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第三十八話 「本当の決着」(後編)

「古代魔法。」


その一言が、夜の平原に静かに響いた。


風が止む。


虫の鳴き声が消える。


世界が静まり返る。


ジゼルはゆっくりと空を見上げた。


夜空に輝く無数の星々。


その一つ一つが、まるで呼吸をするように輝きを増していく。


平原は星明かりに照らされ、昼間のように白く染まっていく。


アルの身体から溢れ出す魔力は、なおも膨れ上がり続けていた。


ジゼルは息を呑む。


額を一筋の汗が伝う。


(これが……。)


(こいつの矛か。)


刀を握る手に力が入る。


逃げれば、生きられるかもしれない。


だが。


そんな考えは、すぐに捨てた。


「はっ……。」


思わず笑みがこぼれる。


「最後の最後で。」


「とんでもねぇもんを隠してやがった。」


キィィィン……


キル・ラディウスが低く唸る。


五メートルの領域が揺らぎ、周囲の草木が音もなく切り裂かれていく。


ジゼルは刀を構えた。


「全部。」


「斬ってやる。」


アルは静かに右手を掲げる。


「《アビス・ノヴァ》」


その瞬間。


夜空の星々が、一斉に眩い光を放った。


世界が白く染まる。


轟音すら、聞こえない。


ただ、光だけが平原を包み込んだ。


――。


やがて。


光がゆっくりと消えていく。


夜風が吹き抜けた。


そこには、大きく抉れた平原だけが残っていた。


ジゼルは仰向けに倒れている。


刀は手から離れ、静かに地面へ転がっていた。


「……はは。」


乾いた笑いが漏れる。


「こんなのありかよ。」


アルはゆっくりと歩み寄る。


一歩。


また一歩。


足音だけが、静かな平原に響く。


ジゼルは薄く目を開いた。


「お前、人間じゃないだろ。」


アルは足を止める。


「だから、魔王様も…」


アルの表情が変わる。


「……魔王?」


「おい!」


「どういう事だ……おい!」


ジゼルは小さく笑う。


「…魔王様は、お前とお仲間を殺すだろうな。」


そう言い残し、静かに目を閉じた。


夜風が吹く。


アルはその場に立ち尽くしたまま、夜空を見上げる。


さっきまで眩く輝いていた星々は、何事もなかったかのように静かな光を放っていた。


「魔王……。」


アルはその名を小さく呟く。


その言葉だけが、静かな夜に溶けていった。


〈第三十八話・了〉

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