第十七話 哀愁
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朝ゆずるが起きると、朝日はもう昇っていた…
それでも、まだ7時だった。
さっきはもう、愛美さんと農作業してる頃だな、
「久しぶりだな…明るくて目覚めるなんて…」
ゆずるは着替えて、紀子の家に向かった。
「紀子おばさん、おはようございます!」
【おはよう!ゆずくん。】
紀子はご機嫌だった。
【さあ、朝食をたべたら早速出発よ!…日帰りなんだから、急がなきゃ…】
「東海道本線で、富士駅まで行って、乗り換えですよね…」
【もう旅行なんて、旦那が死んでから行った事無かったから…なんかドキドキしちゃって…ゆずくんありがとね…】
「そんな…僕の方こそ、ですよ…旅費を全て甘えてしまって…、ちゃんと給料が入ったら返しますから…」
【あら…イヤだよ、そんな他人行儀な…】
ゆずるは、他人ですよ。と、言いかけてやめた…
「結構、距離あるんですね…調べてみると…」
【さつきちゃんには、今日は遅くなるから、お弁当を買って来るって、朝、出かけに伝えたから…】
「ありがとうございます、何から何まで…」
【いいのよ〜、私の方が楽しくなってしまって…なんだか興奮してるわ】と、ニコニコ笑っている…
ゆずるは、紀子の顔を見て…良かった、と思う反面、おばあちゃんも…きっと一緒に旅行なんかしたら喜んだろうな…と、自分の過去を反省していた…
2人は電車で、藤沢駅に到着した。
【あら、藤沢駅って江ノ電の始発駅なのよね〜、ゆずくんは江ノ電に乗った事ある?】
「いや、無いです…」
【いいわよ〜、電車は狭いんだけどね…海沿いを走るの…綺麗なのよ…】
ゆずるは、楽しそうに話す紀子を見て、嬉しかった、子供のようにはしゃぐ姿はどこか、死んだ祖母の姿を重ねていた…
藤沢から東海道本線に乗り込み、車窓から見える景色を楽しんでいた。
【ゆずくん、富士駅で身延線に乗り換える時に、お昼を食べましょ!何がいいかしら〜】
「いいですね…食べましょう。…」
少し早い、お昼をたべて…
2人は身延線に乗って、富士宮駅まで向かった。
【はい、これ…身延まんじゅう、さっき買ったの、食べて…】
「あっ…ありがとございます。」
紀子はとても楽しそうだった。
紀子おばさんの、ご主人は…もう15年くらい前に亡くなった、まだ幼なかった僕も…僅かだが、記憶がある…とっても優しくて、いつも声を掛けてくれた、病気で入院してすぐに亡くなった…
僕が小学校に通う頃には、紀子おばさんが近くの蕎麦屋で働いていて、よく家族で食べに行ったのを覚えている。
紀子おばさんは、一人で暮らしているのが、当たり前で、僕が物心着いた頃には…明るく元気な紀子おばさんだった、
それは今も変わらない…
でも、今隣りに座ってはしゃぐおばさんは、はじめて見る姿だった…
楽しそうなのに…どこか哀愁が漂っている感じ…
今まで、気がつかなかったな…
紀子おばさんも…寂しいんだ…なのに、明るく元気に振る舞ったのは、周りに心配かけないように…
僕達他人は、その表面を見て〝明るく〟〝元気〟だと思っていた…
今日一緒に過ごす内に見えた、紀子おばさんの哀愁…それは、決して他人には見えないものなのかもしれない。
…さつきが、僕に馬鹿だといつも言うけど…ホントに自分しか見えてなかった、僕だけが寂しいんじゃない…
身延線を走る電車の車窓から見える景色を見ながら、ゆずるの目に涙が滲んでいた。
〜〜・・身延線
【ゆずくん、次が富士宮駅ね…】
「はい、」っと、頷いた。
富士宮駅から、タクシーで富士北高校に向かった、東京の街と違い、建物も少なく低層ビルがほとんどで、空が広い。
タクシーの車内で、ゆずるは緊張していた。
運転手と紀子おばさんは、楽しそうに話している…
『お疲れ様でした…こちらになります。』
タクシーの運転手が、言うと学校の前で停車した。
「ありがとうございます。」
お礼を言って、二人はタクシーを降りた…
富士北高等学校を前に立ち
【さあ、行きましょう…、こうゆー時は年の功が役に立つのよ。】
「はは…頼もしいです、紀子おばさん…」
紀子は校内に入っても、堂々と歩いた。
生徒たちは怪しむそぶりも無く、お客様だと思って、挨拶してくれた。
紀子は近くを歩く生徒に、
【職員室はどちらかしら?…】
と、聞くと…
『ご案内いたします。』と、生徒が連れて行ってくれた。
ゆずるは、ずいぶん自分の通った学校とは違って行儀の良い学校だな〜、と思っていた。
「渋沢高校なら、とっくに不良に絡まれてるよ…」
と、少し笑ってしまった。
【ゆずくん…、さつきちゃんは家出して、ウチで保護してる…って事で大丈夫?】
「いいと、思いますけど…どうしてですか?」
【それだと、保護者がいた場合、さつきちゃんを連れ戻されてしまうけど…】
「それはまずいです!!…」
【でもね…世間では未成年の家出にしかならないから…】
…そうか…さつきの身体は誰かのモノで、ご両親がいたら、探してる…
でも…中身は死神だ…たぶん全くの別人になっているんだと思う…
…どうする…?!?
ゆずるは、少し考えて…
「紀子おばさん、さつきを保護したけど居なくなったから、ちゃんと帰ったか心配になって、着ていた制服を調べてこちらに辿り着いた…と、言うのはどうですか?」
紀子は微笑んで…
【それなら、連れ戻されることはなさそうね…】
「ハイ!そうしましょう。」
紀子とゆずるは、
職員室近くの、応接室に案内された。
『お待たせいたしました。こちらでお待ち下さい。』職員の方が、
『今日はどういったご要件でしょうか?』
と、言われ。
紀子が、打ち合わせ通りに説明すると、
職員は、誰かを呼びに出て行ってしまった。
【なんだか…心当たりがありそうな雰囲気だったわね。…】
「ハイ…,そんな感じでしたね…」
しばらくして、一人の女性教員が部屋に入ってきた…
『お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。お話しお伺いさせていただきます。』
女性教員は二人の前に立ち頭を下げた。
『私は2年A組で担任をしています、笹中 ひろみ(ささなか ひろみ)と、もうします。
紀子が立ち上がり
【私は伊勢 紀子と申します。】
ゆずるが立ち上がると、紀子が
【こちらは孫のゆずるです…今日、私の足腰が悪いものだから、連れて来てもらいました。】
先生はぺこりと会釈して、
『わざわざ、ありがとうございました…今日はどちらからお越しくださいましたか?』
【東京からです、】
『ありがとうございます。おそらくウチの生徒かと思うのですが、お写真とかお持ちですか?』
「ハイ…」と、ゆずるが農場で撮った写真を見せた。
笹中先生は、ゆずるのスマホの写真を見つめて、しばらく動かなかった…
『ウチの生徒で、間違いありません…
有村 雫です』
また次回もよろしくお願いいたします。




