第四十三話 先手
加納瑞穂が死んだ翌日
夕方頃…
一ノ瀬剛は、海竜組のチンピラ5人を連れて
学校近くのファミレスから、遠藤円が通るのを待っていた。
『剛さん、ホントに遠藤円を拉致するんですか?』
一ノ瀬が
『もちろんだ、農園を放火したんだ…早い方が脅しに使える。それにアイツは空手を使う…拳銃を忘れるな』
…『来ました!男と一緒です。どうしますか?』
『関係ねーよ、お前ら5人いるんだぞ!何びびってんだ!』
『しかし…拳銃は1丁しか無いんですよ…』
『馬鹿か。遠藤円を狙え!他は怖くねぇ…』
『行くぞ、人気が無くなったら捕まえるぞ』
遠藤農園に向かう途中は、極端に人通りが少なくなる、そこが狙い目…
〜
『遠藤円!!…』一ノ瀬剛が呼び止めた。
長い金髪で、渋沢高校の制服…
振り返る。
『誰だ!お前は?!…』
『誰って失礼な奴だな…人間違いしたのはそっちだろ!』
振り返ったのは、
髪の毛を金髪に脱色したさっきだった。
隣りにいた男は、髪を切り黒く染めたまどかだった。
次の瞬間、円が拳銃を蹴り飛ばす。
同時に、一ノ瀬剛のこめかみに一撃。
一瞬で、気絶させた。
『テメー!!』
さっきに銃を向けていた男は、銃を拾おうと手を伸ばした所、さっきが顔を蹴った。
男は大してダメージはなく、さっきを睨んで
『ふざけやがって…』
と、さつきを睨んだ瞬間…
円のかかと落としが炸裂…
さつきは、痛そ〜と、言う顔でゆっくりと銃を拾い上げた。
そのまま、まどかにつかみかかろうとする男達、左からの回し蹴りは確実にアゴをえぐり、男達は地面に倒れていく…
殴りかかってくる男を、受け流し投げ飛ばし、喉元に正拳突き!
最後は逃げようとする2人を回し蹴りで1人を倒した時。
パーン!!…と、銃声が響いた
『止まれ!!』さつきが山に向かって発砲して叫んだ。
それを聞いた男は止まり、振り返った瞬間…
まどかの蹴りが、後頭部に決まった。
まどかとさっきの前に、6人の男が倒れた。
円が電話を掛けた。
『あ、冨樫さん…終わったよ!』
【ハイ、遠くから見てました。直ぐに行きます。】
〜 その夜…海竜組
『アニキ!!大変だ!剛さんが拉致された。』
『何?!誰に拉致されたんだ?』
『わかりません!遠藤円を拉致しようとして、声掛けた女が人違いで…その女と一緒にいた男が鬼見てーに強くて…』
『で、…全員やられたって事か?』
『ハイ!目が覚めたら、剛さんの姿が無くて…この手紙が…』
と、言い終わる前に、チンピラは殴られて吹っ飛んだ。
『ふざけてんのか!テメーら…何を勝手に動いてんだ…この手紙もふざけてんだろ…
〝一ノ瀬剛は預かった。返して欲しければ明日の朝、日の出時間に、勝浦灯台まで来い〟
だと…どうするんだ?』
『一ノ瀬議員に報告しますか?』
また、もうひとりのチンピラが殴られて吹っ飛んだ。
『テメーらは馬鹿か!!なんて言うんだ!ご子息を拉致されました。って言うのか?殺されるぞ!…』
『こうなったら、従うしかねーだろ…』
〜瑞穂が死んだ夜の、続き…
「一ノ瀬剛誘拐プロジェクトを、真剣に考えよう」
「だから、なんでそうなるんだよ!」
弓弦の叫び声が、部屋に響いた。
さっきが、冨樫を見て…
『私の計画を話しても良いですか?』
冨樫は嬉しそうに
『もちろんです。お願いします。』
さっきが微笑んで
『まず、明日の朝私とまどかちゃんは美容院に行きます。私は円ちゃんの髪型にしてもらいます。まどかちゃんはゆずるの髪型にしたら。』
「さつき!!何を言ってんだよ!…すみません…皆さん、さつきが馬鹿な事ばっかり言って…」
冨樫は真剣な顔で
『まずは身を隠すって事ですね…』
まどかが聞いた。
『どうゆう事ですか?』
『今、狙われているのは円さんです…だからさつきさんが、まどかさんになりすませば…一瞬でも意表を付ける…って事ですよね?』
さつきが微笑んで
『冨樫は賢いな…、次に仕掛けるのは誘拐だ…
それは、私とまどかで囮になる…たぶんまどかじゃないと、征圧出来ない。』
まどかが、ニッコリ笑った
『囮になって惹き寄せて…征圧する。一ノ瀬剛だけ拉致して、チンピラは放置…そいつらに手紙を託す…勝浦灯台まで来いとか…』
三滝が口を挟んだ
『勝浦灯台って…千葉のか?』
『時間稼ぎですぬね?』冨樫が嬉しそうに言った。
『冨樫は感が良いな…』
ゆずるが
『そんな…勝浦灯台までどうやって行くんだよ?』
さっきがゆずるを見て
『ゆずるはもう黙ってな…馬鹿が目立つから…』
「じゃあ、どうするんだよ…」
『行くわけないでしょ…向こうは嘘だと思っても行くしかないんだよ…それしか手掛かりが無いんだから、私達は行く必要はない。』
「いいのかよ、呼び出しといて無視なんて…」
『ゆずるが馬鹿だから、説明するけど…目的は何だ?今回の農園放火や瑞穂の死因に関与している証拠を、一ノ瀬剛から聞き出せば良い…それだけだ。』
『証言を映像に残してしまえば、全員検挙できる。』
「そんな計画、明日やらなきゃ行けないの?」
冨樫が、
『早い方が良いんじゃないかと…先手必勝です』
さっきが
『やっぱり、冨樫は賢いな…』




