20:埋もれていたいんです!
あれ?ふかふか。
さっきまで硬い床だった気が。
ここ、どこだろ。あれ?カーテン?
「クラリス…………!」
目を開けてびっくりした!
どアップ王子様の顔が目の前!!!
「ひにゃっ……………ぁ………」
──あれ?叫ぼうとしたんだけど。
声があんまり出ない。
「クラリス……良かった。目が覚めたんだな」
──この顔、ちょっと前に見た。
デジャブってやつじゃないかな。
「クラリス!起きましたの!?」
──あ、アンネ様。
「クラリス〜〜〜!良かったわ。わたくし、他の皆を呼んできますわ!」
アンネ様は、わたしの顔を見たら回れ右で、すぐ部屋から出ていったみたい。
「クラリッサ様。お目覚めになって良かったです……わたくし、このままクラリッサ様がお目覚めにならなければ、死んでお詫びするしかないと思っておりました」
──どっかで聞いたセリフだね。
王子様の隣を見ると、ベリルがいた。
「ベリル……良かった。ちゃんと、生き、てた。良かった、よぉ…………ひっく、うぇ……」
安心して涙がいっぱいでるけど、声があんまり出なくて苦しい。
どうしちゃったんだろ、わたし。
「殿下、説明をお願いします。クラリッサ様が聞きたがっています」
「そなた、さすが乳母だな。俺も分かるようになりたい」
──教えてくれるなら、早く。
王子様は、わたしの手をずっと握っているので、指を動かして合図した。
「クラリス。
君は魔力欠乏で倒れた。俺が油断して切られて。それから、君が回復魔法で癒してくれた。覚えているか?」
───え?
あ!!!!
「あ、でんか、きず、は」
──ええい!声が出なくてもどかしいっ。
「俺は全く正常だ。今や古傷もなくなった」
────良かった。
最後の姿、血だらけで顔も真っ白になってたんだもん。思い出したらゾッと背中が冷えた。
「大丈夫か?今、手が急に冷えたぞ」
そう言って、握っていた手の上に、更に手を重ねて、撫でてくれる。
──あ、温かい。
王子様、ちゃんと生きてる。
「よ、よか、った、です。ぶじ、で」
ポロッとまた涙がこぼれた。
しょうがないのだ。
安心したんだもん。
「うん。無事だ」
───優しい笑顔。
そうだね。無事なら、良かった。
「…………ベリル。すまないが、少し時間をくれないか。大事な話がしたい」
「…………畏まりました。5分だけならば」
「感謝する」
そんな事を話して、ベリルは少し遠くに離れて背中を向けた。
まだ寂しく感じてるから、部屋の中にいてくれるなら安心だ。
「クラリス、大事な話がある。聞いてくれるか?」
──声があまり出ないので、頷きで返した。何だろ?大事な話って。
ちょっと間があるな、と思っていたら、握っていた手を、もう一度両手でギュッとされた。
「クラリス、君が好きだ」
────え?
「ひゃ……、す、……す、すき?」
───今、なんて?
好きだ、とか聞こえた!?
「そうだ。
…………目が覚めない君を見て、このまま君を失ってしまったらと、恐ろしくなった。
俺は、追いかけて、押しかけてばかりで、気付いて欲しくて。
そんな事ばかりして、大事な事を言わなかった事を、後悔した」
「ひゃ……、ひゃ……い」
──これは、声が出ても出なくても、こんな返事しかできないと思う!
「ちゃんと自分の気持ちは伝えていかないと、と思った。だから、もう一度言う。
クラリス。君が、好きだ。
…………君が俺に笑顔を向けてくれた時から、
ずっと、好きだった」
王子様は、ものすごい真剣な、だけど愛おしい人を見る目で見つめてくる。
わたし、知ってる。
だって、お父様、お母様にこんな顔いつも向けてるもの。
だから、王子様が、本気なのも。
ちゃんと、分かる。
ドクドクドクドクドク
静かだから、自分の心臓の音が王子様まで聞こえちゃうかもしれない。
顔に血が上ってくのが分かる。
たぶん、真っ赤になってる。
鼻の奥がジワジワする。
ポロッ……
あ、なんで、涙。
でも、我慢できない。
ポロポロこぼれる。
さっきから、わたし、泣きっぱなし。
でも、止まらない。
「す、すみま、せ。と、とまら、なくて」
「クラリス」
「ひゃ、……ひっく……ひゃい……」
「抱きしめても、いいか」
「ひぇ?」
───なんて事をいうのだ。
涙、止まらないのに。
でも、嫌じゃなかった。
目の前の温かさが欲しくなった。
「ひゃい……」
「ありがとう」
身体はあんまり動かないけど、少しだけ王子様の方に向こうと頑張った。
王子様は、握っていた手の片方だけ外して、ゆっくりと片腕をわたしの身体の方に動かして、抱き上げようとしてくれる。
──────その時だった。
「はーーーーーーーいっっっ!!!
そーーこーーまーーでーー!!!!」
───え!!!???
抱きしめ合う直前だった王子様の身体が、急に離れていった。
どうやら、王子様はお父様に無理矢理引き剥がされたみたいで。王子様の真後ろに、いつの間にかお父様が立っていた。
「抱きしめるとかーー?まだ僕許してないんだけどー?どういう事かなー?」
「ジェシー、見苦しいわ〜」
「侯爵!良いところでしたのに!」
「恋物語、現実版がぁ〜!」
「もうちょっと待ってれば、絶対ちゅーまでいったのにー!なんで止めるんだー!」
── な ん で !!??
なんで、みんないるのーー!?
「み、みん……、な。みて、た、の?」
──恥ずかしいっ!どうしよう!穴があったら入りたい!
でも、身体も口も動かないー!!!
「義父上!クラリスはまだ本調子ではないのです!騒ぐのは後にしてして下さい!」
「おーまーえーにぃぃぃぃ〜!!!義父と呼ばれる筋合いはない〜〜っ!クラリスは渡さないぞ!」
──義父上!?王子様、何言ってんの!?
お父様も変な事言い返さないでぇ!
「……ちょ…ま…」
──ええい、声が出ない!
2人ともわたしの声は聞こえないみたいで続けて言い合っている。
「クラリスは物じゃありません!クラリスの結婚相手を決めるのはクラリスであって、義父上ではないでしょう!」
「貴様ーっ!!!また呼んだな!しかも結婚なんて認める訳がないだろーがっ!!!クラリスはまだ16だ!!!」
「婚約と言う手段もあります!」
「王家と婚約なんて、すっっっごい嫌な思い出しかないやつ!もっと無いわ!!!王都へ帰れ!若造がぁっ!!!」
──いつ、わたしが婚約まで了承した!?
ちょっと!わたし、あわあわしてただけで、何にも王子様に返事してないの!婚約なんてするわけないでしょー!
あと、2人共わたしが本調子じゃないの、忘れてるよね。
そんな言い合いが止まらない2人を睨みつけていると、違う声がしてきた。
「あらー。これはジェシーの方が悪物ね」
「奥様。止めて下さい」
「イヤよー。面倒くさい」
お母様とベリルだった。
しかも、あの2人を止める気は無いらしい。
「わたくし、このまま観戦してますわ」
「わたくし、書紀しますね」
「わたしはお腹減ったよー」
わたしの部屋のテーブルに既に着席している、アンネ様とナッティとフィンが勝手な事を言いながら、お茶会の準備をしだした。
──ちょ、外野。
なんで止めない方向なの。
調子悪いの。わたし。
あんまり話せないの。
──はっ!思い出した!
バーナードと、エドワードさんはどこ!あの2人なら侍従同士だから止めてくれるんじゃ!
あまり首も動かないけど。
それでも頑張って頭を動かして、皆の後ろの扉の方を見てみると、扉の少し離れた所で2人は並んで佇んでいた。
その顔は、どうみても主人の2人を見てるようで見ていない。『ワタシハ、ココニイマセン』と身体中で表現していた。
───おーいっっ!主人を止めたまえ!
喧嘩する、王子様と父。
もはや世間話をする、メイドと母。
おやつの準備をする、友だち達。
いないふりをする、侍従2人。
具合が悪くて話せない、わたし。
こんなカオスがあるだろうか。
なんでベッドの周りで騒ぐの。
大騒ぎしたら目立つでしょ。
わたし、目立ちたくないんだってば。
叫びたい。大声で。
出来れば部屋の中心で。
わたし、埋もれていたいの!
今回は布団でいいから!
だーれーか!きーいーてー!!!
──── 完 ────
読んで頂き、ありがとうございました!
こちらの話にて一旦完結とさせて頂きます。
番外編を後2つ書いてありますので、
誤字脱字などチェックをいれて
投稿したいと思っております。
番外編はひとつはクラリッサ。
あと一つはナターリエ視点となります。
無事に投稿出来たら読んで頂けると嬉しいです。
あと。
アレクシスの一人称は誤植ではないです。
隠しても意味が無いと、割り切ってしまっただけです。
この辺も書ければ良いのですが⋯。
まだ構想も練られていないので、
すぐには難しいかもしれません。
以上、蛇足でした!




