第九話 尊敬
翌朝、朝日が登るよりも早く、
自宅前に愛美が車で迎えにきた。
『ゆずる君、おはよう…』
「おはようございます!」
『乗って…』
弓弦は愛美の車に乗り込んだ…
「すみません、ありがとうございす。」
『大丈夫よ、今から市場に野菜を届けるから運んでくれる?』
「はい!もちろんです。」
こうして、弓弦の農家生活が始まった…
毎朝3時に迎えに来る愛美
農家の仕事は、昼過ぎ13時に終わり…
弓弦は、お昼を愛美の家でご馳走になり帰ってきていた…翌朝が早い為
夜は8時には寝ていた…
さっきはその生活を黙って見ていた…
農家生活もだいぶ慣れてきた頃
紀子おばさんとさっきと三人で晩御飯を食べていた…
『なぁ…弓弦は最近大丈夫か?』
と、さっきが聞いた。
「え?なんで…、いたって絶好調だよ。」
[そうね…、ゆずくんなんだか楽しそう…]
『もう何日目になるんだ?…農家生活…』
「まだ3日だよ…」
『明日は土曜日だろ?休みか…?』
「イヤ、休みは不定期なんだ…今はナスとピーマンの収穫がピークで出荷作業で忙しいんだ…、
同時に次の種まき、大根やカブの準備作業も平行するから忙しくて…しばらくは休めないんだよ…」
『私も手伝ってやろうか?少しくらいは役に立ってるかもしれないし…』
「さつきが…助かるけど……、でも、身分証明書とか無いだろ…」
『適当に履歴書書くよ…住民票までは確認しないだろ…流石に。』
[あら…さつきちゃん…世の中そんなに甘く無いのよ…働いて稼ぐと税金を払わなくちゃいけないし、雇う側も税金納めなきゃいけないんだよ…]
『最低!税金って、おかしなルールだな、結局…役人が贅沢する為に集めるんだろ?ムカつくな!』
[あら、さつきちゃんらしくなってきたわね…]
「さつきは別に、お金が欲しいわけじゃないんだろ?…一度、愛美さんに相談してみるよ。」
『お金も欲しい…けど、…でも収穫にも興味があるし…』
「結構大変なんだぞ…」
『大丈夫だ、』
〜土曜日の作業
学校が休みで遠藤 円も作業を手伝っていた。
「へー…まどか先輩、手慣れたもんですね…」
『円は、小さい頃からお父さんっ子だったから、いつも農作業を手伝ってたの…だから私なんかより農業に詳しいのよ…』
「そうなんですね…」
『あんな髪の毛してるから、みんな不良だって言うでしょ…』
「ははっ…、確かに学校では有名ですね、悪いっていうか…正義の味方っていうか…」
『正義の味方?…まどかが?…』
「はい!…めっちゃカッコイイです、僕も助けてもらった事がありまして…」
『そ、そうなの…』
「そうですよ…ホントカッコイイです。」
愛美は嬉しそうに笑った。
それでも作業の手は落ちることなく、ケースをいっぱいにした。
『まどかがなんで金髪にしてると思う?』
「へ?…なんか理由があるんですか?」
『憧れかな…まどかの…
まどかが中学2年の時なんだけどね、
ウチにイタリアから農業実習生が来たの…可愛らしい女の子でね、名前は〝マリアナ”綺麗なブロンドヘアで…憧れちゃって…
でも、最初は最悪の出会いだった、
円はお父さんを取られた見たいな感じで意識してしまって…、?
話しもしないし、感じ悪かったわ…
見てる、私がハラハラしてしまって…
それが、農業の世界って、泥にまみれてごっついおじさんが働いてるイメージあるでしょ…
まあ、実際、そんなおじさんが多いんだけどね…
だけど、マリアナは違った…綺麗なブロンドヘアに可愛い顔、スタイルも良いし完璧…
で、、空手の達人だったの…
ある日、ウチのスタッフ達でマリアナの歓迎会をやったの、バーベキューで盛り上がって…
調子に乗った主人が、木の板を割って見せたの…
スタッフも、チカラ自慢に競い合い…
失敗しても、成功しても盛り上がってた。
そしたら、マリアナが出てきて。
空手で板を撃ち抜いた。
ウチのスタッフの半分くらいの腕の太さしか無いのに、びっくりしちゃって…
それから、円の憧れになった…
空手を教えてもらったり、英語習ったりで、、
1年の実習期間のホームステイだった。
最後は兄弟みたいに仲がよくて、
マリアナの家の農場に大学生になったら、ホームステイに行く約束してた。
マリアナが帰国して、円は空手道場に行く様になって、髪色を変えた…
それが、円が金髪にした理由。』
「素敵ですね…」
愛美はニッコリ笑って、
『私、終わったわよ…』
と、ケースを持ち上げた。
「早っ!!」
と、急に作業に集中する弓弦…
愛美は『お先に〜』と、ケースを運んで行った…
作業を、終えて…
お昼を皆んなでとっている時、
円と久しぶりに話した。
『あんた…学校辞めたんだね、』
「はい、先日はありがとうございました。」
円はクスリと笑って
『そーゆー顔してたんだ…』
「え?…」
『ゆずるって呼んでいい?』
「あ、ハイ、大丈夫です…」
『こないだ学校で会った時は、お岩さんみたいな顔してたから…、良かったよ治った見たいで』
「たしかに…」
愛美は二人の会話を、黙って聞いていた…
食事が終わると、
『ゆずくん、送って行くわ…
今日はお父さんが、帰りに工場連れて来て欲しいっていうから、工場でも大丈夫?』
「もちろんです、社長にも会いたいし…」
『そう…』
トラックに乗り込んで、
愛美に〝さっき”の事を話してみた。
「愛美さん…あの、ウチに1人…居候してる女の子がいて、農作業を手伝わせてもいいですか?」




