第五話 相続
「紀子おばさん!おばあちゃんの通帳ありました!」
弓弦が勢いよく、紀子の家のチャイムを押した!
[なんだい…ゆずくん。騒がしいね…]と、玄関を開けると、傷だらけの弓弦が立っていた。
[わー!!びっくりした…どうしたんだい、その顔…]
紀子は、お化けでも見るように…眺めた…
「ちょっと転んでしまって…」
『どうした?弓弦…変な顔して…』
さっきは何も無く普通に、紀子の家の奥から現れた…
「さつき!全然最強じゃないじゃないか〜、めちゃくちゃ殴られたぞ!」
『死んで無いじゃん!大丈夫じゃん!』
少し、結弦はイヤな予感がした…
「それって…ひょっとして、どんなに殴られても死なないって事?」
さっきはコクリと頷いた。
「最悪じゃん!!」
弓弦はガックリとひざをついた…
[何物騒な話ししてんだい…あんた達は…]
『ですよね〜紀子おばさま、弓弦…すごいんだぞ…私包丁使える様になったんだ…』
「死神に包丁って…めちゃくちゃ怖いんですけど…」
[さつきちゃん、料理の才能あるわよ…いいお嫁さんになるわ、間違いなく…良かったわね、ゆずくん。]
「刺されても死なないなんて…恐怖でしか無いよ…」
『で…何しに慌ててたんだ?殴られちゃったよ〜慰めて〜か?』
「違うわ!…ばあちゃんの通帳を見つけたんだ…」
[そうかい…良かったね〜]
『で、いくら入ってたんだよ!美味いもん食えそうか?』
「それが…300万ちょっと…」
『おー!!私の服買ってくれ…ばあちゃんのゆるゆるパンツで生活してるんだぞ。』
「そうだね…とりあえずは何とかなりそうだよ…良かった〜。」
[わかったから…ゆずくん、先に手当てしましょ…コッチいらっしゃい…]
紀子は弓弦の手を引いて、部屋の椅子に座らせた…
「すみません…おばさん。」
消毒して、絆創膏を貼ってくれた…
左目はお岩さんのように腫れ上がり、目が充血していた…[酷いね〜…]
紀子は泣いていた…
『なんで紀子おばさまが泣くんだ?…』
[大切な人を傷付けられたら、そりぁ悔しいだろ…]
さっきは少し微笑んで
『おばさま…優しいんですね…』
弓弦は黙って前を向いていた…
しばらくすると、
弓弦は立ち上がって、
「おばさん、僕銀行に行って来ます」
『弓弦…私も行っていいか?…お前、お金盗み取りそうだし…』
「取らねーわ!!」
『では、紀子おばさま…私は弓弦の監視として、一緒に銀行に行ってきます。』
[行ってらっしゃい!]
玄関で靴を履く二人を見て、
[さつきちゃん…まさかその格好で行くつもりじゃないでしょうね…]
『ダメですか?…』
[ダメに決まってるでしょ…それ下着よ…]
「いいから待ってろよ…」
『一緒に行かれると、やましいことあるんですか!…』
[さつきちゃん…私の服貸して上げる…いらっしゃい…と、奥に入って行った。]
まったく…どこまで本気なのか…ヤベー奴だな…
『お待たせ〜』
ハぁ?!「えっ…さつき…。。…かわ*…」
[ゆずくん見てよ…さつきちゃん、めっちゃかわいいよ〜]
『弓弦!どうだ!似合うか?…』
「べつに…さぁ…行くぞ!…」
と、そっけなく玄関をでる…
『何だよ…あいつ…』
紀子はクスクス笑って…
[ホント…羨ましいわ。…行ってらっしゃい]
二人は銀行に向かった…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
[大崎様…お待たせ致しました…]
銀行で10分ほど待つと、係の銀行員が奥の接待席に案内してくれた…
[大崎様、大崎 雪様の御預金を出金されたいと言い事で間違いないでしょうか?]
「はい…ばあちゃんが先週急に亡くなってしまい、この通帳のお金を引き出したいんです」
[お祖母さまがお亡くなりになった、ということでしょうか?]
「はい。先週急に…」
[…そうですか…、お悔やみ申し上げます、…
申し訳ございません。お亡くなりになったことを確認した場合、こちらの口座は相続のお手続きが必要になりますので、通常の預金のお引き出しはできなくなってしまいます。」
[お客様はお祖母さまのお孫さまでしょうか?]
「ハイ、そうです。」
[他に相続人はいらっしゃらないでしょうか?]
「いません…」
[身分証明書はございますか?]
弓弦はマイナンバーカードを見せた。
銀行員は、弓弦のマイナンバーカードを見て…困った表情で、
「ハイ、親族は僕だけで…生活費が無くて…困ってるんです…」
「お困りのところ申し訳ございません。ただ、相続のお手続きをしていただく必要がございます。」
…***……
銀行からは、結局引き出す事は出来なかった…
さっきが、
『私のパンツ買えなさそうたな…』
「相続の続きって…どうすればいいんだよ…」
銀行員から渡された紙には、いくつもの必要書類が書かれていた。
戸籍謄本。
住民票。
印鑑証明書。
遺産分割協議書……。
「こんなの……高校生が分かるわけないだろ」
弓弦はため息をついた。
相続って……俺しかいないのに…
スマートフォンを取り出し、検索する。
『祖母が死亡 相続 未成年』
画面を眺めているうちに、弓弦の顔が曇っていく。
「……未成年後見人?」
知らない言葉ばかりだった。
「ばあちゃん……」
通帳を握りしめる。
「俺、どうすればいいんだよ……」
『私のパンツは?…今日は買えなさそうだな…』




