持つやつがいるんだな、と」
私はぎゅっと拳を握りしめる。
我慢だ、私。今は人目につく。ボコるならあとだ。
「ああ? 貧乳になんか興味ねえよ!」
ガシッガシッ、と私はダンと、貧乳だとか抜かした男の首を手で絞めあげながら、持ち上げた。
「がっ、はっ」男が苦しそうにもがく。
「貧乳、貧乳ってうるせえよ。殺すぞ」
私はまず男をやつの仲間のほうへ向かって放り投げた。それからダンをやつら三人に向かってぶん投げた。ダンをぶつけられた三人は後ろへ吹っ飛んだ。
あー、やっべ。やっちゃった。どうしようかな。
「も~二人とも、喧嘩はだめですよ?」かわいく言えばごまかせるかもしれないと思い、私はめいっぱい清楚なふりをしてみる。
だが、状況や周りの目を見たかんじ、失敗に終わったように見える。だめかー。
「あの」その時、受付嬢がやってきて、男三人のほうへ声をかけた。
「んだよ!」
「あのダンという方は、ハーキュリーバイトスネークをたった一人で討伐していますが、大丈夫ですか?」
それを聞いた男たちが急におとなしくなる。
「みなさんがお強いなら喧嘩になっても大丈夫かもしれませんが、そうでないなら逃げたほうがいいのでは?」
その時、ダンが起き上がる。彼は私にぶん投げられたにもかかわらず、何事もなかったかのように平然としている。丈夫なやつめ。
「なかなかきつい首絞めだったぞ、エリナ。今までいろんな首絞めプレイを受けたが、その中でも上位に入るきつさだった。さすがはSランクだな」
いらないから、そんな情報。
「ん? なんだまだいたのか? お前ら」そう言ってダンは男三人を見下ろす。
男たちは蛇ににらまれたカエルみたいに動けなくなってしまっている。バカだな、こいつら。相手の力量もろくに見ずに喧嘩なんかふっかけるから。
「俺は喧嘩は嫌いだ」ダンは言う。
「だからなんだよ、ああ?」男たちはまだ、威圧的な態度をやめようとしない。
「だからやめろって。やれやれ、しかたない」彼は言って、両手を前にかざす。「イけ」
「「「う゛っ!」」」
男たちがびくっと体を硬直させる。
「よし、行こう」
男たちがその場でもだえ苦しむのを無視して、ダンは歩き出した。私もそれについていった。
「あれ、何したの?」
「十回ほどイかせてやった」
よくわかんないけど、なんかやばそう。
「イけ、ってのは何? 呪文かなにか?」
「そんなところだ。プレイの時にはイけって言ったほうが雰囲気が出るからな。だからあの言葉をトリガーにしている」
「ああ、そう……」聞かなきゃよかった。




