第十一話 悲痛
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「さつき、愛美さん農作業手伝って欲しいって!明日の朝、一緒に行こう。」
『へ〜、うれしいな…初めてだよ…人の役に立つなんて…』
[あら…じゃあ明日は久しぶりに私は一人ね…]
『でも、昼過ぎには帰ってくるんだから…そんなに寂しくもないでしょ、紀子おばさま。』
[そうよね…]
と、微笑んだ。
〜〜………翌朝、
『おはよう〜、。はじめまして、さつきさん…』
愛美が運転席から挨拶した。
『よろしくお願いします、出雲 殺気です。』
さっきは頭を下げて車に乗った。
『さつきちゃん、今日はよろしくね…』
愛美は優しく言った。
「宜しくお願いします。」と、ゆずるが答えると、
さっきは、
軽く頭を下げた。
『さつきちゃん、そのジャージは渋沢高校のジャージね。』
『ハイ、ゆずるに借りました。』
『似合ってるわよ、娘の円を見てる見たい、背格好が似てるわ』
「まどかさんと似てますか?」
『そうね…』と、愛美は少し微笑んでいた…
その後は、いつものように市場に野菜を搬入した。さっきが一緒に運んでくれたので、いつもよりも早く終わった。
『さつきちゃん、以外にチカラあるのね…』
『任せてください!』
「筋肉痛になるぞ…」と、ゆずるが笑った。
愛美が
『さつきちゃん、何かスポーツでもしてたの?』
『……?スポーツは、…してないですね…』
少しぎこちない回答に、愛美も
何か聞いてはいけない事を聞いたかと、
少し話題を変えた。
『今日はね、サツマイモの収穫を手伝ってもらうからね…。』
『楽しみです!』
『サツマイモは重量があるから、ちょっと大変よ…と、言っても今日は助っ人がいるから、機械で掘り起こしてくれるから、だいぶ楽よ。』
と、嬉しそうに話した。
明生さんの事だと、すぐにわかったけど、
弓弦は知らない振りをした。
農場に付いて、道具を出してサツマイモの畑にケースを並べた…
朝早くは、枝豆の収穫を手伝って、
日が昇り始めた頃、
明生さんが、やってきた。
明生さんは、三滝社長が病院まで迎えに行ったようで、一緒にやってきた。
「おはようございます!」
ゆずるが挨拶をすると、
社長が
『ゆずる!おはよう、今日はたのむな…』
と、ゆずるの肩を叩いた。
『君がゆずる君か…愛美から聞いてるよ、いつもありがとうな。』
そう言って、握手をした。
チカラ強くて、病気を抱えているとは思えないほど、若々しく見えた。
『君がさつきちゃん…今日はよろしくね』
と、さっきにも声を掛けた。
さっきは深く頭を下げて、
『さあ、何からやればいいですか?』と、
声を掛けた。
明生は差し出しかけた手を引っ込めて、
ジャガイモ畑の方を指差した。
『今日はじゃがいもだ!…行こうか。』
そう言って畑に向かった。
弓弦は少し小声でさつきに、
「なんだよ、どうしたの…」と聞くとさつきが、
『ゆずる…あの人もう少しで命がおわる…握手を求められたら、私…魂を削ってしまいそうで…』
「さつきはそんな能力あるのかよ…」
『無いわ…無いけど、死神なんて嫌だよね…例え人間の姿でも…寿命がわずかなら…なおさら』
「…さつき…それは僕の魂も、明生さんに影響するのかな…?」
『それはわからない…多分私達みたいに死神が魂を交換するなんて…聞いた事ないから…、でも、人から避けられるのと、慕われるのでは、どちらが嬉しいかは、あんたならわかるでしょ』
「そうだね…良くわかるよ!」
「明生さん!手伝いますよ…何したらいいですか?…」
弓弦が、明生に歩み寄るのを見て、
愛美が微笑む、
『さつきちゃんね、私 遠藤 円です、今日はありがとうございます。』
『あっ…出雲 殺気ですよろしくお願いします。』
『朝早くて、びっくりでしょ?』
さっきは少し微笑んで、
『私…早朝仕事に慣れてるんで…』
『へー…そうなんだ…どんな仕事してたの?』
『ボランティアです、道案内的な…』
と、微笑んだ。
『じゃあ良かった…、さつきちゃんこれで髪の毛束ねるといいよ、ジャガイモは下向くから長いと泥が着いちゃうから…』
と、ゴムを渡す。
『ありがとう…髪束ねるの初めてかも…』
『えっ?…嘘…、結んだこと無いの?』
『あっ…イヤ、久しぶりすぎて…はは…』
『ちょっと貸して…』と、さっきの髪の毛を円はくるくるとまとめてゴムで束ねた。
『へ〜、楽ちんかも…』
円とさっきは、仲良く話しながらジャガイモをケースに入れた。
三滝と弓弦は、明生の側で周りに怪しまれない程度、サポートしていた。
無事にジャガイモの収穫が進み、いっぱいになったケースを倉庫に移動した。
無事に作業が終了し
昼過ぎから、バーベキューをする準備をして、
賑やかに、過ごした。
さっきは嬉しそうに
『弓弦、いつもこんな楽しいのか?イイな…』
弓弦が…
「楽しいよ…でも今日は特別に楽しい日だ。」
他の従業員もみんな、楽しく話している。
しばらくすると、明生さん、愛美さんに円の姿が見えなくなった…
1時間くらいだろうか…
何事もなかったように、明生と愛美の姿があった…
弓弦は直感で理解していた。
明生さんは、自分の余命を家族に話したのだろう…その受け入れ難い事実をどう消化するのだろうか…、
強い人達だな…
さっきが、弓弦の隣りに座った。
『気が付いていると思うけど…弓弦がどれだけ馬鹿だったか思い知った所追い討ちを掛けるが…生きたい人のまわりには、それ以上に生きてほしいと願う人がいる…』
「…。。」
弓弦は涙が止まらなくなっていた。
『お前が泣くと、愛美さんや明生さんの笑顔が無駄になるぞ…ホントに馬鹿だな…』
弓弦は黙って、トイレに向かう…
庭に居る従業員達の目を避け、事務室に入ると…
円が座って、泣いていた…
「え!っ…円さん…すみません!」
と、弓弦が部屋を出ようすると…
『待って!!ゆずるくん…なんで泣いてんの?…ひょっとして…お父さんのこと聞いてた?』
ゆずるは、ドアノブを握ったまま…動けなくなった…
「……。」まどかの顔を見られないまま、何も話せない…
『ゆずるくんは、お父さんの病気の事知ってたの?……。、…おじいちゃんか?…』
弓弦は全ての居場所を失ったような感覚だった…
「すみません…」
『なんで泣いてんのよ…ゆずるくん』
ゆっくりと、まどかの方に振り返った…
少しずつ、近づいてくる円…
「あ…、あの…」
目の前に来た円が、
『なんでゆずるくんが、お父さんのこと先に知ってんのよ…』
弓弦は何も言えず…完全に蛇に睨まれたカエルの心境だった…
弓弦がもう殴られても仕方ないと、諦めた時…
円が弓弦を抱きしめて、泣いた。
『ゆずるくん…ごめん…少しだけ…だから…』
どのくらいの時間だったろう…
円さんが、自分の胸で泣いていた…
その時、溢れた涙は驚きと共に一瞬で蒸発した。
また次回もよろしくお願いいたします。




