11.わたし、目立たないはずです
アンネリゼ様に詰め寄られて、王子様とのお茶会でのやりとりを説明させられたんだけど。
お嬢様3人の顔、もう乙女。期待に目がキラキラ、顔をちょっと赤らめ。あのフィンでさえも。
前世では自分のこんな体験談を話すなんて機会は全くのゼロ。ノー。キレイさっぱり無かったので、微妙な気持ちも大きいけど、恥ずかしい気持ちが勝った。
「まぁ……、アレクがそこまで素を出して、積極的になってるなんて……恋って偉大だわ」
──アンネリゼ様、恋って偉大なんですかね?
「普段は不機嫌そうにしてますのに、そんなに変わりますのね!これが本物の恋愛話!」
──ナッティ、偽物を見たことがあるのかい。
「へえ〜、わたし、そのダイフクが食べてみたいな!」
──うん、フィンの事は突っ込まないでおこう。さっきまで乙女してたと思ったら、食いついていたのは食べ物の方かいっ!
フィン以外、こういう話好きなんだね〜。と、他人事のような感想しかでてこない。
いい機会だから、皆に意見を聞こう。
「えと、この機会なので、皆様の意見を聞きたいのですけど……殿下に好かれないようにするには、どうしたら良いと思いますか?一緒に考えて欲しいのですけど……」
「「「ええええッ!!??」」」
──え、そんなに驚くことかな。
王子様の事なんとも思ってないの、皆知ってるんじゃ?
「ど、どうしてそんな事を言いますの!アレクに何か不満な所がございますの!?」
「王子殿下と将来を語り合えますのよ!?お付き合いが順調に進めば、いずれは女性の中で最高の地位を得る事になるのでは!?」
「そうだよ!殿下、強そうなのにもったいないよ!いつでも一緒に訓練し放題じゃない!」
「フィン、申し訳ないけど少しだけ控えて頂戴。今、強さは話してませんからね。さぁ、クラリスどうなのです?」
──あ、真面目に聞いてくれるんだ。
アンネリゼ様もナッティもフィンも、王子様を最推しの雰囲気だったのに。
「えーと、皆様知っての通り、わたくし目立ちたくないのです。このまま殿下に請われるままですと、ナッティの言う通り、恐縮ながら将来は王子妃です。それは、わたくしの願いと反しますわ」
「……クラリスは、アレクに何の感情もありませんの?」
「そうですわ。クラリス様は爵位や身分で人をみるお人ではないでしょう?王子である事を除いて、アレクシス様本人を見ていらっしゃいますか?」
そうアンネリゼ様とナッティに問われ、言葉に詰まった。
「え……本人、ですか」
「わたくしの目には、先日や先ほどの話をしている貴女を見る限りでは、アレクへの嫌悪感を感じませんでした」
「ええ。だからこそ、なぜ否定の話をなさるのかと不思議で……クラリス様、もう少し殿下と会話してみてはいかがかしら?」
──え、それをしたくないから相談してるんだけどな。
アンネリゼ様とナッティの意見に反論するように、目だけを真横に向けて黙ってしまったわたしをアンネリゼ様は見逃さなかった。
「……クラリス、顔に出てますわよ」
「ぴいっ!!??」
「どのみち、アレクは諦めないでしょうから、また誘いが来るでしょう。少しずつ、お互いをもう少し知ってはいかが?」
「わたくしも賛成です。わたくし達、まだ16歳ですわよ?婚姻なんて、まだまだ先の事なのですから。重くなりすぎず、まずはお友達になれば宜しいのですよ」
──アンネリゼ様、ナッティ、ちょっと待って!
わたし、目立ちたくないの!
王子様の何も知りたくないの!
お友達だとしても、凄い目立つじゃない!
「あ、あの、お友達と言っても異性と一緒にいては目立つのでは……」
アンネリゼ様とナッティは、わたしの意見に顔を見合わせて同時にため息をついた。
──え。
なんで、そんな困った様子なの。
なにか分かってないわたしに、アンネリゼ様はふぅ、と一息ついてから驚愕な事を言ってきた。
「クラリス。はっきり言いますわ。
貴女の残念令嬢姿、実はとても目立っていてよ」
── な ん だ と !?
アンネリゼ様の衝撃な言葉に、思わず下アゴをガクーンと落としきってしまう。
目も真ん丸で飛び出している感じがする。
「そ、そ、そん、そんな……か、鏡で見たらちゃんと、目立たない姿になっていて……」
「そうですわね。その可憐な姿を隠すには充分役に立っていると思いますわ。ただ、優秀者が集う魔学で、その中でも更に優秀な者が揃うクラスでは目立ち過ぎましたわ。あの姿で色々とそつなく全てこなすのですもの。アンネリゼ様のお友達になってしまってからは、特に注目の的でしたわね」
──ナッティ、今なんて?注目の的!?
「あ、発言してもいいかな?戦学部でも噂になっていたよ。何であんなに魔力量も多くて魔力操作も巧みなのに、操学部にいるのかって」
──フィン、どういうこと?魔法が巧み!?
「わ、わたくしが、う、うわさになっているのですか!?」
驚愕から戻ってこれないわたしに、アンネリゼ様がまた追い討ちを掛けてきた。
「貴女、魔道具作成の講義や学術では、わざと手を抜いていたでしょう。それなのに、魔法と体術の講義では実力を出してしまっていたのを、ご自分で気付いていますの?それで戦学部でも血の気の多い方々が、戦いの方が得意なのではと学生や先生までが引き抜こうとしていましたの。わたくしが止めてましたけど」
「えっっっ!?魔法も体術も手を抜いていましたけど!」
「「「……………………」」」
──まっ、まずい!皆、口あけてポカーンとしちゃった!!!
「貴女、本当に規格外ですのね」
「全部に手を抜いているのを、つい認めてしまいましたわね」
「一度本気で手合わせお願い出来ないかな」
──そんな馬鹿なぁっ!!
姿を目立なくするなら、それ以外も全部目立たない方が良いって、領地の皆に言われてたんだもん!
魔法と体術、周りに合わせるの難しかったのに、あれでも目立ってたなんて。
ショックで立ち直れない……。
いつの間にか領都の駅に着いていたけど、ショックが大きすぎて、気づいたら自室のソファにいて。いつ屋敷まで戻ってきたかも覚えていなかった。
ベリルによると、皆はお父様とお母様に挨拶した後、それぞれの客室で休んで貰ったそうだ。
旅の疲れもあるだろうからと、食事もそれぞれ個室で取れるようにしてくれたらしい。
──お屋敷の案内も自分でしようと思ってたのに、情けない……うっうっうっ。
明日には復活出来るように、早めに就寝したのである…………。




