2.相互不信の絆
『……はっ!』
変な声を出して俺は飛び起きた
ケント「大丈夫でした…か?」
『大丈夫です…』
なんでまだいるんだよ!
ってかなんだあれは!
ケントの体からは尋常ではない量の汗があふれ出ていた
『お前、どれだけこの間、ずっとやってたのか?』
ケント「”お前”?」
『あ、すいません… つい…』
ケント「謝らないくていいよ!むしろ僕はうれしい!」
『はあ、それはどういうことで?』
ケント「だって、こっちの世界に来てからみんな敬語で話しかけてくるから悲しかったんだよ!」
「だから、これからはタメ口でいいから!ラオさん!」
『それでは… で、どうだった?剣の訓練は?見た感じずっと訓練してたようだが、
剣の難しさと自身の無能さにでも気づけたか?』
俺はさっきまでの3時間で貯めていたストレスをぶつけるつもりで皮肉を言ってみたつもりだった
ケント「ああ、そうだね 気づけたよ」
ケントはあっさりとそういった 予想外の回答に俺は思わず目を丸くする
ケント「ラオさんの動きはすごいし、僕に到底真似できるものではないよ」
『そう…か』
俺はケントのその言葉に違和感を覚えた
今の言葉はあまりに軽かった…
俺はその瞬間、こいつの瞳から優越感を感じなくなった
まるで俺を対等、いや完全に見上げるような瞳をしている
ケント「ホントのこと言うと俺は剣なんかやりたくないし、勇者もなりたくなかったんだよ」
『なら、ならなければ良かったじゃねぇか そのせいで今俺はこんな状況になってんのによ』
ケント「それは本当にすまなかった…! だけど…断れなかったんだ…」
『なんでだよ』
ケント「圧をかけられたんだ なんかこの世界のシステムがどうとか言われて…」
「多分、そのシステムのせいで俺は勇者となり、君は…」
『システム上、不都合のため勇者を辞めさせられた…』
いや、まだだ まだこいつが嘘をついている可能性も十分にある……
・・・だが、ケントの瞳は嘘をついているようには見えなかった
ならシステムってなんだ? この世界には"裏"があるってことか?
『よし、わかった…』 『ケント様、』
ケント「どうしたの?敬語になっちゃって」
『私があなたを最高の勇者にして差し上げましょう…!』
ケント「…!」
『あなたが今、勇者になることを望んでいなかったとしても、今はあなたが勇者になったほうがいい』
ケント「…そっか… わかった」
『あともう一つ、俺はまだお前を信じ切れてない だからお前も俺を信じるな』
ケントはうなずいた
そして俺は心の中で呟く
システムでもこの世界の裏でも全部ぶっ壊してやる…
この相互不信の絆で…




