第十九話 「仲間の代償」
ギルが飛び出してから、しばらく時間が経った。
「どうします……?」
不安そうにルシアが口を開く。
「どうするって、連れ戻すしかないだろ。」
レオンは森の奥を睨みながら答えた。
一方、その頃――
俺は森の奥へ視線を向けていた。
(ギルが走り去った方向から爆発音……。もう戦闘が始まっている。)
「レオンとルシアは、ここで旗を守っていてくれ。
俺がギルを連れ戻してくる。」
「ダメだ。危険すぎる。僕も行く。」
「レオンがいなくなれば、ルシア一人で旗を守ることになる。」
俺は静かに続ける。
「俺は戦いに行くわけじゃない。ギルを連れ戻すだけだ。」
レオンは少し考え、小さく息を吐いた。
「……分かった。気を付けて。」
「行ってくる。」
――ドンッ!
地面を蹴った瞬間、アルの姿が森の奥へ消えた。
「え……アル君って、あんなに速かったの?」
ルシアは目を丸くした。
⸻
(これは、防げない。)
ハインのスキルで動きを封じられたギルへ、クロードの剣が振り下ろされる。
――バァァァン!!
「ようやく終わったな!」
ニキが安堵したように笑う。
しかし、クロードだけは剣を構えたままだった。
「……いや。」
「手応えが浅い。」
土煙の向こう。
そこには、小さな影が立っていた。
「おい、ガキ。」
ギルが舌打ちする。
「邪魔すんなよ。」
「ギル。間に合ってよかった。」
「何だ、あいつ……。」
ニキが目を細める。
「いつの間に入り込んだ?」
アルはギルだけを見て言う。
「帰るよ。作戦を立て直す。」
「あぁ? 作戦なんか興味ねぇって言っただろ。」
クロードが剣を構え直す。
「第三階級魔法――《エンチャント・フレーム》。」
炎を纏った剣が振り下ろされる。
――ドォォォォォン!!
土煙が舞い上がる。
「クロード! やった?」
ミリアが声を上げる。
「……いや。」
クロードは煙の向こうを見つめた。
「逃げられた。」
⸻
森を駆け抜ける二人。
アルはギルと並んで走っていた
「おい、ガキ。」
「……。」
「次、俺の邪魔をしたら、お前も殺す。」
「その話は後だ。」
アルは短く返した。
その瞬間。
二人は同時に足を止める。
「……!」
嫌な静けさだった。
さっきまで感じていたレオンとルシアの魔力が、
ほとんど動いていない。
急いで拠点へ駆け戻る。
そこには――
「レオン!」
「ルシア!」
二人は地面に倒れていた。
そして。
そこに立っていたはずの旗だけが、消えていた。
第十九話・《了》




