面接したハンターがなんか変態だった件
私、エリナ。元黄金の獅子のメンバー。黄金の獅子はギルドでも一番実績のあるパーティで、そこにいた私は最強の一角だったということになる。
私たちは強くて、敵なし状態だった。
問題は、彼らが強すぎたことだった。強すぎて被弾しなくなって、だんだんヒーラーである私の活躍するタイミングが減ってしまった。
そしたら、リーダーのアレンはこう考えた。被弾しないならヒーラーはお荷物だろ、ってね。
それで私は解雇されたってわけ。どう、おかしいでしょ? 笑えるでしょ? いやいや、被弾しないからって。被弾した時のこと考えろよ、カス。
被弾したらやばいんじゃない、って何度も説明してあげたんだけど、全然話が通じなかった。アレンは、抜けろ、代わりはもう用意した、の一点張り。
あの時は本当にブチ殺してやろうかと思った。
でも、今はもう切り替えた。あんなパーティに未練なんかない。
今の私には別の目標がある。それは、最強のパーティを作り上げて、このギルドの頂点に君臨すること。
そうして二番手だか、五番手だかになったあいつらに向かって、こう言い放ってやるつもり。あれ、ヒーラーなんかいらないんじゃなかったっけ、ってね!
しかもさっそく、私のパーティに加入したいって応募があった。幸先がいい。これから、その面接をするつもり。
さて、どんな人なんだろう。Sランクハンターらしいけど、でもランクがすべてじゃない。Sランクでもアレンみたいなおバカさんもいる。慎重に判断しなくちゃ。
〇
私が集会所で応募者を待っていると、男の人がやってきた。
ガタイは悪くない。魔力量も十分。なかなか見込みがありそうだ。
「初めまして、エリナと言います」私はあいさつをした。
「俺はダン。よろしく」
「さっそくですけど、経歴を教えてもらえますか?」
「なぜそんなことを訊く?」
「面接だからです」
「どこから話せばいいのか……そうだな、俺がとある剣聖の相手をした話をしようか」
「剣聖、ですか」剣聖と戦ったことがあるなんて。これは相当な強者かもしれない。
「名前は個人情報だから伏せるんだが」
正直、名前は明かしてほしいが、相手からそうして欲しくないと頼まれている可能性もあるので、我慢しよう。
「やはり剣聖だけあって体力がすごくてな。性癖はわりとノーマルだったんだが」
「ん? 性癖?」
「とにかく激しいんだ。まるでドラゴンと取っ組み合っているみたいな気分だった。体がばらばらになるかと思ったよ」
「待て待て待て。なんの話してる?」
「なんの? 剣聖とセックスした時の話だが?」
「なんで⁉」
「なんでって、それはお前が経歴を聞いたからだろ」
「あなたの武勇伝なんか聞きたくないんですよ、こっちは! ハンターとして、どんな功績をあげたとか、どういう経歴があるのかってのを聞いてるんです」
「倒したモンスターの名前なんか、いちいち覚えちゃいない」
「じゃあ、前の職業は?」
「男娼だ」
「男娼⁉」
「女も抱くが、男も抱ける。もう辞めたが、もしお望みなら君も抱くがどうだ?」
「あ、けっこうです」
「そうか」
「あの、事前に聞いた話だと、レッドドラゴンを討伐したって話だったはずなんですけど」
これ、絶対に人違いかなにかだ。ただの男娼にレッドドラゴンが討伐できるわけないし。
彼は「ああ」と言いながら鷹揚な笑みを浮かべる。「レッドドラゴンね。たぶん、そうだと思う」
「たぶんじゃ困るんですよ。たぶんじゃ。絶対確実に、そうだと断言してもらわないと。もう一回倒せるって断言してもらわないと困るんです」
「そう言われてもな。倒して証明しようにも、レッドドラゴンなんて、そうそういるものじゃないだろう」
こいつ。どうせレッドドラゴンなんかいるわけないし大丈夫だ、とか思ってるんじゃないでしょうね。
「別に、レッドドラゴンじゃなくてもいいんですよ。ちょうど、キングブラッドホーンの討伐依頼が出ています。あれくらい、当然倒せますよね? レッドドラゴンを倒したことがあるんですから」
「ん? ああ、もちろん」
よーし、言ったな?
「じゃあ、討伐してくれますよね?」
「いいだろう、ではこうしよう。俺の特技は絶頂魔法なんだが」
「ぜ、絶頂!」なんだ、そのいかがわしい魔法は!
「この絶頂魔法で君を倒してみせる」
「は?」
「俺の実力を疑うなら、見せてやろう」
彼はすっと手を前に出す。
「何さらしとんじゃ、てめえこら!」彼に何かされる前に私は彼の顔面に拳をたたきこんだ。
彼の鼻から鼻血が垂れる。彼は鼻血をぬぐうと「どうした?」と言って、けげんな顔をする。
「どうした、はこっちのセリフだよ! 何を血迷って、私に絶頂魔法なんか使おうとしてんだよ! キングブラッドホーンを倒してこいっつってんの!」
「あれは危険度6のモンスターだろう? 危ないじゃないか」
「いいから行ってきなさいよ! 倒せるんでしょ!」
もう怒った。こいつの化けの皮はいだうえで、謝らせるまで、絶対に許さない。
「やれやれ、しかたないな」彼は首を横に振ると、席を立った。




