第八話 仕事
弓弦はさっきの顔を黙って見つめていた…
確かに、綺麗な顔してるから他人が見たら惚れてしまうのもわかる…
『どうしたんだ…弓弦…』
「イヤ、なんでもないよ…」
『紀子おばさま、たくさん野菜もらったから…明日は一緒に、料理作りましょう』
[さつきちゃんは料理が好きたね〜。]
「さつきは今日は何してたの…?」
『私は、今日は紀子おばさまと街に行った…』
凄い笑顔で、弓弦を見ている。
「で…なんで、そんなにご機嫌なんだよ…」
『わかる?私が機嫌が良いって…、、紀子おばさま話しても良いかしら?…』
[良いんじゃない…]
さっきはにんまり笑って、
『それはな…今日街に紀子おばさまと出かけたた時に…、これ買ってもらったんだ!』
と、自分の履いていたスカートをめくって下着を見せた。』
弓弦は口にしていた、お茶を全て吐き出して、
咽込んだ…
あわてて、紀子が隣りのさっきを静止する。
[さつきちゃん!!何やってるの!]
『えっ?!、せっかく買ってもらったから見せたくて…』
[さつきちゃん…女性は男性に、下着を見せてはいけません…]
『そうか…、あまりにも嬉しかったから…つい…弓弦…忘れてくれ。』
「さつき…わざとやってるだろ…」
[さつきちゃん…お外で絶対やっちゃダメよ…]
『なんだよ…二人共…そんなムキになる事か?』
「なるだろ!!普通!…」
いつになく、怖い顔で紀子がさっきを睨むと、
さっきは…
『わかったよ…もう見せません…弓弦が見せてくれって言っても見せてやらないからな!』
「言わねーわ!!」
〜……
翌日…弓弦がバイト先の工場に出社すると…
案の定…先輩のマサが、
『ゆずる君…昨日、あの後、さつきさんは俺の事なんか言ってなかったか?…』
「いや…とくに…」
『さつきさんって…歳はいくつなんだ?…』
「僕と同じ歳だったと思います…」
『そうかそうか…ゆずる君は、さつきさんに興味はないんだな?』
「あるわけないじゃないですか…」
『彼氏とか…好きな人はいるのか?…』
「彼氏なんて、いるわけないじゃないですか…死神ですよ…」
『?!…し、死神?…』
「イヤ…違う。…死神みたいに怖いって事です。」
『えっ…、、そ…そんなに怖いのか?…さつきさんって…』
「マサさん…悪い事は言いません…さつきはやめた方が良いいです。」
『お前…まさか…やっぱり、さつきさんのことが好きなんじゃないのか?』
「そんなわけ…絶対ありません…」
『マサ!!ゆず!!仕事の時間だ!いつまでくっちゃべってるんだ!早く持ち場に行け!!』
社長の一喝で、二人は職場にもどった。
この日から、マサのさっき推しが弓弦にのしかかる事になるのだが、
この日の夕方に、もうひとつ事件が起こる。
〜…仕事終わり…
弓弦とマサがくだらない話しをしていると、
社長の三滝が、
『おーい、ゆず!!ちょっと来てくれ!』
「はい!」
そう言って、社長の部屋に行くと、
『ゆず…お前今から少し時間いいか?…』
「はい!大丈夫です…とくに用事もないので…」
『少し手伝ってもらっていいか?…1時間くらいで終わるから…』
「はい、構わないですよ…」
社長はトラックに乗って、弓弦を助手席に乗せて出発し、国道を南に走らせた。
『ゆず…仕事はどうだ?』
「楽しいです、」
『そうか…なら良かった…』
「あ、社長…」
『なんだ…』
「昨日は野菜、ありがとうございました。ホントに助かりました。今朝食べましたが美味しかったです。」
『いいんだ、いいんだ…俺の娘が農家やっててな…美味しいと言ったら喜ぶよ』
「そうなんですか…それであんな沢山…」
『じつはな…今から行くのが、娘の家なんだが…』
「そうなんですね…」
『後から、ちゃんと説明するんだが…人手不足でよ…ゆず…手伝ってやってくれねーか?』
「え…、社長の仕事は…」
『俺の所の仕事も、慣れてきた所だと思うが、実は娘の亭主が病気になってしまってよ…』
「そうなんですね…僕は…、社長に言われれば、なんでもやらせていただきますよ。」
三滝は少しホッとした表情を見せる
『ありがとうな…助かるよ…』
都会の街並みを抜けると、
少し緑の自然が増えてきた…
意外に都会からは近い山の麓に、1軒の家が見えた…
『ここだ…』
三滝はトラックを降りて、玄関に向かう。
弓弦もそのあとに続いて、ついていく。
『おーい!愛美!!いるか?』
玄関前で叫んだ、
『はーい!』と、奥からジーンズ姿の女性が出てきた。
ショートカットで、少し茶色の髪色で年齢的に50代くらいの女性だが、綺麗な人だった。
『お父さん…わざわざありがとうね、上がって!』
と、座敷に通された。
『あなたが、ゆずる君ね…びっくりしたでしょう…急なお願いでごめんね…』
「いえ…全然、僕は社長に言われれば、なんでもやらせていただきたいと思います。」
娘さんは、弓弦の前に座って、
『私は、遠藤 愛美、お父さんの娘です、先日…ウチの主人が作業中に倒れて入院したの…』
「はい、車の中で社長から伺いました。」
『そう…お父さんの工場の仕事を始めたばかりで、申し訳ないんですが、ウチの農場を手伝ってもらえないでしょうか?』
「それは、もちろんです…でも…」
三滝が
『なんだ、心配事か?』
弓弦は俯いて…
「あの…恥ずかしいんですが…僕は今…」
沈黙が広がる…
「あの…お金を持ってなくて…この場所まで来る手段が無いんですが…」
愛美らニッコリ笑って、
『それなら心配ないわ…朝、市場に行くので迎えに行くわ。… もちろん帰りも送って行く』
少しホッとして、弓弦は
「ご迷惑で無ければ…」
三滝がニッコリ笑って、
『言っておくが、雇用主は俺だからな。派遣と言うカタチで、明生くんが、退院して、また仕事ができるようになったら…返してもらうからな。』
弓弦は立ち上がって、
「宜しくお願いします。」
と、頭を下げた。
『ゆずる君、朝早いけど大丈夫?』
「大丈夫です!何時ですか?」
『朝3時に迎えに行くわ』
と、愛美が微笑んだ。
無事に、仕事の話しがまとまって、
三滝が、家まで送ってくよ…と、立ち上がると
愛美が、
『お父さん、私が送ってくわ、明日の朝迎えに行くから、場所覚えなきゃ…』
『それもそうだな…じゃ、頼むよ愛美…』
「愛美さん…宜しくお願いします。」
『じゃあ、行こうか…』と、玄関に向かった時、
玄関が開いて、
金髪の女の子が、
『ただいま〜!』と、帰ってきた。
『アレ?おじいちゃん!』
これが、遠藤 円との再会だった。




