第十八話 「牙を剥いた連携」
ギルは、一人で森の中を駆けていた。
木々の間を縫うように駆け抜け、足元の落ち葉が小さく舞い上がる。
(こんな試験、早々に終わらす。)
視界の先。
木々の隙間から、一つの旗が見えた。
Aチームだった。
⸻
Aチーム
クロード・ヴァイス
ハイン・グレイ
ニキ・ローウェル
ミリア・セレス
⸻
木の上で周囲を見張っていたニキが、小さく口を開く。
「クロード。ネズミが一匹、こっちに向かってくるぜ。」
クロードは落ち着いた様子で指示を飛ばす。
「ニキは援護。
ミリアは回復魔法の準備。
ハインは旗を守れ。
あいつの相手は俺がする。」
ギルは足を止めない。
真っ直ぐクロードへ歩み寄る。
「他のメンバーはどうした? 一人か。」
クロードは周囲へ視線を走らせる。
(敵反応は一つだけ。)
(本当に単独か。)
ギルは無表情のまま言った。
「お前らがAチームか。一度だけ言う。
旗だけ置いて立ち去れ。」
クロードは静かに剣を構える。
「悪いが、俺たちも冒険者を目指している。
それは無理だ。」
(武器は……ガンドレッドか。)
「そうか。」
――ドォン!!
地面を蹴った瞬間、土が弾け飛ぶ。
一瞬で間合いを詰めたギルの拳が、クロードへ迫る。
クロードは剣で受け止めた。
ガンドレッドと剣がぶつかり合い、鈍い衝撃音が森に響く。
間髪入れず、ギルは二撃目。
クロードは剣を滑らせるように受け流した。
「こいつ……!」
すぐに叫ぶ。
「ニキ!」
木の上から魔法陣が展開される。
「第四階級炎魔法"フレイム・ハウンド"!!」
炎の狼が一直線に襲い掛かる。
ギルは身体をわずかに傾けるだけで、その牙をかわした。
その一瞬の隙。
クロードが踏み込む。
「終わりだ!」
剣が振り下ろされる。
「ッ!」
ガキィィン!!
ギルは歯で剣を受け止めた。
「はぁ!?」
思わずハインが声を上げる。
「マジかよ、あいつ!」
ギルは両腕を組み、そのままクロードへ叩き落とす。
轟音。
クロードの身体が地面へ沈み、土煙が舞い上がる。
「第三階級炎魔法"パイロ・ウィップ"!」
ニキが炎の鞭を放つ。
ギルはガンドレッドで受け流した。
火花が散り、炎が地面を焦がす。
その間に、
ミリアが魔法を完成させる。
「第三階級回復魔法"バイタル・ブレス"」
淡い光がクロードを包む。
傷が瞬く間に塞がっていく。
立ち上がったクロードは再び剣を構えた。
同時にニキも魔法陣を展開する。
クロードが叫ぶ。
「ハイン!」
「任せろ!」
ハインは一歩前へ出る。
「スキル――"ライオン・ロア"!!」
その瞬間。
ギルの視線が強制的にハインへ向く。
(……強制的に標的を自分へ向けるスキルか。)
(これは、防げない。)
ギルを中心に、四人が一斉に動き出す。
それぞれが役割を果たし、一切の隙を与えない。
――四人の連携が、一気に牙を剥いた。
〈十八話・了〉




