17―2.閑話:犯人推理と救出作戦
引き続き、アンネリゼ視点です
犯人の推理が入りますので
台詞が長くなっております
カトリーナ様と入れ違いで、フィン、アレク、エドワードが部屋に入って来ました。
「どういう事だ!アンネ!
お前や仲間がついていながら、何故クラリスが誘拐される!」
掴まれてはいませんが、掴まれそうな勢いでアレクが側に来ました。
分かっていましたけど、理不尽ですわ。
「アレク!落ち着け!あのベリルさんがやられてるんだ!アンネに何か出来たわけがないだろう!」
「エド、失礼でしてよ!」
「アンネ様、申し訳ございません。お願いがございます」
ナッティ、アレクと吠え合う前に入ってきましたわね。さすがですわ!でも、渡された資料で顔が見えにくいです。
「エルライン嬢、少し持とう」
「ありがとうございます。申し訳ございませんが、机でなく、そちらのテーブルに置いて頂けますか。広げますので」
ナッティは資料が重かったのでしょう。王子であろうが使う事にしたみたいです。
「アンネ様、5分下さい。全部読みます。あと、話は聞いてますが、返事はしなくなります。ご容赦下さいませ」
え、この、大量の資料を5分!?
アレクもびっくりして目を丸くしてますわよ!あ、エドもですわ!
「あと、お願いが。途中で誰かから口頭報告があれば、出来れば文字にして下さい。読みます。では、申し訳ございません、始めます」
すると、ナッティは右手の人差し、中、薬指を少しだけ広げ、ザザザーッと文字を高速でなぞり始めました。覗き込んでみると、目が一点を見ているとみえるけど、良くみれば高速で上下左右に動いてました!凄すぎます!
「すごいな」
「ですわね」
これしか出ませんわ。
「お二人共、筆頭侍従が入室して宜しいか、と」
先にナッティの凄技から目を逸らせたエドが、扉のノックに気づいた様です。
カトリーナ様が仰っていた手助けに間違いございません。エドに扉を開けて貰います。
現れたのは、バーナードです。
ベリルさんの状況を知らせに来てくれたのでしょう。
「失礼します。早速ですが、妻の容体をお伝えします。使われたのは意識を失う薬。こちらは単純で、解析内容はこちらに記しております。
問題は使われた魔道具です。
解析した所、魔学にて侍従に着けられる楔の魔道具を改造したものでございました」
「なんですって!?」
「侍従に着けられるものは、全て回収されるだろう!?解析出来ないように防御も組んであったはずだ!」
アレクと共に解析表を見ますが、わたくし魔道具は苦手なのでした。なので、すぐナッティの側に置きます。話を聞いていると言っていたので、目を通すはずです。
「魔道具自体が人の手で作られるのです。ですから、何かしらの手段で解析されたと考えた方が宜しいかと。現に使われているのですから」
バーナード、言動がベリルそっくりですわ。いえ、それより内容ですわ!やはり魔学の関係者と侍従が犯人でしょうか。
でも、範囲がまだ広すぎますわ。
「ああ、来たようです。
先程、植物園入口付近で目撃されていた男が捕縛されまして、ここに連れて来るよう伝えてあったのです。殿下、入れても宜しいでしょうか?」
「ああ、連れてこい」
もー、アレクはさっきまで居なかったのに。主導権握るのは頂けませんけど、突っ込みませんわ!急ぎですから!
バーナードに連れて来られたのは、なんの特徴もない中年の男でした。わたくし達を見て挙動不審になっていますわ。
「おい、お前。クラリスに何をした」
──ちょーっと!アレク!
冷気だすの早すぎますわ!凍りついた後で溶かすのは、わたくしですのよ!?
「ひぃっ……」
「アレク!抑えて下さいませ!話せるものも氷らせれば話せなくなりますわ!!!」
「ひっ、こ、氷っ!?」
「黙れ」
あー、これは、簡単には止まりませんわ。
「エド、抑えて」
「……………………はい」
エドワードは、アレクを抑えるのが上手いので、師匠に一緒にいるように言われたのです。今の状態だと、ちょっとだけ大変かもしれませんが、頑張って下さいませ。
「アンネ様」
「わっ!びっくりしましたわ!資料終わりましたの?」
急に隣にナッティが来たのでびっくりしてしまいました。
「もう少しで終わります。この男に聞きたい事があるので来ました。お耳を貸して下さいませ」
ぼしょぼしょぼしょぼしょ。
「え?まぁ、得意ですけど。高位と言うならアレクの方が良いのではなくて?」
「駄目です。頭に血が上っていますし。あと資料通りなら、この領地の者たちは王家の者を嫌悪しております。殿下だと分かれば話さなくなる可能性があるので」
「分かりましたわ。やりましょう。あ、手助けはしてくださいね?」
「もちろんです。話しそうになれば交代しますわ」
ぼしょぼしょと作戦を話し、いざ男の前に立ちます。いつも以上に胸を張って背を反らし、威厳を出しまして、と。
「ねぇ、あなた。わたくし、メルクリウス公爵家のアンネリゼと申しますの。ご存知?メルクリウス家。アルドン侯爵家より位が上ですのよ」
「へ………旦那様より上、ですか」
さっきまでおどおどとしていた男が顔を上げて、わたくしを凝視しています。そして、視線が媚びるようなものに変わったのが分かりました。
──あら、ナッティの言う通りですわ。
権威に弱そうですわよ。
「そう。それでクラリスとも一番のお友達なのですわ。クラリスあなたの事、優秀だって言ってましたわ〜オホホホホ」
「え、お嬢が、オレのことをですか?」
─あ、気分が上がりましたわね。
いい調子ですわ!
「そうそう。醸造とか言う物の助けに一番なってくれると言ってましたわ〜。あ、クラリスね、さっき助け出されたから安心なさって〜。ちょっとわたくし、あなたを引き抜けないか話して来ますから、待ってて下さる?」
──気分が良くなったと見えたので、ウソですがこう言ってみましたわ。
「そんなバカな!じゃあ、なんでそこの兄ちゃんはオレを氷漬けにしようとしたんだ!」
「そんなの、ケガをさせたからに決まってるではありませんか」
「はぁ?んなわけあるか!無傷で運ぶと言っていたぞ!」
──あらあらー。この人、簡単にしゃべっちゃいましたわ。
それとも、わたくしの演技力?
「あらー、無傷でどこに運びますの?」
「それは聞いてな、い………っ!?」
急いで口を手で塞いでも、発した事は取り消せませんわよ。
「誰に頼まれたの。教えなさい」
「す、すまねぇ!オ、オレ脅されたんだ!妻と子供が連れ去られて、仕方がなかったんだ!」
「誰に!頼まれたの!」
「し、知らねえ!やり取りは一方的に映写の魔道具が送られてきただけだ!本当に知らねぇんだ!」
「そんな訳ないでしょう」
あら、ナッティ、変わってくれるみたい。では。わたくしは仁王立ちしていれば良いのね!
「さっきバーナードから追加情報を貰いました。あなた、妻子と言っても別居状態だったそうね?」
「そ、そんな事はない!」
「借金だらけなのを隠して結婚。それで逃げられたみたいですね。クラリス様にバレる訳にはいかなかった?」
「何言ってる!実際、妻と子は行方不明になってたんだぞ」
「それで、返して貰うのに何を売ったの」
「え……」
次々にナッティに当てられて、追い詰められているのが表情で丸わかりです。
「まぁ、大体想像はつきますけど。ベリルさんの情報を売ったんでしょう?まぁ、お金も貰ったんでしょうけどね」
「な、なんで、それ、」
「いつも一緒にいるベリルさんをどうにかすれば、あなたでも何とかなると思ったんでしょう?」
「………………」
──なんてこと!
まさかの事です。クラリス本人ではなく、護衛の方の情報を売っていたとは!
「若いクラリス様に雇われているのも不満だったのでしょうけど。
それより、こんな事を起こせば領地にはいられなくなるでしょう。再就職先も案内されたはずです。それはどこ?」
「…………………………」
「アンネリゼ様はね、魔学で一番の火魔法の使い手なの。あなたを消し炭にすることもできます。
ああ、アレクシス殿下に氷漬けにされる方が好みかしら?」
──あらー、ナッティ。
結局脅してるわ。
まあここは、掌に高温度の火球でも出して、援護しましょう。
カッッ!ギラギラギラギラギラーーー
うん、完璧ですわ〜!
「あ、ああああ!!!
南東だ!南東のハンザック!しばらくはロートルで雇ってやると言われたんだ!やめてくれ!!!」
あら。せっかくの完璧火球ですのに。
もう終わりですの。
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バーナードに連れられて、先程の男は出ていきました。
アレクも復活してきましたわ。
でも部屋の隅にいても良くてよ。
「ハンザックのロートルとか言っていたな。あそこは平和だったぞ。こことは敵対していないだろう」
実は、あなたの手紙を皆で読んだのですけど。知っている事は内緒にしておいてあげましょう。
「ええ。あのような小物。上手くいけばハンザックとアルドンの仲を違えられれば良し。出来なければそれで終わり、とでも思われていたのでしょう」
「エルライン嬢、あのように聞かずとも色々と分かっているのではないか?全部当たっていたではないか」
「いえ、確証を得るためには必要でした。そして、やはりベリルさんの情報が一番だと確信しました」
ナッティの言葉にわたくしとアレクは目を剥きました。
「いや、ベリルは意識不明だろう?」
「起こす方法がありますの!?」
「いえ、ベリルさんの起きている時の記憶ではなく、身体に残された情報です。
ベリルさんが目覚める見通しが5時間前後だそうです。ですから犯人は、5時間あれば逃げられる場所に拠点がある、もしくは住んでいる者と絞られます」
「でもそれは、クラリスの行方不明が、ベリルが目覚めるまで気が付かない前提で話していないか?」
「クラリス、元々研究所に出かけると半日帰って来なかったりしてたみたいだよー」
アレクとエドを連れてきて相当魔力を使ったのでしょう。ソファで休んでいたフィンが復活してきました。
「まあ、そうですの?」
「ホテルに皆で行った時、クラリスの自慢話をしてるおじいちゃんに無理矢理聞かされた」
「なるほど、先程の男。そういった情報も売っていたと言うことですわね」
それを聞いたナッティは、また長考しながら話し始めました。
「元々、わたくし達が一緒に植物園に来ることも想定していなかったはずです。あの男も、内側からわたくし達の護衛が現れてさぞや驚いたでしょう。
では、わたくしの考えを言います。長くなりますが、聞いて下さい」
ナッティは、カトリーナ様から預かった、アルドンを中心にした周辺地図をテーブルに広げました。
「今回の犯人は、カトリーナ様からの情報により、侯爵が魔学に在学していた時、在学が被っていたものは省きます。
そして、侯爵より上の世代も省きます。
侯爵はここの領地を継ぐ時に他領に脅しをかけたらしいです。侯爵の恐ろしさを知っている者は全て省きます。
なので、犯人は侯爵の恐ろしさを知らない年下の者か、ここ10年程度で爵位を継いだ新参者かと思われます。
そして、先ほどのベリルさんに残された情報から、魔学の魔道具を模写・改造出来る程の知識があり、ある程度の薬の知識も持ち合わせている者に絞れます。
もっと絞りますと、ベリルさんが目覚める予定の5時間までに追いつかれる事なくクラリスを運べると判断した者です。
それらを考慮した結果、2つの領地が浮上しました。
ひとつは、こちら。フォルカ領です。
アルドンから北西の位置、ここから4時間の位置です。
もう一つが、アルドンから東。
わたくし達が通ってきたダルク領。ここから5時間弱の位置です」
ナッティは凄いです。
短時間でここまで推理しています。
わたくしが驚いたままでいると、フィンとアレクが話し出しました。
「え、アルドン領都まで、そんなにかからなかったよね?」
「ボイド嬢、犯人は魔道列車には乗らない。そうだろう?エルライン嬢」
──あ、そうでしたわ!
アルドンには移動に便利なものがあるではありませんか!でも使うかもしれませんのに、何故アレクは断言しますの!
「殿下がおっしゃる通り、犯人は少なくともクラリス様を運ぶ際には、魔道列車は使わないでしょう。
カトリーナ様の資料によると、駅は防犯のために映写の魔道具で記録を撮っているそうです。大荷物は駅員が止めて魔道具で検査もしています。
荷物に隠れてお金を払わない者が、初期に横行したため徹底しているとのことです。
魔道車という、列車に乗るより遥かに見つかりにくい乗り物があるのです。
列車は、速くても見つかる危険が高いです。
ですので、こちらの移動時間は小型魔道車で移動したと仮定した時間です」
──なるほど。
時間も迫っていますし、目で続きを、と訴えます。
「この2つの領地の情報を伝えます。
このフォルカ領の第3子が、カトリーナ様に横恋慕していています。未だにアルドン領に現れ、その度に侯爵に追い出されています。
そういった者は他にもおりますが、こちらの者は何度もやって来られる魔道具の腕があり、母親が薬学を専攻していたらしいです。
続いてダルクですが、アルドン領に魔道列車が走るようになってから、アルドン領に人が流れるようになり困窮しております。
ダルク子爵自身が魔道具にも精通し、夫人は魔法薬師です。
せっかくの魔道具を、農民など自領の民を逃さないようにする事に使っていたようですが、大量に魔力が必要になります。結果、穴だらけになり隙をみてアルドンに逃げ出す者が多いようです。隣接領地ですから比べられ、侯爵を逆恨みしている、という事です」
顎に手を当て、考えていたアレクがナッティに質問を続けます。
「……本日、侯爵夫妻は会食だと言っていたな。それがこのどちらかの領か?」
「いえ、その2つどちらも含んでおります。本日は周辺領地が全て集まる大きなものだと聞いています」
「なるほどー、だから平和そうな領の名前を、さっきの奴に上げさせたんだね〜」
フィンの言う通りです。
犯人は他領地を陥れようとしたのでしょう。
でも、2つに絞れたのに、会食に来ている者では絞れないなんて。ナッティほどではありませんが、考えなくては!
「あ、2領地なのは分かったのですわ。二手に別れて探しませんこと?」
「いや、私達は一緒に行動した方が良い。何があるか分からないのだから戦力は分散しない方が良い」
──アレク!それは、そうなのですけど!
わたくしが内心不貞腐れている間、フィンは、ナッティの事をジッと見つめていたようです。
「ねえ、ナッティ。なんとなくこっちって思うの、実はあるんでしょう?決定打がないだけで」
「……はい。
わたくしは、ダルクが怪しいと思います。先日、眼鏡を取ったクラリスが領界まで迎えに来てくれていました。その時に姿を確認したのではないかと考えているのですが……確証がございません」
「……わかった。責は全て私が担う。
エルライン嬢。アルドン領都とダルク間で目星を着けている箇所は何処か、移動中に教えてくれ。皆、これ以上は時間が惜しい。出立するぞ!」
「お待ちになって、アレク!あなた本当にわかっていますの!?」
──今のこの人数の中では、これ以上は言えません!でも、密約の事を考え下さいませ!
もしも違っていたら──。
言葉以外は、目で訴えます。
「わかっている。エルライン嬢には話したのだろう?だからこそ信用している。それに、こうしている間にも時間が過ぎる。侯爵が指定してきた時間は後どれくらいだ?詳しくは知らないんだ」
「…………後2時間20分ですわ」
残り時間を聞いたアレクは、息を飲みました。
そして、次の瞬間には動き出しました。
「急ぐぞ!」
そうですわ。
友人のわたしが!ナッティを一番信用しなくてどうしますの!!!
パンッッッ!!!
一度両手で、両方の頬を叩きました。
師匠の気合いの入れ方ですわ!!!
「さぁ!!!行きますわよ!」
───クラリス、待っていて!
必ず、助けますわ!!!
この後も色々ありますが、出立で止めました。
補足しますと、
バーナードから情報がガンガン入って
そこから実行犯を見つけます。
実行犯は痕跡を大分残していたので
それを追う。
と言う感じです。




