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15.戦いに赴くとはこういう事ですか

 ベリルの旦那さんの執事のバーナードが、帰ったお父様とお母様を、私室に引き止めてくれているらしいので、そちらに向かう事にする。


「大事な話をするのに、執務室じゃなくていいの?」

 

「執務室は暴れるのを想定していません。

 一月前、殿下からの手紙を読んだ旦那様が暴走し、室内を破壊。決裁関連の書類は終えた物から厳重な箱にしまうことにしていた為無事でしたが、今から手を付けるものや、やりかけのものは焼失。

 その他、執務机、椅子、ソファ、ランプ、カーテンなど室内の物がすべて全損。窓だけは外からの攻撃に備えて結界が張っておりますので免れましたが、反射されたため、余計に室内が破壊されました。

 復旧に先日、クラリッサ様が帰還する前日までかかり。以降、殿下からの手紙が届いた場合、執務室では見せないようにしていると、夫が申しておりました」


「……………………」


 あまりの大惨事な報告に、声も出なかった。

 え、執務室にゴ◯ラでも現れたの?


「夫曰く、奥様が隣に居れば私室でも大惨事にはならないだろう、とのことでした」


「でも、お母様が居ても執務室は避けたいんだね、バーナードは」


「執務室にて高貴な封筒を見ると、変な汗が止まらなくなるとは言っていました」


「あちゃ〜……トラウマになる程か」


「とらうま、とは?」


 無表情だけど、指を頬に当てて首を少し横に倒す、お嬢様スタイルである。


「えーと?心的外傷だっけかな。とにかく次もあったら怖いみたいな事だよ。今のバーナードみたいな症状」


「理解しましたわ」


 そんな話をしている内に、両親の私室の前辺りまで来た。角を曲がると、バーナードが扉の前に立っているので分かりやすい。


「バーナード、お疲れ様。お父様とお母様はお着替え終わったの?」


「お嬢様、お待ちしておりました。全てつつがなく終えております。他の侍従は既に下がらせましたので、突撃しましょう」


 バーナード、話の前半は普通なのに。

 最後は戦(いくさ)じゃない。


 ──まぁ、わたしも同じ気持ちなんだけどね。


 バーナードが扉を5回軽くノックする。

 うちでの家族が来た合図である。

 


「入れ」



 =============


 

「クラリス!遅くまで待っていなくても良かったのに!そんなにお父様に会いたかったのかー!」


 お父様が扉を開けてすぐに、両手を広げて飛び出して来たので、ささっと避ける。


「違います。話があって来ました。お母様とベリルとバーナードと一緒に聞いて下さい」


「えー、話?何だろ〜」


 ウキウキして、お母様が掛けるソファに戻って行くお父様。

 

 チラリとバーナードを見ると、絶望の顔をして、いつもの定位置についた。"私も一緒に聞くのか"と顔に書いてある。それをベリルが肘打ちをしているのが見えた。

 

 バーナード、お父様と一番長く一緒にいるでしょ!頑張ってよ!


「ベリル、先程の物。お父様に渡していいわ」


「畏まりました」


 王子様の手紙をお父様に差し出すベリル。

 さぁ、どんな反応するかな。


「へー………ベリル、これクラリスに見せたの?」


 わー、お父様の全身から、銀色と紫色が混じった魔力がゆらゆら煙みたいに出てる。

 

 ──あ、ここでベリルと喧嘩するって、逃げられたら、話終わっちゃう。

 

 なので、さっとベリルの前に立って阻止する


「お父様、どういう事?聞いたよ。わたし宛ての手紙、燃やしていたでしょう」


「……………は?」


 お父様の肩がビクッと揺れた。


 すぐに反応したのはお母様だった。

 

 お父様、お母様の怒り感知器だね!

 隣にいて直接お母様を見てないのに、怒りがどれくらいか分かるんだから、すごい性能の良さだよ。


「ジェシー。

 わたくし、あなたに言いましたわよね?殿下から、もし領地宛てに手紙が来たら、わたくしにも必ず見せて、と。返事も一緒に書いて、送る時も一緒にすると」


 ──えっ、そんな約束してたの!?

 一緒一緒って、お父様が喜ぶ言葉並べてるだけで、監視してるけど!


「い、い、い……いや、それは、領主への手紙だけの話だろう?」


「…………では、娘宛ての手紙は?クラリスが家に居るのです。クラリスに渡した結果、燃やしたのですか?」


「………………………………」


 お母様のど迫力質問にお父様は黙った。


 目が凄い勢いで上下左右している。

 何か考えてるのかな。

 こんなお父様を見たことがあるだろうか。

 いや、ない。


 すごい間があるけど、どう答えるんだろ。




「………………………………そうだ」


 ──話したと思ったら、肯定だと?


「は???

 わたし、その1通以外、知りませんけど!?封筒の柄さえ知らないけど!」


 何言ってんの!この親バカは!!!


「クラリスに渡したとしても、どうせ燃やしたんだから、後でも先でも一緒じゃないか!!!」


「はああああ!!??

 信っじられないっ!!娘宛ての手紙、燃やす前提でいるとか、どーいうつもり!?」


「だって、こんなの受け取ったらクラリス、こいつの事で頭いっぱいになって、お父様の事なんてどうでもよくなっちゃったりするじゃないか!!!

 そんなのヤダ!!!!!!」


「ヤダとか、子供かぁっ!!!

 お父様っっ、中身も読んだでしょ!?今、こんなのって言った!!!マジ信っじられない!個人情報なんだと思ってるの!人権侵害ー!!!」


「難しい言葉使っても駄目!!!こんなラブレター、クラリスが読んじゃ駄目だ!!禁止!燃やすのが一番!!!」


「ジェシー」


「はいっっっっ!!!」


「クラリス、ちょっと待っててね。わたくし、久しぶりに許せなくなってきたわ」


「ひゃ……ひゃい…………」


 ──ひえええええええっっっっ!!!

 

  絶  対  零  度 !!!


 こ、これは!

 前にお父様がやらかした時以上の怒りだ!


「カ、カティ。仕方が無かったんだ。クラリスが居なくなっちゃうと思って、仕方が無かったんだ」


「……へえ。

 燃やす前に中身を読んだのは何故?」


「………………えーと。

 虫がどんなこと書くのか気になって、」


「…………ふーん。

 バーナードに口止めしてたのは何故?」


「…………え、と。

 えー、内密に処理をと、思ってました」


「…………………………」


 お父様、墓穴しか掘ってないよ。


 あと、今のおどおど返答に

 わたしも問い詰めたい事が出来た。


「お父様、虫ってまさか殿下のこと?」


 びっっくぅ!!!!!!

 

 お父様は、お母様に顔も身体も向いたまんま、肩が跳ねた。

 マジですか。殿下を虫扱い。

 親バカめ。


「ジェシー」


「……ひゃ、ひゃい……」


「あなた魔学時代、わたくしの事を振り向かせようと、とんでもない事ばっかりしてたわ」


「……ひゃい、その通りです」


「殿下は、昔のジェシーよりも、だいぶ、かなり、信じられないくらい紳士的にクラリスに接してきていると思うわ」


「……………………」


「今ここで、ジェシーがしてきたこと、クラリスに全部話してもいいのかしら」


「それは駄目!!!」


「……はぁ。取り引きよ、ジェシー。

 主街道に設置した魔道具を全部止めること。

 今後クラリス宛ての手紙は一切の不正なくクラリスへ渡す事。

 それと、クラリスの気持ちが殿下に向いても向かなくても、見守ること。

 それらが守れないなら、わたくし達の17歳の頃の話を一切合切クラリスに話すわ。

 どうします?ジェシー」


「……………………………………」


「どうするの?」


「…………最後のは、守れる自身、ない」


「クラリス、わたくしがジェシーと初めて2人で会った時、」


「わーーーーーーー!!!!!!!

 すみません、守ります!約束します!」


「えー、お父様。わたし、お母様の話聞きたいんだけど。それに、手紙とか魔道具のこと、よく考えたら自分で何とか出来る気もするし!」


「駄目!駄目だ!駄目!!!

 何とか我慢するから聞いちゃ駄目!!」


「あ、そうだ。

 お父様。わたしね、お父様にもう1つ言っておかないといけない事、思い出したんだよね」


「え?何なに?虫は振る予定とかの話?」

 


「違うよ、お父様…………。

 わたしへの手紙、勝手に読むなんて……

 

 最っ低ー!!!!!

 このバカオヤジッ!!!


 だーーーいっ!嫌ーーーいっ!!!」



 バターーーン!!!!!!!


 わたしが大嫌いと言った次の瞬間、

 お父様は泡吹いて、後ろ向きに倒れた。

 


 あ、気絶。

 初めてみた。男だけど。



 


 

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