第三十一話 「打つ手なし」
ゴーレムは両腕を大きく振り上げた。
次の瞬間――
無数の土塊がアルへ向かって撃ち出される。
(さっき聞こえた風切り音……。)
(あの音の正体は、これだったのか。)
「アル! 危ない!!」
ニキが叫ぶ。
アルが顔を上げた、その瞬間だった。
巨大な左腕が目の前まで迫っていた。
(まずい……。)
(避けきれない!)
――ドォォォン!!
鈍い衝撃が全身を貫く。
「アル!?」
ルシアが悲鳴を上げる。
アルの身体は吹き飛ばされ、仲間たちとは反対方向へ大きく弾き飛ばされた。
何度も地面を転がり、ようやく身体を止める。
(骨まではいってない、まだいけるな。)
「大丈夫だ……!」
アルは立ち上がりながら叫ぶ。
(まずい。)
(みんなと距離ができてしまった。)
その時だった。
足元の岩が音を立てて崩れる。
砕けた岩の中から、小さな影が次々と姿を現した。
「……何だ?」
アルの前には、小型のゴーレムが五体。
ゆっくりとアルへ歩み寄ってくる。
____________
一方、その頃。
「はぁぁぁっ!」
クロードとギルが同時に飛び出す。
剣とガンドレッドが巨大なゴーレムへ叩き込まれる。
――キィィィン!!
金属同士がぶつかるような甲高い音だけが響いた。
「硬すぎるだろ……!」
クロードが歯を食いしばる。
「第四階級炎魔法!」
ニキの放った炎の狼がゴーレムへ直撃する。
しかし――
炎は身体を包み込んだだけで、傷一つ付けられない。
まるで火の粉が当たっただけだった。
Bランク冒険者が険しい表情で呟く。
「まずいな……。」
「物理攻撃も効かない。」
「魔法も通らない。」
「もう打つ手がないぞ……。」
ルシアがネオを見る。
「ネオの眠らせるスキルは?」
ネオは首を横に振った。
「ダメだ。」
「生きている相手ならともかく、あれは生物じゃない。」
「俺のスキルは効かないだろうな。」
ギルはゴーレムを睨みつける。
「しかも、魔力の揺れがない。」
「攻撃の予兆が全く読めねぇ。」
ネオが苦笑する。
「まるで、アルみたいだな。」
ホークも息を呑んだ。
「どちらにせよ……。」
「何とかしないと、本当に全滅する。」
巨大なゴーレムは、ゆっくりと再び腕を持ち上げる。
誰も、有効な攻撃手段を見つけられないまま――。
〈三十一話・了〉




