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追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─  作者: 石田空


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夏のひとときアフォガード

 牧場に出かけ、ジェラートの買い取りの交渉に出かけた。牧場の女将さんは不思議そうな顔をしている。


「そりゃうちはかまわないけど。でもジェラート食べたいだけだったら、うちにわざわざ来ることはなくなるのはちょっと困るねえ。ジェラートはなかなか日持ちしないから、作り置きできないし」

「ほとんどクリームですもんね、ここのジェラート。ですから、差別化を謀りたいと思います。私も店で出すときは、ジェラートをそのまんまは絶対に使いません。他のお菓子と合わせてでしか出しませんし、ジェラートそのまんまはここの牧場で食べてほしい旨を伝えます。これだったらどうですか?」

「んーんーんーんー……」


 結局は「今度牧場用のメニューも考案してくれたら」というのも追加で、取引は成功した。

 よしよし。私はたくさんくれたジェラートを、魔法石でガンガンに冷やして持って帰ると、「あれ、ミーナさん?」と声をかけられた。

 久々にジーノに出会ったんだ。


「あら、ジーノ。お久しぶり。レモン農園はどう?」

「はあ、おかげさまでレモンは元気ですよ。そっちの器は?」

「牧場でジェラートを買ったの! これで新しい店のメニューをつくるつもり。あと女将さんに言われて新しいジェラートの味も考えないとねと思ってたところ。王都だったらこんなに味の濃いジェラート食べたことないから、どんなフレーバーにしてもおいしいと思うんだよねえ、楽しみ」


 私がうきうきしていると、ジーノは「はあ」とのんびりとした声を上げた。


「まあこちらに来て、ミーナさんが元気でよかったです。今度の船で、また王都にレモン売りに行こうと思ってるんですけど、そこで王都の神殿の様子を見に行ってもいいですかね?」


 そう言われて、私はギクリとした。

 ……ルカさんは逃げ出した私のことなんぞ忘れて、元気で過ごしてほしい。侯爵様は多分私なんかいなくても、婚約なんて引く手数多だろうし、聖女じゃなきゃ嫌なんて、公爵令嬢な現聖女様に声かける阿呆ではないと思うし。ハハハハハ。

 私はダラダラ冷や汗を掻きつつ、返事を出した。


「私がいなくっても、ルカさん元気か見てきてくれる?」

「ええ?」

「食の趣味が合わないだけで、悪い人とは思ってないのよ。私が合わんと思っただけで。ハハハハハ」

「別に誰も、聖女様の婚約破棄についてはとやかく言わないとは思いますけどねえ」

「聖女放っておくと肥料扱いしかされない。大昔だったらいざ知らず、今はそこまで尊敬されない」

「いや、それはいくらなんでも謙遜し過ぎでは。まあ、ルカ様の様子を見るくらいでしたら、なんとか」

「ええ、お願いね」


 私はそう言ってから、店へと帰る。

 その日はもうティーサロンはお休み。その日はカーラさんがつくってくれたペスカトーレを頬張りながら、ジェラートでつくるお菓子を組み立てていた。

 それにしても、カーラさんのつくるペスカトーレはおいしい。この宿で出されるご飯はなんでもおいしいけれど、海鮮系は外れなしだ。


「おいしい……魚介の旨味が凝縮してる感じがして、このペスカトーレ絶品ですよぉ」

「大袈裟さね。漁師たちが持ってくるその日の食材をジャジャッと炒めて、白ワインで蒸し焼きにする。そのあとドライトマトと塩、砂糖、ハーブを加えただけだよ。あとはパスタを投下したら完成だから、大したことしてないしてない」

「言ってるほうは簡単に言いますけど……やっぱりおいしいです」


 魚介が新鮮なのもそうなんだけど、火入れが絶妙なんだよなあ。いくら魔法石で火力を上げても、上げ過ぎたらたちまち身が固くなってしまうし。だからと言って薪で火を入れると、火力が足りなくっていつまでも魚介に火が通らない。ワインだって酒気を飛ばさないとおいしくならないからなあ。

 ハフハフと食べ終え、「ごちそうさまです!」と言いながらお湯を沸かしはじめた。


「そりゃよかった。でも今飲み物だったら、そっちのピッチャーに水汲んであっただろ」

「いえ! ちょっとやってみたいことがありますんで」


 私はそう言いながら、大麦コーヒーをできる限り濃く調整して淹れた。

 器にジェラートをできるだけ高く盛り、そこに大麦コーヒーを注ぐ。熱でジェラートが溶けるものの、山盛りにした分だけ、全部は溶け切らずに残る。


「なんだい、これ」

「アフォガードです。王都だと、コーヒーや紅茶をジェラートに注いだものを食べるのが流行ってたんですよ」

「わざわざジェラートを溶かさなくってもいいとは思うけど」

「そういうのは牧場で食べてもらえばいいんで。試しにカーラさんもデザートとしてどうぞ」

「どれどれ、いただきます……うん? 思ってるよりさっぱりとしてるねえ」


 カーラさんがそう言うので、私も思わず食べてみる。

 うん。コーヒーに生クリームを入れることもあるけど、これじゃジェラートとクリームコーヒーのいいとこ取りだなあ。

 ジェラート単品だけだと、本当にクリームたっぷりで、味は濃厚だけれど、溶けきる前に食べないといけなくなったら、途中で冷えて疲れてしまう。でも最初から溶けるの前提で食べたら、そのクリーミーさがコーヒーの苦さを丸くしてくれる。

 大麦コーヒーでやったのは初めてだったけれど、味が丸くなっておいしい。


「よかった、おいしいです」

「うん。ジェラート本体は牧場で食べてもらうとして、差別化はできるね」

「はい……あとは牧場の女将さんに頼まれた、ジェラートの新作も考えないと、あんまりたくさん材料が入るのは女将さんも困るだろうから、いろいろ考えないと」


 私はうきうきしながら、次のお菓子について考えはじめた。

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試食はまず自分から食おうず……おいしくてよかったけども(;'∀')
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