5.不審で突飛とか言われました。
アンネリゼ様の、逃がしませんわ圧から、回復魔法を使った件だけは上手く省いて話していく。
王子様から、毎日毎日毎日手紙がくる事も。
「まぁ……そうだったの。
ねぇ、皆様。本当に信用できる者以外、下がられて頂けない?あ、お茶のお代わりは出来るように準備してからが良いわ」
──?
急に話を中断して、人払い?
今も、信用しているものしかいないと思ったけど。
アンネリゼ様も他の2人も侍従1人を残して、その他は顔も確認出来ないくらいの位置まで下がらせていった。
──あ、そうか、護衛もいるものね。わたしはベリルが護衛も兼ねてるから、1人しかいなかったけど。
さっ!とアンネリゼ様が手を振り魔法を振るう。
「今から、少々、令嬢らしくないことを、してしまいますからね。念には念を、入れますわ」
なぜかアンネリゼ様は少し震えながら、口調も途切れ途切れになりながら、半径5メートルくらいの半透明の、薄い赤色のドームを構築していく。
「少々、お手伝い、致しますわ」
と、アンネリゼ様のドームの内側に沿って、今度はハニカムパターンの柄が現れていく。
お手伝いすると言ったのは、ナターリエ・エルライン伯爵令嬢。
普段はナッティと呼ばれている。
「まぁ、いつもながら素晴らしいですわ、お二人とも……わたくし、土や石の壁ならすぐ出せますけど、こういった難しいものは……それに、しても」
結界に感嘆してるけど、言いながらプルプルしているのは、ステファニー・ボイド伯爵令嬢。
普段はフィンと呼ばれている。
そうこう言ってる間に、どうやら周囲から視界を遮断するものと、音を遮断する結界が完成する。
した途端。
「も、もう我慢できませんわ!ぷぷぷぷぷっ、ぷくーーーー!あはっ、あふふふぁっははは!!!」
「わたくしも、も、もう、駄目ですわ!く、く、くぅっ、くふふふふふふっ!ふぁっ、ははははは!!!」
「あははははははは!やっ、やっと笑えっ、るっ!んはっ!は、ははははは!!!」
3人とも、最初は堪え気味だったのに、もう口を隠しもせず、お腹をかかえて大笑いしているではないか!!!
「ちょ、耳目が無くなった途端、皆様ひどくありませんか!?」
「こ、これが笑わずおられますか!お、王子殿下を、ふ、踏みつけるなどっ!ふ、踏みつけ!?ぷっ、くぅっっぷぷぷぅんんんんっ!あははっっっ!」
「あ、アンネリゼ様、踏みつけ、と何度も言わないで、下さい、くふっ!ませ、くっ、ふふ!し、しかも転けて、軽い謝罪でっ、逃げ出すっ、などっ!」
「だ、だめ、だっ、はひっ、と、とどめにっ、殿下への返しに、そ、そんな返事をっ、ま、毎日っ!あはっ、あははははっ!」
──んーーーっ!!??
色々と衝撃が多すぎるけど、まずはっ!!!
「ちょっと皆様!そんな大口開けて笑うなど、全く令嬢らしくありませんでしょうっ!ひどいですわっっっ!!!」
「だ、だい、大丈夫ですわ、だから、こそ、こんな分厚い結界を、張っ、た、ぷぷっ!、のではありま、せんかっ!んぷぷぷっ」
「んなっ!!!張り慣れてるように見えましたが、まさか、いつもこんなことを!!??」
「た、たまにだけ、ですわ。わたくしだって、思いっきり、んんっ、感情をっ、出し、たい、ぷくくっ、時も、ありますわっ、ぷふふふふふっ」
「そう、んぐふっ、ですわ。時には、大笑いっ、したい時だって、くふっ、あります、わ。くふふふっっ!」
「ははははは!わたしの場合っはっ、土壁でっ!しゅ、周囲にはわかりやすすぎてっ、ははは、魔学ではっ、使えなかった、けど!はははははっ」
アンネリゼ様もナッティもひどいけど!
フィンに至っては、口調まで崩れてきてるじゃない!
ご令嬢方、いろいろ隠しすぎ!わたしも人の事言えないけどっ!
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ひとしきり笑ったあと。
ようやく、話してる最中も笑いが抑えられないというのは収まったようだ。
「ふぅ、久しぶりに、お腹が痛くなるほど笑いましたわ……」
「笑われたわたしは結構傷ついたので、お菓子没収しますね」
そう言って、指をすいすいと、皆の前のお菓子に向かって差し、風魔法でお皿ごと持ち上げて回収しようする。
「ああああ!!!わたくしのポテチが!」
「わたくしのチョコが!!!」
「わたしのバタピー!」
皆、わたしが前に、ついチラっと漏らしてしまったお菓子の略語使いこなしてるし。
ちなみに、アンネリゼ様がポテチ。
ナッティがチョコ。
フィンがバタピー。
それぞれが気に入ってるお菓子である。
「……戻してあげても良いですけど、皆様が大笑いするほど、何がいけなかったのか、教えて下さいね?」
「「「 もちろんですわ!!!」」」
フィンだけは、「もちろん」で止めてたけど、声が揃ってなにより。
また風魔法でお皿を戻す。
「では、お願いします!」
アンネリゼ様、ナッティ、フィン、と順番に、さぁどうぞ!と視線を向け、背を伸ばす。
まずアンネリゼ様が、わたしをジッと見つめて、顎に指を当てて何かを考えているので、声をかけた。
「アンネリゼ様?わたしの顔に何か付いてますか?」
「……何か付いている、と言えば付いてるわね。その自分の顔を薄っすら霧がかかったように隠す、認識を阻害する眼鏡が」
「……!!!」
──ば、バレてる!!!
この丸メガネお母様と一緒に作成した、魔道具である事も隠す、一級品なのに!
「分厚い結界も張ったことですし、外してみて下さらない?本当は、自ら外して頂くのを待つつもりでしたが……事故とはいえ、アレクが先に素顔を見るだなんて、うらやま……いえ、残念ですわ」
──今、羨ましいって言おうとしたね。
でも、結局、王子様にはバレちゃってる訳だし。
領地では掛けてないんだから、3人を招待した以上いずれ素顔は知れる。
今ここで外しても、少し早い時期なだけだ。
「……わかりました」
意を決して、丸メガネを外す。
「まあ……!」
「「…………!!!」」
アンネリゼ様は声を出して驚いているけど、あと2人は声を出さず驚いている。
こっちも驚かれた事に驚いていると、ベリルが突然、にゅっと視界に入ってきた。
「クラリッサ様、失礼します。認識阻害に何かあった時に困らないよう、顔色を悪くみせる化粧も施しておりますので、すぐに取ります」
「えっ」
と、声に出した直後、あっという間に化粧どころか髪型まで領地にいた頃に戻される。
早業すぎ!
3人は呆然としたままだったけど、アンネリゼ様が一番早く立ち直り、残り2人も続いた。
「……これは、アレクが一目惚れしてしまうのも納得ですわよ」
「そうですわ……すごく、可憐で可愛いですもの」
「殿下は、この素晴らしく可愛い顔を見てから、いつもの隠された姿を見たのですか。これは、追いかけたくなるかも」
──アンネリゼ様、ナッティ、フィン!褒めてくれるのは嬉しいけど、不穏な言葉が混じりまくってるよ!!!
「ちょ、ア、アンネリゼさま、ひ、ひ、ひとめぼれとは、なんですか???ふぃ、ふぃ、フィンっ、おいかけたくなる、とは?」
「クラリッサ様、落ち着いて下さいませ。また残像付き震えになってしまってます」
──落ち着いていられるかーーーっ!!!
ベリルが肩に手をポンポン当てて、どうどうどうと落ち着かせようとしてるけど、不穏ワードを放っておけるわけがない!
「あらぁ、クラリス。あなた、その見た目で、中身は全く違いますのね。あまりに清楚で可愛らしい容姿にびっくりしましたけど。態度がいつもの、たまに不審で突飛な行動を起こすクラリスで、わたくし安心してますもの」
「ふしんでとっぴ」
「はぁ、そうですわ。良く観察していましたら眼鏡がないだけで、いつものクラリス様ですわ」
「うん、そうですね。最近良く見ていた、風の速さで走り出しそうなクラリス様です」
──さっき丸メガネを外した直後は、距離が広がっちゃったかな、と感じていたのに、あっさり戻っちゃった。
そんなに普段から不審かい?わたし。
確かに今、逃げたいって思ってたけども!
「クラリスが落ち着いたようなので、話を先に進めますわね」
そうだった!丸メガネの事じゃなくて、失敗の方を聞かなきゃ!
取り巻きA・Bに名前が付きました。
この2人も活躍していきます。




