9.故郷に帰ってきました
ゴトン、ゴトン、ゴトン…………
景色が前から後ろへ、どんどん流れて行くのを眺めるのは、やっぱり楽しい。
王子様とのお茶会から三日目の朝。
只今、アルドン領都に向けて列車に乗ってます。
音から分かる通り、そう、この国……というかアルドン領だけなんだけど、魔道列車が走っているのだ!
アルドン領だけなのは、通して欲しいと王都の貴族や各領地の人たちに面倒くさい事を言いまくられたらしく。
それでお父様がキレて、その件は終了したらしい。
その魔道列車を作ったのは、何とお母様!
お母様は魔道具作成の大天才らしく『結婚したら、領地で魔道具の実験を好きなだけして良い!』とかお父様に言われたとかなんとか。
プロポーズがそれなのかな?と思った事もあるけど、お父様から惚気を沢山、そりゃもう沢山聞かされて、どれがいつの何だって???
もう、子供にはワカリマセン。
チラっとでも質問しちゃうと、止まらなくなるから絶対に聞かないのだ。
アルドン領は、王都から見て南西の方向にあって、王都からいくつか領を経由する。
そして、領地の一番王都に近い町に駅があって、そこからは領都へ列車で楽ちん移動である。
この世界、貴族なんているし、前世の中世〜近代くらいの時代に近いのかな?と思いきや。
魔力や魔道具で電気の代わりみたいになってて、かなり快適なんだよね。
農作業とか、一部には馬車を使ってる人もいるけど、街で見るのは、なんとバスやタクシー。魔道車と呼ばれている。
ただ、ゴムタイヤはさすがに無いみたいで、デザインは車輪が大きめなだけに馬車っぽいんだけど。
だけど、この移動手段、領地またいでくれない。
王都は王都を出る直前までしかバス出てない。次の領地も、端から端までのバスしかない。
いや、バスじゃなくて『大型長距離移動魔道車』って言うんだけど、うーん、名前長いからバスに名前変えようよ?は、いちいち乗り換えが必要で、面倒この上ない。
国を覆う大結界と各領地の小結界のせいだ、とか聞いたことがあるけど、お母様の列車の設計図を見せて貰った時、なんとかなりそうな感じしたんだよね。
でも利権がうんぬんかんぬん、突っ込まれる予感もしたから、お口チャック。
お父様がキレたのも、その辺関係してそうだしね。
実は、小型魔道車と言う個人向けの魔道車もあって、魔道車に結界を張る実力がある者限定ではあるけど、小結界と小結界が隣接してる"領界"という所を通ることが可能らしい。
通り抜けたい領地には事前に申請が必須みたいだけど。
そんな便利な物もあるけど、魔学在学者は侍従も含め、所持も乗り入れも禁止されている。
理由は色々あるらしいけど、一番は学業の不正防止らしい。そりゃそうだ。外に出れるなら、課題の魔道具作りだって、誰かに頼み放題だもん。
何のための全寮制よ。侍従ですら魔法使えなくされてるのに。
まぁ、長期休暇中は免除されてるから、いいんだけどね。
そんな事を考えながら外を眺めていると、だんだんと風景が、畑や森などのほとんど緑色なものから、家などの建物がパラパラと急に増えだしてきた。
ここからは一気に都市部になっていく。
もうちょっとで領都に着きそうだ。
「ベリル、わたし、帰ってきたんだよ!
あ、すごい!あれ、お母様の研究所!ここから見ると、やっぱり大きい!!」
「クラリッサ様、落ち着いて下さい。まだ駅まで少しあるではないですか」
「ふふふ。嬉しいから、たまには良いじゃない!はしゃいでも!それに、速いもの。駅まであっという間だよ。降りる用意しよう!」
「そうですね。旦那様と奥様もお迎えにいらっしゃっると聞いてますし、始めましょう。クラリッサ様、さあ、そのダサ眼鏡を取ってくださいませ」
「えっ、用意って、わたし?それに、またダサ眼鏡って聞こえたんだけど!」
ベリルってば、わたしの前世言葉で気に入ったのあると、使いまくってるのだ。
だけど、ダサ眼鏡って言うのはダメだって、いっつも言ってるんだけど!!!
「丸メガネって、わたしが言ってるのに合わせてくれても良いじゃない!」
「んん?、車輪の音で聞き取れませんでした。さぁ、早く外して下さいませ、ダサ眼鏡」
「また言った!!!」
もー、と思いつつも外す。
「さぁ、髪を直しますので、そちらを向いていて下さいませ」
「はーい」
──ベリル、鼻歌出てるよ。やっぱりベリルも帰ってこれて嬉しいんじゃない。
【間もなく終点〜終点〜。アルドン領都メインターミナル〜。乗り換えのご案内です〜。領都北部方面行きは…………】
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「クラリスーーーッ!待っていたぞー!!!」
「「「お嬢様〜、お帰りなさい〜!」」」
お父様、お母様、屋敷のみんな。
あ、一部はいないけど、お屋敷空っぽは出来ないものね。
──というか、完全に列車止まってないのに、騒ぎ過ぎでしょ!
でも、大歓迎してくれて、とっても嬉しい。
涙出てきちゃった。
列車が止まって、扉が開くのを待って。
お父様とお母様の方へ飛び出した。
「お父様、お母様!!!ただいま!!!」
「クラリス〜〜!!おかえりぃぃぃ〜っ!!ん、少し大きくなったか?」
「残念ですが全く伸びてません!」
「まあ。残念ね、それは。クラリスお帰りなさい。元気なようで安心したわ」
お父様に抱き上げられ、お母様も、お父様ごと抱きしめてくれる。
屋敷の皆も、周りにひしめき合って歓迎してくれる。
「お嬢様〜、よく帰ってきて下さいました〜!」
「お嬢様がいない屋敷は、静かで静かで」
「お嬢様がいないと、寂しくて寂しくて」
「お嬢様がいないと旦那様、食欲がなくなってしまって」
「お嬢がいないとお館様が亡霊みたいになって」
「お嬢がいないと領主様がゾンビのようになって」
「オレ、こないだお館様が部屋の隅でうずくまってるの見たぞ」
「アタシは口から変なボヤーっとしてるのが出てるのみたね」
「私、この間あちらの丘で膝抱えて泣いているのを目撃しましたね」
「「「とにかく、大変だったんです〜!」」」
「へ、へー…、それは、ごめんなさい」
──とにかく、お父様がいろんなところに迷惑をかけまくってた事はわかった。
いや、主人に向かって、ゾンビて!
ピー、ピピピーッ!ピッピー!
「んん?」
何か笛の音が聞こえたので、抱きつくお父様の間から音がした方を見ると、ベリルと他2名で交通整理みたいな事をしてるではないか。
どこから出したのか、ベリルは小さい笛と光る棒を持って、人を誘導するように振っている。
──あ!!!そうだ、ここホーム!
列車にも、それなりに他の人も乗ってたじゃないか!
こんな大人数で、ひとりだけを大歓迎!
は、恥ずかしすぎる!!!
「お父様、お母様、移動しよう!他の人見てる!迷惑かけてる!!恥ずかしいーーー!!!」
「あらら、ようやく気づいたの。では皆、移動しましょう。ふふふ〜」
「僕は一刻も早くクラリスに会いたかったから、最も近いところで迎えたかったんだ!仕方ない!」
「だからホームで待ってたの!?」
「そうよ〜。お迎えだけの、こーんな大人数。狭くて高い所だもの。危なくて普通は入り口で待たせるわ〜。ふふふ」
「カティが作ったものだから、僕は安心してるけど」
「わたくしも、ジェシーが傍にいるから安心していますわ」
──娘、抱っこしてるのに。
通り越してイチャつくの、マジ止めて。
「お父様、下ろして。で、早く屋敷に帰ろう」
「えーーー、屋敷まで、このままで良いよ!」
「わたし挟んで、お母様とイチャつくだろうからイヤ」
「あ、嫉妬!?やだな〜、僕はどっちも大好きだよ!」
「ち・が・う!」
らちが明かないので、自分で魔法も使って突っぱねて下りる。
「ぐぅ、魔法も上手くなったなー。はっ!これが反抗期!!??」
「たぶん違う!!!」
──もう!このやりとり、久しぶりで嬉しく思うけど。
やっぱりお父様、面倒くさい!!!




