第二十六話 誘惑
警察からの電話で、さつきが有村雫である事が確実になった…、
指紋が一致した事で、警察も雫の生存が確認できた事になる。
弓弦達の予測を外れた事と言えば、有村逸子が生きていた事…
今、考えれば笹中先生も言っていた…
火事が8月31日に起きたとしたら、9月1日に母親から連絡があった事になる。
その時点で、家は焼失し…娘も行方不明になっていた事を把握していた事になる…
警察がどこまで把握しているのか…分からないけれど、こちらに捜査が回ったって事は、笹中先生か桜庭さんのどちらかと接触した事は間違いない…
〜渋沢高校…
弓弦達が、さつきの事で必死になっていた頃…
遠藤円もまた、問題に直面していた。
見た目が派手な円は、学校の先生ともウマが合わず、目の仇にされていた。
渋沢高校は進学校でもなく、偏差値が高いわけでもなく、底辺の公立高校だ。
だから柄の悪い、坂上 雄二みたいなわかりやすい不良も居る。
でも本当にタチが悪いのは、一ノ瀬 剛だった…。
見た目は優等生で、親が政治家でわかりやすく権力を振りかざし、勉強もスポーツもできる。
だから、坂上達不良グループも一ノ瀬には手を出さないし、絡まない。
めんどうなのは、先生達が一ノ瀬を認めており、問題を揉み消してしまう事。
当然、正義感の強い遠藤円が、交われば衝突するに決まっている。
小さな問題ではなかった…
加納 瑞穂という、円の同級生が学校に来なくなった。
ただの登校拒否かと思っていたが、どうやら違うらしい…
経緯はわからないが、加納瑞穂が夜の店で働いているのを見たと噂になっていた。
確証は無い…ただの噂だった…
それを、円は見逃せなかった…
事情を調べて、瑞穂に会いに行ったのだ。
〜〜蒲田駅から少し歩いた路地に小さなネオン街が有った…
30分ほど、待っただろうか…
加納瑞穂を見つけた。
円はすぐに、瑞穂に駆け寄って腕を掴んだ。
『瑞穂!』
瑞穂はビックリした表情で、
『円ちゃん?!…なんでこんな所に…』
『あんたこそ、何やってんのよ…こんな所で。』
瑞穂は少し周りを見て、円の腕を引っ張り、近くのゲームセンターに入った。
二人でプリクラの機械に入り…呼吸を整えた。
『円ちゃん…何かあった?』
『何かあったのは、瑞穂の方でしょ?』
『ひょっとして、円ちゃん…私を心配して来てくれたの?』
『当たり前でしょ…急に学校に来なくなったかと思ったら、何やってるんだよ…』
『ありがとう…円ちゃん。私ね…売られてしまったの…』
『どういうこと?意味がわからないよ…』
『わからない方が、いいよ…、関わらない方がいい。私は大丈夫だから…ありがとうね。』
瑞穂の目に、涙が滲んでいた。
『意味がわからないよ、説明してよ…』
『円ちゃんには関係ない!!』
瑞穂は、怒鳴るように叫んで走って行ってしまった。
〜〜それから数日後…
『ゆずる!ちょっといいか?』
マサだった。
「マサさん…どうしたんですか?」
最近、毎日さつきのボディーガードとして、工場から自宅まで、マサさんが送り迎えしてくれる。
マサはさつきが、工場で働くようになって、
毎日さつきについている。
『ゆずる!見てくれ、マサが帰りにアイス買ってくれたぞ!』
さつきもマサが、優しくしてくれるから、まんざらでも無い…死神なんだけどな〜…
でも、今はマサさんがついていてくれるから、安心できるのも間違いない…
そんなマサが、ゆずるを呼び止めて
『最近、お嬢とはどうなんだ?上手くいってるのか?』
「何言ってるんですか…まどかさんとは何も…」
『そうか…、実はよ、お嬢が帰りが最近遅くて、愛美さんから、調べてくれって言われて…数日、お嬢の下校から、尾行してみたんだ…』
「そんな事マサさんやってるんですか?」
『だから…愛美さんに命令されてんだよ!仕方ないだろ。…それがよ…』
「なんですか?」
『お嬢…蒲田でホステスやってんだよ。』
「えー!!」
慌てて、マサはゆずるの口を塞ぐ。
『馬鹿、馬鹿!うるさいよ…』
さつきが近寄ってきて
『マサ!どうしたんだ?楽しそうだな…私も混ぜてくれよ。』
『いえ…さつきさんには面白くない話しで…ゆずるが風俗行きたいなんて言うもんで…』
「そんな…」慌ててマサはゆずるの口を塞ぐ…
『風俗?…なんだそれ…楽しいのか?』
『それは、楽しくないからやめておけって話しで…、、』
『なんだ…楽しくないなら興味ないな…、私は紀子おばさまの所行ってるから…じゃあな!』
さつきは、家を出て行った。
「何言ってんですか、、マサさん…」
『風俗か?…』
「違いますよ…まどかさんの話ですよ…」
『お嬢の方が、やっぱり気になるよな?!』
「当たり前でしょう!…で、どうだったんですか?」
『わからない…キャバレーみたいな店に入って行くのを見ただけでよ…』
「で、…確認せずに、帰って来たんですか?」
『なんだよ…ゆずる…怒ってんのか?』
「怒ってないですけど…愛美さんには話したんですか?」
『言えるわけないだろ、そんな事話してみろ!どうなる事か…考えただけで恐ろしいわ。』
「じゃあどうするんですか?」




