17.味噌だれのお団子って美味しいんですよ
最後辺りからシリアス展開になっていきます
ホテルに1時間もいなかったので、時間がある。
でもおやつを食べるには早すぎる。だって、ホテルにはお昼食べた後、すぐに向かったからだ。
ホテルで遊んだあと、おやつにできるようにシェフに頼んであったのに。
「声を出しましたから、お茶は美味しいですけど、何します?午後は。提案はございまして?」
「街に下りれば殿下が嗅ぎつけますわ」
「さっき逃げてきたからね。ちょっと顔合わせたくないよね」
アンネ様、ナッティ、フィンが何か勝手な事言ってるけど、反論させてもらうよ!
苦しかったんだから!
腹だけ掴み持ち上げ運び!
「さっきのホテルに、色々と遊べる所があったのに。プールとか温泉とか。何で無理矢理逃げてきたの」
むー!とむくれて不快感を示す。
そういえば、これが効いた人いなかったかもしれないけど。一応!一応表すのだ。
「あらぁ……プール。それはダメですわ」
「それがあるから侯爵は、あのように強固に連れ帰れと仰ってたのですね」
「温泉は入りたいけど。湯上がりのクラリスも見て欲しくなかったんだね、侯爵は」
アンネ様、ナッティ、フィンがそれぞれ納得をした顔になって、呟やいている。
──え?連れ帰れって、王子様と話させたくない以外に理由あるの?
「何がダメなの?聞いてもいい?」
「あらぁ……またですの」
「はぁ、これは。侯爵が危機を覚えるのも分かりましてよ」
「侯爵はー、クラリスの水着姿を殿下に見せたくないんでしょ?すぐ分かりなよ〜」
へ!!!???
あ、プール、水着で入る!
水着!そうだ、水着じゃない!!!
王子様に、見せるの?水着姿を?
「ひにゃぁぁぁぉぁぁぁああああ!!!」
「遅いですわよ、クラリス」
「そういう反応も、殿下の前でして欲しくないとか思っていそうですわ、あの侯爵」
「面倒くさい親だよね〜」
──アンネ様、ナッティ、フィン!
そんな、しみじみ言わないでーー!!
トントントン
和気あいあいしていると、部屋の扉がノックされた。今回は侍従が皆付いてるので、わたしも侍従の1人に招くように頼む。
「入って貰って」
「畏まりました」
侍従に扉を開けてもらって、一礼して入ってきたのは、帰ってから何処かに呼び出されて、傍を離れていたベリルだった。
多分、さっきの件をお父様に報告にしろとか言われたんだろうと思ったけど、違った。
「クラリッサ様、お嬢様方、ご歓談中に失礼いたします。
クラリッサ様、醸造係のビーインから仕込んでいる物についてお話しがあるとの事です。急ぎではないとのことですが、早めにお願いしたいとの事です」
「え、何だろう」
──ま、まさか醤油か味噌、腐っちゃったとか!?春先には上手くいってたのに!
そう、どうしても日本食が食べたくて、醤油と味噌を試しに作っているのだ!
前世でも醸造って世界中で何かしらの物があるから、この世界でも通用するだろうと、お酒を作ってる工房から任意で実験を…もとい働いてくれる人を引き抜いたのだ。
味噌の作り方は、前世の小学生の食育か理科かな?の授業でやったのを何となく覚えていた。
でも、とにかく材料を揃えるのが大変だった。何とか揃えて、配合を変えて色々試行錯誤してるんだけど。
──うちの領地の人たち、臭い臭い言って近寄ってくれないんだよね。
わたしの考案したお菓子、食べてるくせにさ!今から美味しくなるって言ってるのに、ゴミを見る目で見るし。本当はベリルも実験室には行きなくないらしい。みんなひどい。
──あ、思いついた!
味噌と醤油の実験室、植物園の一部を借りてるんだから、今から皆で植物園に行くのはどうだろう。
わたしは、ついでに味噌と醤油の様子を見る。バッチリじゃない!?
「皆、今から植物園に行かない?珍しいものいっぱい生えてるよ!チョコレートの元とかも生えてるし」
「まぁ!それは良いですわね!」
「チョコレートの元ですか!興味ありますわ!」
「何度打ち付けても壊れない木とかあるかな!?」
「「「………………」」」
アンネ様、ナッティは素直に喜んでいたけど、フィンのナナメ上な期待に、フィン以外のわたしたちは顔を見合わせた。
「フィン、そんな木があるわけないでしょう」
「大人しく藁を縛って使いなさいな」
「そんな木があったら大発見だから、魔学の先生になれると思うよ」
「えーー、ないのかぁ。それは仕方ない。美味しいものを出してくれるなら行くよ!」
アンネ様、ナッティ、わたしでフィンにツッコミを入れると、やれやれと肩をすくませてから、植物園に皆で出かけて行く。
少し時間がかかるから、魔道車で出かけて行く。
魔道車6人乗りで、3台で別れて乗り込んだ。もしかしたら、この台数でも往復する必要もあるかも。侍従さんや護衛の人達も付いていくから、数を絞っても大人数。
やっぱりお嬢様って大変。
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植物園は大好評でした!
ここのメインは、前世の植物園と同じく巨大なドーム型の温室だ。
そこにバナナとかドラゴンフルーツとかが成っているから、テンション上がるよね!
ナッティが好きなチョコレートの原料のカカオの実を見せた時は最高潮だった。
研究施設ではあるから、いろいろと美味しそうに成ってても食べちゃダメだけど。
特別に、バナナケーキを侍従さんたちに手分けして持ってきて貰ってるから、それで許して欲しい。
ケーキと言っても三角のやつじゃなくて。
アレよ。前世のコンビニで売ってた、薄く切ったスポンジに生クリームとバナナそのまま挟んで入ってる方ね。
お菓子作るシェフからも、でっかいスポンジ切り分けて作るだけだから楽で良い、と評判です。
「じゃ、皆。ここでケーキをどうぞ召し上がれ!わたしはさっきの報告を受けてた、醸造研究の様子見てくるから、待っててね」
ドームの近くに、もう2つ建物があって。1つは研究所や職員が常駐してる建物。
もう1つの建物は、一般向けの食堂やお土産が売っている建物。
一般向けの方は大衆向けだから、皆は職員用の棟の応接室に案内した。わたしの研究所もこっちの棟にあるしね。
「あら、わたくし達が付いて行ってはいけませんの?気になるのですけど」
「そうですわ!チョコレートのようなものが出来る可能性があるのなら、行きたいですわ!」
「あ、わたしはケーキ食べてようかな〜」
アンネ様とナッティは分かるけど、フィン……先にケーキ出したから、話してるけど顔がケーキから離れてない。
「失礼します。お嬢様方。これからクラリッサ様が赴く所は、行かない方が宜しいかと思います」
──ベリル、一応さ、わたしもね。皆に臭い臭い嫌われるからさ。断ろうと思ってたよ?
なんでわたしの前に出てまで言うの。
ぶすー!と膨れてみたけど、やっぱりこれ、周りに効き目ないかも。皆してスルーだよ、スルー。
「これから向かう研究室は、"ミソ"や"ショウユ"と言う、とんでもなく臭い物を開発中の研究室なのです。わたくしも実は同行したくございませんが、他に行く侍従が皆無なので仕方なく同行しているのです」
──むかーーーっ!
ベリル、そんな事思ってたの!!
他の屋敷の皆も!
上手く行っても食べさせてやんないぞ!
味噌だれの団子とか美味しいんだぞ!
「え……におうのですか」
「あ。わたくし、バナナケーキ頂きますわ。いってらっしゃいませ、2人共」
「あ、それ余裕あるなら2個頂戴ー」
アンネ様とナッティに嫌がられ、フィンにいたっては、もう座ってケーキの追加をおねだりしている。
「むー、それじゃ、行ってきます。
研究の状況によるけど、30分以上かかりそうなら連絡するから、先に戻ってね」
「わかりましたわ。すぐ解消すれば良いですわね」
手を触り合って、応接室を離れた。
約一名、もうケーキ食べてた人いたけどね。
「それにしても、珍しいよね?何かあっても、わたしが来た時に、一気に話してくれる事が多いのに」
醸造は時間がかかるし、まだまだ研究段階。
わざわざ部屋の中に個室を作って、菌が他の樽に行かないようにしてるくらいだ。
だから、あれがダメ、これが良さそうって、経過と次回の課題は、たまにここに来て様子をみる時で充分だったのだけど。
でも、そういえば魔学入って4ヶ月来れてないんだから、魔道具に不具合でも出てるのかも。
「……………………」
「もう!話すのもイヤなら、待ってれば良かったじゃない!」
「わたくしはクラリッサ様の護衛です。そんな訳には参りません」
「もう既に鼻から息してないでしょ。鼻声だよ」
「…………………………」
「もー」
さっきの応接室からはちょっと遠いけど……臭いって研究を始めた段階で周囲からクレーム寄越されたので、わざわざ建物を増築したのだ。増築したと行っても同じ棟なので、5分もかからず着く。
もうすぐ研究室、と言うところで研究室の入り口に醸造係のビーインが立って待っていた。
「お嬢、お待ちしてました」
「ビーイン、入り口で待つほど重大な事があったの?」
「左様です。ささ、まずはいつものニオイ防止の変な服を着られるのでしょう?待ってますから、お早くお願いします」
「分かった。ベリルも着るでしょ」
研究室の入り口から入って、右に用意してある更衣室にわたしが先に入り、ベリルも後をイヤイヤながら着いてきた。
「お嬢、申し訳ねぇ」
「!!!!!!!!
クラリッサ様!!!逃げて!!!
…………っっっぐっ……!!!!」
「……えっ?」
後ろを振り向くと、ベリルがゆっくりと前向きに倒れる所だった。
「っっっっっ!?ベリル!!!!」
ガッッッッッッッ!!!!!
ベリルに駆け寄ろうとしたと思ったら、後頭部だろうか、衝撃が来た。
──後頭部だったかな、背中、かな……。
一気に白くなっていく視界と、聞こえなくなる周囲の音に、意識が無くなるのだ、という事は分かった。
ほとんど真っ白な視界の中で、
ベリルが、わたしに、
何かを、投げた、のだけは、
見えた、気が、した────。




