第三十九話 「あの日のその先へ」
ジゼルの身体は、静かに光へと溶けていく。
やがてその姿は塵となり、夜風に乗って空へ消えていった。
平原には、静寂だけが残る。
アルは剣を納めると、その場へゆっくりと倒れ込んだ。
夜空には、無数の星々が静かに輝いている。
「……ようやく、終わったよ。」
「グレイス。」
そっと目を閉じる。
あの日から止まっていた自分の時間が、ようやくその先へ進み始めた気がした。
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数時間後
目を覚ますと、見慣れた天井が視界に映った。
ギルドの医療室。
身体を起こすと、隣のベッドにはギル、ルシア、レオン、クロードたちの姿があった。
(……良かった。)
(みんな、無事だったんだ。)
その時、足音が近づいてくる。
「起きたか。」
ギルだった。
「ギルか……。」
アルは小さく笑う。
「心配、かけたな。」
ギルは腕を組み、鼻を鳴らす。
「まったくだ。」
「お前が魔人と一緒に姿を消した後、こっちがどれだけ気を揉んだと思ってる。」
「ネオ達が回復魔法をかけてくれてなけりゃ、こっちも動けなかった。」
ギルは少し声を落とした。
「戻ってきたお前を見つけた時、正直……生きてるとは思わなかった。」
アルは窓の外へ目を向ける。
朝日が王都を優しく照らしていた。
「……そうか。」
「心配、させたな。」
その一言だけで十分だった。
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六日後
怪我も癒え、皆はいつもの日常へ戻っていた。
そして。
ゴーレム討伐、そして魔人討伐の功績により、アルたちはギルドへ呼び出されていた。
「久しぶりだね。」
レオンが笑う。
「この四人で集まるの。」
「六日ぶりだからね。」
アルも笑い返す。
すると、ルシアが一枚の紙を取り出した。
「ねぇ!」
「パーティ名、考えてきたんだけど!」
「どうかな?」
風が紙を揺らす。
レオンは笑顔で頷く。
「いいじゃん。」
アルも笑う。
「俺も好きだ。」
ルシアはギルを見る。
「ギルは?」
ギルは照れくさそうに頭を掻いた。
「悪くない。」
ルシアは満面の笑みを浮かべる。
「やった!」
「じゃあ、決定ね!」
四人は笑いながらギルドへ入っていった。
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受付では、フローラが待っていた。
「皆さん!」
「本当に、本当に良かったです!」
その目には涙が浮かんでいる。
「皆さんが帰ってこなかったらどうしようって……。」
ルシアは優しく微笑んだ。
「ただいま。」
フローラも涙を拭いながら笑う。
「ギルドマスターがお待ちです。」
「こちらへどうぞ。」
重厚な扉が開く。
部屋の奥には、大柄な男が座っていた。
「来たか。」
「座ってくれ。」
四人は椅子へ腰を下ろす。
「俺は、このギルドのギルドマスター。」
「ローガスだ。」
ローガスは一度四人を見渡した。
「まずは、あのゴーレムについて話そう。」
部屋の空気が少し重くなる。
「結論から言う。」
「あのゴーレムは、何者かが意図的に造った 可能性が極めて高い。」
アルたちは静かに耳を傾ける。
「君たちも見た通り、核は魔石ではなく人だった。」
「調査を進めたが、損傷が激しく身元は判明していない。」
「性別も特定できなかった。」
「だが、身長などから判断するに……子供だった可能性が極めて高い。」
誰も言葉を発しない。
「人を核として利用するゴーレムなど、ギルドの記録にも存在しない。」
「誰が、何のために造ったのか。」
「今も調査を続けている。」
アルは静かに目を閉じた。
(……やっぱり。)
(あの子は、誰かに利用されたんだ。)
ローガスは続ける。
「魔人についても同じだ。」
「何を目的にダンジョンへ現れたのか。」
「現時点では、何も分かっていない。」
「……分からないことばかりだ。」
一度空気を切り替えるように、ローガスは表情を和らげた。
「暗い話はここまでだ。」
「次は、お前たちの話をしよう。」
四人は顔を上げる。
「今回の功績を受け、ギルドはお前たちを——」
「Cランク冒険者へ昇格させることを決定した。」
「「「「えぇぇぇっ!?」」」」
ルシアが勢いよく立ち上がる。
「えっ!? 普通は昇格試験がありますよね!?」
「しかも、一気にCランクですか!?」
ローガスは笑う。
「そのくらいの功績だったということだ。」
「それと。」
「ギルドの記録や王都への報告もある。」
「パーティ名が決まっているなら教えてくれ。」
ルシアは満面の笑みで頷いた。
「あります!」
四人は互いに顔を見合わせる。
そして、声を揃えた。
「シムニクル!!」
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こうして、俺たちは正式にCランク冒険者となった。
クロードたちも。
ネオたちも。
それぞれCランクへ昇格した。
帰り道。
ルシアが大きく伸びをする。
「次の依頼は、平和なのがいいなぁ。」
ギルは思わず笑った。
「前と言ってること違うじゃねぇか。」
ルシアは照れ笑いを浮かべる。
「冒険も、ほどほどが一番だよ。」
その言葉に、皆が笑う。
笑い声は青空へ溶けていった。
こうして——
俺たち『シムニクル』の名は、王都中へ広まっていく。
だが。
この時の俺たちは、まだ知らなかった。
ダンジョンで見つかった、あの子供。
そして、世界を蝕もうとする、
さらなる脅威。
その二つが、やがて王国を揺るがす大きな事件へ繋がっていくことを。
新たな物語は、もう始まっていた。
〈第三十九話・第二章 了〉
【第二章「王都編」完結しました】
いつも「最弱アンデッド」を読んでくださり、本当にありがとうございます!
今日をもって、第二章「王都編」が完結しました!
148年分の記憶を抱えたアルが、ようやく「あの日」に決着をつける——長かった王都編、最後まで見届けてくださった方、本当にありがとうございます。
そして、物語はまだ終わりません。
次は舞台を移し、第三章がスタートします。アトラニアという新しい国で、アルたちを待つ新しい物語です。
さらに実は今、「最弱アンデッド」とは全く別の新作の構想も進めています。まだ詳しくは言えませんが、こちらもどこかでお披露目できたらと思っています。
※どちらも公開は、まだ少し先になる予定です。
まだまだアルたちの物語も、その先も、楽しみにしていてください!
いつも応援ありがとうございます。




