第五十一話 覚悟
ゆずるは海竜組に向かおうとしていた。
通りでタクシーを捕まえ、後部座席に乗り込む。
何度もスマートフォンが鳴り響く…
冨樫からの電話だ…
ゆずるはずっと無視していたが、
通話ボタンを押した。
「もしもし……」
『あっ……ゆずる君! 良かった……。今、どこにいる?』
「タクシーで、海竜組に向かってます」
『今、僕も向かっているから……。着くまで待っていてくれ』
電話の向こうから、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
冨樫も急いで向かっている…
それは分かった。
『ゆずる君……ここは警察に任せてくれないか? 頼む、最速で向かうから……』
ゆずるは前を向いたまま、静かに答えた。
「冨樫さん……ありがとうございます。
でも、待てません!」
『ゆずる君!! 頼む! 待ってくれ!
あと二十分…いや15分くらいで到着するから……』
「僕は、今……到着しました。行きます!」
ゆずるは電話を切った。
✕ ✕ ✕
『ゆずる君!! ……クソッ! 急げ!』
冨樫はパトカーのサイレンを鳴らし、蒲田にある海竜組へと急いだ。
ウーッ! ウーッ! ウーッ!
一方、タクシーを降りたゆずるは、
迷うことなく海竜組の門へと向かった。
入口には、数人の男が立っている、
ゆずるは、そのうちの一人に声をかけた。
「すみません。こちらに一ノ瀬剛って人はいますか?」
男は、ゆずるを睨みつけた。
『なんだ、テメーは?』
「死にたくなかったら、一ノ瀬剛のところまで案内しろ」
『なんだと、テメー! 誰に向かって口を聞いてんだ!』
男はゆずるの胸ぐらをつかみ、その体を持ち上げた。
『やめろ!』
男の背後から、スーツ姿の男が現れた。
『なんの用だ? お前が来るようなところじゃない』
「来たくて来たわけじゃない。一ノ瀬剛を探している……」
スーツ姿の男は、ゆずるをじっと見た。
『あんなクズに関わるな。あんた、カタギだろ』
「カタギに手を出したのは、一ノ瀬だろ……」
スーツ姿の男は、少し笑った。
『確かに……。中にいるよ』
そう言うと、男はゆずるを案内し始めた。
『あんちゃんよ。中には五人から十人くらいは、チンピラがいるぞ。ただで済むと思ってんのか?』
「思ってないよ……。もう覚悟は決まってる」
男はゆずるの顔を見て笑った。
『面白いな……。俺も一ノ瀬のガキは気に入らねぇんだ。これ、貸してやるよ』
男は、ゆずるに拳銃を差し出した。
ゆずるは一瞬驚いたが、その拳銃を受け取った。
そして、案内された扉の前に立った、
不思議と迷いはなかった…
ゆずるは拳銃を握りしめ、ゆっくりと扉に手をかけた。




