第三十五話 魔札
『死神?…どういう事…』
『実は…信じてもらえないかもしれないけど…、』
逸子は少し間を開けて…話し出した。
『昨年、母親を亡くしたんですが…殺されたんです、この世のものでは無い何者かに…』
忠志は難しい顔をして、
『それが死神って事?…』
コクリと頷いて真剣な顔で
『そう…、信じてもらえないよね…正直私も信じられないです…でもホントの話しで…最後まで聞いてくれますか?』
『もちろんだよ…聞かせて、』
逸子は少し嬉しそうな顔をして
『昨年の春頃の出来事なんだけど…母が変な事を言いだしたの…〝死神の取り引き…〟で、私を助けるって…』
忠志の背筋が、一瞬凍りついた。
『死神の取り引きって…どんなモノなの?』
『私は小さな頃…病院で生活するほど、身体が弱くて…心臓の病気で…母も父も必死で看病してくれたのを今でも覚えています。
私が中学生になった頃から、病気が少しずつ良くなって…退院し…通院も減り…奇跡が起こったと…思った。
幸せな日々が何年も続いて、私達家族に何の問題も無かった…
それが…突然、、母が…死神の魂を引き継ぐ為に人間の魂が必要だと言い出したの…
私は意味が分からなかった…でも昨年、母親が死んだ時、その意味がわかった…
私の前に、死神が現れたの。』
忠志は…静かに聞いていた。
『見たの?…死神を…』
『見た…と言うか、昨日…会ったわ、…普通の人間の姿だった。彼がこう言ったの…〝君が生きていられるのは、死神の魂だからだ…私が人間として生きられるのは8年…その前に次はお前が新しい魂をさしだせ…』
聞けば…私が退院できたのは、父が命を差し出したそうだ、そして昨年は母が命を差し出した。…
『その事実を、私は昨日…はじめて知りました。』
忠志は…
『その話しがホントなら…また8年後に身代わりを立てなくてはいけない事になる…』
逸子は頷いた。
『馬鹿馬鹿しい話しでしょ…、』と、笑っていた。
忠志が急に真剣な顔をした。
『で、なんで昨日、刺される事になったの?
死神って、意味がわからないよ…』
逸子は微笑んで
『私が持っていた、魔札は元々母が持たせてくれたモノで、毎年同じ日に常世神社に買いに行き新しいモノを常に持ち歩いていました…』
『その魔札と、刺された事は…何か関係あるんですか?』
『この魔札は結界…死神が近づいて来られないと言う事らしい…、それがなぜ今回は、私の前に現れたのか?…それは、今朝気が付いたの。』
『昨日、私が買った魔札は…印刷でした…昨日はまったく気がつかなかった。…』
『死神が、私の背後に立ちこう言ったの…〝そんなまがいもので…死にたいのか?〟と、振り向いた所を刺されたんです。』
『それで…こう言ったんです。〝どうせお前は死なない…、親が学んだ防御策も中途半端に身につくとお前みたいな馬鹿が育つんだな…〟と…』
〜 常世神社に桜庭緑と紀子が訪れていた。
『緑ちゃんは、常世神社に何を祈願しに来たの?』
緑は
『恋愛成就…、なんてね、冗談です。』
紀子は優しく微笑んで
『あら、いいじゃない…恋愛成就。』
『あははは…そんなわけ無いですよ、
この札を探しに来たんですよ…』と、
スマホの画像を紀子に見せた。
『へー…御朱印とは違うみたいね…、
社務所で聞いてみましょ。』と、
歩きだした。
『紀子さん、社務所はあっちですよ…』
『緑ちゃん、まずは参拝から。用事は後からよ』
『あ…、はい!』
緑は頷いて、紀子の後を歩いた。




