第十八話 痕跡
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『有村さん、最近元気なさそうだけど大丈夫?』
『大丈夫ですよ、笹中先生…心配してくれるんですか?…』明るく返す雫。
『今日も…体育の授業を見学してたから…珍しいな、…と、思って。』
と、笹中が言った時…
雫のクビ筋に痣を見つけた…
『あら…有村さん、クビの痣…どうしたの?』
雫の顔が、一瞬曇ったように感じたが、
直ぐ笑顔になって、
『いや…これは、恥ずかしくて言えないんですけど…昨日、お風呂で滑ってしまって…桶の上に倒れてしまったんです…、、』
『痛そう〜ね〜…、ヤダ〜…』
『ホントに痛くて…しばらく動けなかったんですよ〜…誰にも言わないで下さいね。』
笹中は微笑んで、
『大丈夫なの?病院には行ったの?…』
『行くわけないじゃないですか…、恥ずかしいですよ…』
『何言ってるの…そういう怪我でも、油断してはダメよ…ちゃんと親御さんにも相談しなきゃ…』
『はーい!』
雫は笑って、帰って行った…
〜〜・・笹中先生は、顔を上げて
『そのあと…学校を休むようになったんです…そのまま、夏休みだったので…』
紀子とゆずるは顔を見合わせて…
ゆっくり話し始めた。
「僕が始め会った時…彼女は自殺しようとしていました。…」
『えっ!?…、そんな…、有村さんが…?』
「思い当たる事は、ありませんか?…友達関係や家庭の事情とか…」
笹中先生は、首を横に振って…
『正直…まったく思い当たらなくて…びっくりしています。いつも明るくて、真面目…冷静で落ち着いた雰囲気…クラスの中では、目立たない方だったかも知れない…でも、彼女をいじめているような話しは聞いた事ないんです…ホントに…。』
「仲の良かった友達は、いましたか?」
『そうね…、誰とでも仲良くしてたと思うけど…
桜庭 緑さんかしら…
よく、一緒にいるのを見かけたから…』
「そうですか…その生徒さんと、話しできたりできますか?」
『後で時間があれば、声かけてみますね…』
笹中は、信じられない…という表情で…
『あの…、その写真はいつ撮ったものですか?…』
「あー、これは先週の日曜日に撮影したものです。」
『そうですか…なんだか、随分大人びて見えたもので…、居なくなったのはいつですか?』
「3日ほど前になります。」ゆずるは、
打ち合わせ通りに答える…
『夏休みだったでしょ…新学期が始まって、一度有村さんのお母さんから連絡をいただいたんです。』
「その時、お母さんはなんて?…」
『その時は…、〝雫が学校に行きたくないと言っているので、しばらく様子をを見て、また連絡させてください…。〟と、言われたんです。』
「そうですか…」
その時紀子が、
【先生…雫さんの事心配じゃないんですか?…私は心配で、心配で仕方ないんです。コチラに来たのも、雫さんに会いたいから…】
『心配してます…私だって…』
【雫さんの御自宅には、行かれましたか?】
『いえ…、行っていません…』
【じゃあ、私達が行きますから、住所を教えていただけますか?】
『それはちょっと…最近は個人情報の取り扱いには厳しいくて…』
【じゃあ、今から一緒に行ってみませんか?】
『今からですか…無理ですよ、授業もありますし…。』
【先生は、生徒より授業が大切なんですか?私は雫さんが、一番心配です。首元の痣の話しも…どうして、後回しにするんですか…】
『それは…、、』
笹中先生は、スマホを見ながら何かを考えているようだった。
【ふ〜、…先生、無理されなくて大丈夫ですよ、公務員には難しい判断だと…わかっていますから…キツイ言い方になってしまい、申し訳ありませんでした。】
『…。』笹中先生は下を向いている。…
ゆずるが立ち上がり
「紀子おばさん、行きましょう。名前がわかっただけ良かったですよ…、あとは僕達でなんとかしましょう…」
笹中は立ち上がって、
『有村さんは、私の生徒です。心配に決まってます、一緒に行きますから…少し待ってて下さい。』
そう言って、笹中は部屋を出て行った。
ゆずるは、紀子を見て…
「紀子おばさん…わざとあんな言い方して…」
紀子は微笑んで
【わかった?…私だって、あんな言い方したくないけど…さつきちゃんの為だから…、頑張っちゃったわ…】
「紀子おばさんに言われたら…説得力ありますよ…」
【有村 雫…、さつきちゃんの本名なのよね?…
間違いではないよね?】
「間違いないでしょうね…」
ゆずると紀子が、そんな話しをしていると…
笹中が戻ってきた。
『お待たせしました。行きましょう!』
「直ぐですか?…あの…笹中先生、有村雫さん…に着いて、私達もまだ戸惑っていて、…」
【私達は、出雲 さつき … さつきちゃんって呼んでました、着ていた制服からこの学校に辿り着いたので、間違いないと…思いますが…】
『出雲 さつき…ですか…?…有村さんが…、そうですよね…、すみません、私ったら…慌ててしまって…』
「さっきお話しに出た、桜庭さんでしたっけ?お話し聞けたりしないですかね?…」
【さつきちゃん…、いや、雫ちゃんの昔の写真とか、友達関係とか…知りたいんです…】
『桜庭さん…ですか…、わかりました。
お約束はできませんが、声を掛けてみます…』
そう言って、また部屋を出て行った…
そして、今度は思いのほか早く戻ってきた。
笹中の後ろに、おかっぱ髪の少女が立っている、メガネをかけていて、いかにも大人しそうな雰囲気だ。
部屋に入って、軽く頭を下げた。
『桜庭 緑です…』
また次回もよろしくお願いいたします。




