第三十話 大鎌
10月も終わりに差し掛かって来ると、
街はすっかりハロウィンムード…
街中にカボチャやドクロが飾られている…
『おい、ゆずる!あのドクロって死神なんだぞ!』
「だれも本物の死神は、若い女の子なんて…誰も信じないよね。」
『言っとくけど、死神はゆずるだからね。』
「わかってるよ…」
『死神は人を殺すのが役割じゃない…死を納得させる存在なんだ…あの大きな鎌はなんだ…今にも人を殺しそうな姿じゃないか。…』
「死神って、わかりやすいだろ…あのドクロと鎌が…イメージだよ、」
『ゆずる…死神のチカラを使ったのか…?』
さつきが静かに聞いた。
「あぁ…、自覚は無いんだけど…でも、僕を撃ったチンピラ自身が死んだ…」
『まさか本当に、その能力が発動することになるなんて…予想していなかったよ…』
「どういう事?…」
さつきは、少し呆れて
『やっぱりお前は馬鹿なんだな…よく考えな、普通の人生は平等に1回きりなんだよ。でもゆずるは8月末に自殺して、10月頭に銃殺された…』
「それは…わかってるよ」
『確かに、命掛けで私を守れとは言ったけど…たった2ヶ月で2度も死ぬなんて…普通じゃない。』
「じゃあ、まどかさんを見捨てれば良かったのかよ…」
『それも正解だ…死が訪れる時、様々な理由がある…多くの場合は…病気や事故が原因だろう。』
「さつき…僕は死んでも良いんだ!大切な人を守れるなら…」
『馬鹿だな…弓弦…、正義を振り翳すな。』
「別に正義を振り翳してないと思うけど…」
『誰かを守る為に他人を殺すことを、正義と言うんだ。でも…その正義は相手からすれば悪なんだよ…、』
「僕は殺すつもりは…」
弓弦は口を閉じた…
さつきが言っている事は理解できた…。
チンピラにも正義があり、
正義を振り翳して死んだ、その死は恨みに変わり…やがて復讐に向かう…死神のチカラは復讐を増長してしまう能力だ…、さつきが言っている事は…いちいち正しく自分に跳ね返ってくる。
『ゆずるが言った、ハロウィンイメージの大きな鎌を持った死神は、ゆずるそのものだな…』
「気をつけるよ…」
ゆずるは大きな鎌を持った死神の画像をスマホで見た…「確かに…僕だ…」
『ゆずる…まどかを死なせてたら、私はもっと怒ってたと思うから、…他人の正義を真に受けるな…、死神はアンタだから、私のものさしは結局あてにならない。』
「さつき…」
弓弦は、少し微笑んだ。
『明日はマサの所に、行くんだろ?』
「そうだよ、農園の仕事は昼までだから、終わったら工場行くよ、そしたら三滝社長が車で連れて行ってくれるらしい。」
『マサいつ退院するんだ?…』
「明日教えてくれるよ…たぶん…」
〜 翌日の午後…東邦大学病院
『さつきちゃん〜、よく来てくれたね…会いたかったよ。』
嬉しそうにマサが、起き上がった。
『大丈夫か?マサ…』
『全然大丈夫っす!俺不死身なんで。』
『不死身は弓弦だろう…』
「え?…それ言うんだ…」弓弦は呆れた…
『確かに…、弓弦はすげ〜よ…お嬢と一泊したんだろう、最強じゃね〜か…』
「マサさん…なんでそれを…」
『社長が嬉しそうに、教えてくれた…なんかあったらすぐに責任とらすってよ…』
「社長!!やめてくださいよ…変な噂が広まるじゃないですか…」
『良いじゃねーか…俺は、嘘言ってねーしよ…』
「そんな…最近、愛美さんもめちゃくちゃ、優しくて…なんか怖くて…」
『そりゃあよ…、監視カメラ映像見せられたらよ…誰だって惚れちまうよ、…ホント、好きでもねー女を助ける為に、身を挺して銃の前には飛び込めねーよ…、俺は一生弓弦に頭が上がらねー』
「やめてくださいよ…社長、」
三滝は笑って…
『愛美なんか、あの監視カメラ映像…ダビングたのんでいたぞ。刑事も困ってたくらいだ。』
ゆずるは苦笑いしていた。
『俺だって、さつきちゃんを守る為なら、銃口の前に立ちます!』
マサが言うと、さつきが、
『マサ…賢い男は、そもそも銃口を向けられないし、愛する女性に銃口を向けさせない!』
マサは天井を見上げて…
『さつきちゃんのおっしゃる通りです。』
さつきが、微笑んで
『マサは賢そうだ…』
4人は、マサを囲み笑っていた。
その時…弓弦の携帯が鳴った。
紀子おばさんからだった。
【ゆずくん!大変よ…緑ちゃんが来たの!…土日休みを利用して、遊びにきたのよ!】




