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第三十八話 「本当の決着」(前編)

夜風が、静かに平原を吹き抜ける。


抉れた大地。


焼け焦げた草原。


辺りには、二人の戦いの爪痕だけが残っていた。


ジゼルは刀を構えたまま、アルを見つめる。


「……やっぱり、何なんだ、お前は。」


アルは答えない。


グレイスの言葉が、まだ胸の奥に残っていた。


――もう、ご自分を許してあげてください。


アルはゆっくりと息を吐く。


もう、迷いはない。


剣を静かに構え直す。


「始めよう。」


ジゼルも刀を構えた。


「本当の決着を。」


ドンッ!!


二人は同時に地面を蹴った。


キィィィン!!


剣と刀がぶつかり、鋭い火花が夜を裂く。


一撃。


二撃。


三撃。


互いに一歩も譲らない。


ジゼルの斬撃は速い。


だが、アルは最小限の動きで受け流していく。


「……。」


ジゼルの眉が僅かに動いた。


(剣筋が変わった。)


さっきまでとは違う。


無駄がない。


まるで何十年も剣だけを振り続けた達人のような太刀筋だった。


アルが一歩踏み込む。


「スキル再現――《神速》」


ドンッ!!


景色が揺れる。


アルの姿が、ジゼルの視界から消えた。


「っ!」


横薙ぎの一閃。


ガキィィン!!


間一髪。


刀で受け止める。


衝撃で足元の地面が砕けた。


「速……。」


ジゼルはすぐに後方へ飛ぶ。


(身体強化じゃない。)


(速度そのものを引き上げるスキル……。)


アルは追撃する。


ジゼルが刀を振るう。


キル・ラディウスが唸りを上げた。


目に見えない斬撃がアルへ襲い掛かる。


しかし。


アルの身体が、紙一重でその全てをかわす。


「スキル再現――《見切り》」


「……また?」


ジゼルの口から思わず声が漏れる。


アルは止まらない。


剣を返し、一気に間合いを詰める。


その剣筋が、また変わる。


重く。


鋭く。


一撃一撃が、まるで大剣使いのような重圧を帯びていた。


ガギィィィン!!


ジゼルは受け止める。


だが。


押される。


足が地面を滑った。


(さっきまでと……。)


(また違う。)


アルは一歩下がり、剣先を静かに下ろす。


呼吸は乱れていない。


「……。」


ジゼルは刀を握り直した。


(速さのスキル。)


(回避のスキル。)


(今度は剣術。)


(何なの。)


(こいつ……。)


額を、一筋の汗が伝う。


(スキル、何個持ってるの……?)


アルは静かに口を開いた。


「まだ終わりじゃない。」


「俺には、まだある。」


その一言だけで、ジゼルの表情がわずかに曇る。


夜風が吹き抜けた。


二人は再び地面を蹴る。


激しい剣戟が、静かな平原へ響き渡った。



〈第三十八話・中編へ続く〉

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