第三十一話 友人
ゆずるはマサのお見舞いから帰宅して、紀子おばさんの家に急いだ。
「こ…こんばんは、桜庭さん、久しぶりだね。」
『ゆずるくん…久しぶり!』
なんでも、緑はあれから雫の事が気になり、
一人で調べていたらしい。
…あれから、警察にもいろいろ聞かれたそうだ。
弓弦の方も市場に刑事が来て、農園の指紋を採取した事で、雫とさつきが同一人物だと確認している。
今でも時々、櫻井刑事が様子を見に来るようになったが、未だに三滝社長の工場にいるさつきは、見つかっていない。
紀子の家のダイニングテーブルで、
いつもさつきが座っている席に今日は
桜庭緑が座っている。
『すみません、突然来てしまって…』
「そんな…僕達も、突然富士市まで行ったから…、でも、今日はどうしたの?何かあった?」
『実は、警察が最近よく学校に来るようになって…』
「学校に?…何を調べているの?」
『私も、いろいろ聞かれたんです。たぶん…
自宅の焼死体がご両親なら…、雫ちゃんが、疑われているんじゃないかと…』
「それはいつ頃、警察と話した印象?…」
『今週の月曜日です。…』
弓弦は、思った…
それなら、警察は雫が東京に居た事実を確認している…なのにどうして、学校に調査にくる必要があるんだ…
「桜庭さんは、どうして警察に聴取を受けたの?」
『それは…笹中先生が友達を聞かれて、名前を出したんだと思います。』
「他に何か言ってなかった?警察は…」
『あの…
私はお二人から、雫の事を聞いていたから、
やっぱりそうか…くらいにしか思わなかったけど…9月以降雫が東京で生きている事は、確認できました。…と、言ってました。
私が会いたいって言ったら、どこに居たかまではわかっているが、また行方不明になっていると…言われて、もし連絡があれば警察に知らせて欲しいと言われました。』
その時、紀子が弓弦の耳元で、
『さつきちゃんはどうしたんだい?』
ゆずるは紀子の耳元で
「今日は農園に泊まってもらいます。さっき愛美さんに事情は話してきました。」
紀子は頷いて、緑の話しに集中した。
『で…緑ちゃんはこちらに来て、雫ちゃんを探すの?』
『ハイ…そのつもりですが、他にも目的はあって…。』
「何かしら…目的って、」
『ハイ、いくつかあるんですが…
一つは、紀子さんと弓弦くんに会いたかった事。…
それから、雫が見た景色を見てみたかった事…
最後の一つは、今は言えません。』
紀子が優しく答える
『ありがとうね…この歳になって、会いに来てくれる友達がいるなんて…ホント幸せ!』
「桜庭さん…警察に僕達のことは…話しましたか?」
緑は首を横に振って
『笹中先生が、紀子さんやゆずる君の事は、話さない方がいいって…』
「そうなんだ…、ありがとうね…」
桜庭緑は首を横に振って
『でも…すみません!!私…親には、お二人の事を話してしまって、…名前は言ってないんですが、東京の大井町から雫を探しに来た事や、農園で野菜作りをしている事とか…話してしまったんです。
そしたら、親がその事を誰かに話したみたいで…』
「それは仕方ないよ…気にしなくていいよ。」
『緑ちゃん…晩御飯は?食べた?』
紀子が優しく問いかけると、
紀子は恥ずかしそうに、
『いえ…食べてないです。』
紀子は嬉しそうに…
『良かったら食べる?1人前余ってしまって…』
『えっ…いいんですか?嬉しいです。』
『今日は泊まっていく?』
紀子が尋ねると、緑は首を横に振って。
『今回は、大井町駅前のカプセルホテル取りました。』
『そう…明日は雫がいた農園に行ってみたくて…いいですか?』
「わかった…、明日農園に聞いてあげるよ。」
『ありがとうございます。』
『明日はゆずくんは仕事だろ、私がいろいろ案内してあげる。』
紀子が、弓弦に目で合図を送った。
…確かに、紀子さんと行動してもらった方が、さつきとバッタリ出くわす危険がなくなる。
「また明日、紀子さんの手料理一緒に食べよう。」
『ハイ!楽しみにしてます。』
そう言って、3人は食事の準備をした。
和やかに、食事をして笑っている。
弓弦は、いつもと少し違う雰囲気を感じていた。この楽しい時間は…なんだ…
食事を終えて紀子と弓弦は、緑の学生トークを楽しく聞いていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎて…
緑が不意に立ち上がった。
『私…そろそろ帰ります。』
弓弦が立ち上がって、
「送って行くよ…どこのホテル?」
緑は少し恥ずかしそうに…
『大井町駅前なんですけど…』
「あぁ…、いいよ、電車で一駅だ…送るよ。」
『緑ちゃん…私はココで、今日は楽しかったわ、また明日、いらっしゃい…一緒に雫ちゃん探しに行きましょ。』
『紀子さん!ありがとうございます。また明日!』
緑は元気に手を振って、駅に向かった。
「じゃあ、紀子おばさん、緑ちゃん送ってきます。」
駅に向かう弓弦と緑、
『ありがとう、』
「えっ…いいよ別に…」
緑は微笑んで
『違うよ…今「緑ちゃん」って呼んでくれた。』
弓弦は一瞬
「えっ…そう?。…ごめん、つい…」
『違うよ、嬉しかったから、ありがとうって言ったんだよ。』
弓弦は、微笑んだ。
「なら…良かった、」
『あと…一つわかった事があって…』
「え?…何?」
『こないだLINEで送った、お札なんだけど…
東京・神田の古社『常世神社』で、もらえるモノらしいの…』




