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17 その王子、偏屈につき6

鍛錬場に向かうと、軍の兵士たちが鍛錬を積んでいた。そのなかにアランの姿もあった。

アランは、兵士や騎士たちと何やら話をしながら体を動かしていた。どうやら、剣の振るい方などを教えているようだった。


「アラン殿下、変わったよね」


アランを見つめていたエルに、フィリップスが隣からそう話しかけた。エルは、えっ、と声を漏らして彼を見上げた。フィリップスは、エルと目が合うと微笑んだ。


「戦が終わってすぐも、どこか前と違う雰囲気だったけど、怪我が治ってからは前とは比べものにならないくらい柔らかい雰囲気に変わったよ。元はこんな方だったんだなって、みんな驚いている」

「…そうなんですか…」


エルは、うれしい気持ちと安堵の気持ちがにじむ。本当にもう、自分は彼にとっては用がないのだと、そう思った。新しい婚約者を見つけるまでと思っていたけれど、結婚することが唯一で最上の幸せであるわけではないことは自分でもわかっていたはずなのだから、もう彼の心配はもうしなくてもいいのかもしれない、とエルは思う。


「(…いや、いやいやいや、エルとの過去を懺悔し続けるって言ってたのはやっぱり気になる…。やっぱりはやく新しい婚約者を見つけてもらって、私のことは綺麗さっぱり忘れてもらいたい…!)」


エルは、悶々と考えながらも、時折笑顔を見せながら兵士たちと関わるアランを見て、やっぱりもうこのままでいいのかもしれない、とも考えこむ。


すると、エルがいることに気がついたらしいアランが、まわりにいた兵士たちに断ると、エルとフィリップスのそばへやってきた。エルは、前のこともあって気まずい気持ちで頭を下げる。アランも少しやりにくそうな笑顔を見せながら、やあ、とエルに声をかけた。


「鍛錬中に申し訳ありません。その、エドワード殿下から書類をお預かりしておりまして」

「エドワード兄さんから?今日このあと会う約束なのに」

「あ…、その、エドワード殿下は体調を崩されまして、今日はお会いになれないかと…」


エルがそう言うと、アランは何を察したのか、ああ…、とだけ呟いたあと、エルの手から書類を受け取った。エルは頭を下げると、失礼いたします、とアランに告げた。アランはそんなエルに、あ、と声を漏らす。エルは、え、とつぶやくとアランを見た。アランは少し目を泳がせたあと、前はすまなかった、と謝った。エルは、前?と首を傾げた。


「その…マイクが、君に失礼なことを言った。彼にはきつく言っておいたから」


アランの気まずそうな顔に、エルは、前のマイクの話かと理解して時差で気まずくなり、あの、何も気にしてませんから、と苦笑いで手を振った。アランはもう一度、すまなかった、と言った。

フィリップスは、エルとアランを交互に見て、少し考えた顔をしたあと、そういえば、とエルに話しかけた。


「エリィ、お見合いはどうだったの?」


フィリップスにまさかこの話題をここで言われるとは思わず、エルはむせた。フィリップスは、大丈夫?と心配そうにエルに尋ねた。エルは、だ、大丈夫です…、と笑顔で返した。


「(…お見合い…は、よくなかった。あの方と結婚なんかしたくない。…でも、そう言ってしまうとアラン殿下に結婚へのマイナスイメージを与えてしまわないか…)」


エルは短い時間の中でそう思考を巡らせた。少しでも結婚に、新しい婚約者を見つけることに、アランに前向きになってほしい、そんな期待からエルは、とっても素敵な方でした!とはっきり答えた。フィリップスは、目を丸くして固まる。


「優しそうで、お家も立派ですし、私にはもったいないくらいです。あんな方と結婚させていてだけるなんて、本当に幸せです!」


エルはそう答えた。するとフィリップスは眉をひそめた。


「あれ…そんな感じ、なの?」

「え、え?」


フィリップスの困惑した様子に今度はエルが困惑する。お互い見つめ合って困惑していると、アランが、それはよかった、と言った。エルがアランの方を見ると、優しく目を細めていた。


「よかったよ、本当に」


アランはそう、エルに微笑む。エルは、どこか達観した様子のアランに心の中で首を傾げる。アランは、それじゃあ書類の確認をしないといけないから、部屋に戻るよ、兄さんにお大事にと伝えてくれ、と言うと2人の横を通り過ぎていった。エルはその背中を少し心配な気持ちで見つめる。

フィリップスは腕を組んで、おかしいな、と呟く。


「…殿下は殿下でそういう感じなんだ…」

「…あの、何か企んでます?」

「いや、…いらないお節介だったみたいだ。気にしないで」


フィリップスはそう言うと、じゃあ私たちも戻ろうか、と歩き出した。エルはその後を追いかけた。












お使いを終えて、エルはエドワードの部屋に戻った。

エドワードは変わらずに赤い顔をして、荒い呼吸を続けて寝込んでいた。エルは彼のそばに寄り、ぬるくなった布巾を濡らそうと、彼の額から、失礼いたします、と小声で言って布巾を取った。桶に入った水で布巾を濡らし、エルはまたエドワードの額に乗せた。すると、エドワードがうっすらと瞳を開けた。


「あの、…お加減はいかがですか?」


エルはエドワードの瞳を見つめてそう尋ねた。エドワードは高熱からかぼんやりした表情で、お前…、とうわ言のように呟いた。


「お前…エルか…」


エドワードの言葉に、エルは目を丸くした。いいえ違います、と言おうとしたら、そんなわけ、ないか…、とエドワードは呟いた。


「エルはもう死んだ…、なら夢か…」


はあ…、とエドワードは熱い息を吐いて目を閉じた。顔には汗がにじんでいる。


「…可哀想にな、エル…、熱かっただろ…苦しかっただろ…」


エドワードはそう、か細い声で呟いた。エルは、え…、と声を漏らした。エドワードはゆっくりと瞳をあけて、またエルを見上げた。


「あの火事がなければ今ごろ…アランはエルと…結婚して……」


エドワードは高熱のせいかまた苦しそうに眉をひそめて目を閉じた。そして、ああ…、と苦しそうに息を吐いた。


「可哀想に…かわいそう…に……」


エドワードはそこまで言うと、静かな寝息を立てた。エルは、呆然とエドワードを見つめた。これまでのエドワードから考えて、彼がそんなことを言うとは到底思えなかったからである。


「(…私が知らなかっただけで、エドワード様は、本当は…)」


エルは、そんなことをにわかに信じられない気持ちで思った。あの冷たい言動と、人を寄せ付けない彼の態度は、なら一体何だったというのか。


「(…エドワード殿下…)」


エルは、あのエドワードから掛けられた優しい言葉に動揺しながらも、彼の頬を伝う汗を拭い、乱れた布団を整えた。その後もエルはずっと、エドワードの看病を続けた。










数日寝込んだあと、エドワードはようやく回復した。

エルがいつものようにエドワードの着替えの手伝いをしに部屋へ向かうと、もう着替え終わったエドワードがいた。エルは顔を青くして、申し訳ありません、と頭を下げた。


「遅くなってしまって……!」


エルは、定刻通りに来てはいたけれど、平謝りした。するとエドワードは、ああおはよう、と珍しく怒った様子なくエルに言った。


「(…怒ってない?)」

「今日はお前に暇をやろうかと思う」

「え…お休み、ですか?」


エルは目を丸くした。掃除がメインの仕事をしていた頃は定期的に休みがあったが、エドワードの世話係になってからもう3週間ほど続けて働かされていたため、もうこの仕事の間は休みがないものだと諦めていたのである。


「…でも殿下、私がお休みをいただいてしまっては…」

「構わない。今日は城を出る予定だから」

「あ、そうなんですか…」


そう納得しかけて、エルは、ん、と固まる。


「…では、お付きの方はいらっしゃるんですか?」

「……」


エドワードは目線を泳がせて、いなくてもなんとでもなる、と返した。エルは、えっと…、と言葉を探す。


「あっ、誰かとプライベートでお出かけされるんですね」

「……」

「…あの私、余計なことを申し上げてしまって…」


エドワードの負のオーラに押されてエルは頭を深く下げた。エドワードは咳払いをして、教会に行くだけだ、と言った。エルは、教会?と呟いた。


「あの、でしたら私お供いたします。私もお休みをいただけるのならば教会へ行く予定でしたから」

「…それではお前の休みにならんではないか」

「そんなことおっしゃられても、殿下一人で行かせるわけには…」

「……」


エドワードは気まずそうに咳払いをした後、朝食後すぐ向かうぞ、と言った。エルは、はい!と微笑んだ。










エドワードにつれてこられたのは、エルがいつもいく教会ではなく、そこよりも少し後ろから遠い、そして規模の大きい、前に迷い込んだあの教会の方だった。

勝手に教会といえばあの教会だと思い込んでいたエルは、久しぶりにルーナに会えるかもしれないと期待していたために少しがっかりした。


「(…まあ、いつもの教会だったとしても、午後に約束していたから会えなかった可能性もあるし、そもそもルーナが来なかった可能性もある)」


エルはそう残念がる自分に言い聞かせる。

エドワードは馬車から降りると、待っていた教会の担当者と話を始めた。どうやらエドワードは、孤児院の視察に来たようである。普段からエドワードが多額の寄付をしていることも担当者の話から伺えた。


エルは、エドワードと共に担当者につれられて、孤児院へ向かった。子どもたちは楽しそうに自由に遊んでいる。担当者が、エドワード殿下がみえたぞ、と子どもたちに声をかけると、子どもたちはさっとエドワード殿下の方を見た。そして、いつものあの怖い雰囲気のエドワードを見ると、口々に、…こんにちは…、というと、子どもたちは皆物陰に隠れて遠巻きに見つめ始めた。


「(…怖がられてる…)」


エルはそんなことを内心呟いて笑いそうになる。担当者が、こ、こらっ!お前たちはいつもいつも…!と叱るが、エドワードは、眼鏡を直して咳払いをすると、構わん、とぶっきらぼうに言った。

担当者は子どもたちの方へ向かい、いいから普通にしていなさい、と子どもたちを諭した。子どもたちは、しかし担当者の話は聞かずに隠れ続けている。


「…親のいないこどもたちがここで暮らしている」


エドワードがそう、物陰に隠れる子供たちの方を見て言った。エルは、エドワードを見上げた。エドワードは小さく息を吐いた。


「…他国は今、こことは比べものにならないくらい孤児で溢れているらしい。なぜかわかるか?」

「ええと……ごめんなさい…、わかりません」

「今世界は、他国と戦争して攻め入ることで国を大きくする方向に舵を切っている。絶えず戦争が起こり、その結果兵士として駆り出された親が死に、…または、攻め込んだ敵国の兵士に親が殺されて、…孤児がどんどん増えている。もちろん、子どもも戦争の中でたくさん命を落としている」


エドワードは目を伏せて一度深呼吸をした。


「戦争は、強い者が勝手に始めて、弱い者が真っ先に割を食うんだ。そんなものを進める国に、この国はなってはいけない。…いけないが、アランの結婚相手次第ではどうなるかわからん」

「…それは、どういう…」

「パーク侯爵は常々、この時代の流れに乗って、他国と積極的に戦争をすることを勧めている。先の隣国との戦争で大勝したことが、この国をその風潮へと煽っている。大きな戦果をあげて、しかもまた以前のように戻ってきたアランと、パーク侯爵家のような大きな家の娘との結婚が決まれば、…兄上が次の国王だと確実視されていたのが揺らぐ。アランが王になり、パーク侯爵家が王家との繋がりをもってさらに力を持てば、この国も、戦争を繰り返す他国と同じ道を選ぶだろう。アラン本人は誰とも結婚する気がないと言うが、そんなことが許されるのかもわからん」


エドワードは深いため息をついた。エルは、言葉が見つからずに目を泳がせる。エドワードはそんなエルを見つめた。


「…ずっと誰かに似ていると思っていたんだ、お前、エルにそっくりだな」 


エドワードはまじまじとエルの顔を見た。エルは苦笑いを漏らして、よく言われます、と返した。エドワードはエルの方を見てほんの少しだけ目元を細めたあと視線をそらした。


「エルが生きていたら、と思う。パーク派の不安がなくなるだけが理由じゃない。…エルがいればアランは一人じゃなかった。あいつは昔から、人懐っこそうに見えて他人と線を引く奴だった。幼い頃に受けた仕打ちのせいだろう、他人を信じられないんだ。それでも、エルといる時だけは、年相応の少年の顔をしていた。エルがいればアランは、つい最近までのような様子にもならなかっただろうし、今みたいな、どこか心がここにないような様子にもならなかっただろう。…兄として心から気の毒に思う。もう誰とも結婚したくないと言うあいつの気持ちもわかる。…まあしかし、結婚しないなんてことは恐らく許されんだろうがな」


そう言ったエドワードに、エルは胸が締め付けられる。他人事の顔をしなくてはいけなかったエルは、あの、と話を変えようとエドワードのほうをみた。 


「エドワード殿下も、結婚しないなんてこと、許されないのでは?」


エルが言うと、エドワードは、う、と言葉を詰まらせた。一度目を伏せたあと、小さく息をつき、空を見上げた。


「…そうだな、もう俺もいい加減、身を固めるべきだな」


エドワードの言葉が意外で、エルは目を丸くした。咄嗟にエルは、それって、と口を開いた。


「ロゼ様にプロポーズしようとしていたら結局できなかったから、ですか?」

「………」

「……申し訳ありません、出過ぎたことを申し上げてしまいました……」


ついそんなことを言ってしまった非礼を詫びて、エルは頭を下げた。エドワードは咳払いをした後、またため息をついた。

2人の間に気まずい空気が流れていると、そうだ、と子どもたちのところにいた担当者が戻ってきて口を開いた。


「本日はアラン殿下もいらしているんです」

「アランが?」


エドワードが少し驚いたように言った。すると、建物の中から、子どもたちに囲まれて歩くアランが出てきた。アランの姿を見ると、物陰に隠れていたこどもたちが嬉しそうに、アラン殿下だ!と声を上げると、彼のもとへ一斉に走っていった。


「(…エドワード殿下との落差が……)」


エルは恐る恐るエドワードを見上げる。担当者も気まずそうにエドワードを見ている。エドワードはまた咳払いをする。すると、アランがこちらに気がつくと、近づいてきた。


「兄さん、に、君も?」


アランがこちらを見て驚いた顔をした。エドワードは、定期の視察に来ている、お前は、と聞いた。エドワードのぶっきらぼうな声に、子どもたちはアランの後ろに隠れた。そんな子どもたちの様子に、またエドワードは咳払いをした。

アランは、後ろに隠れる子どもたちに苦笑いを漏らしたあと、俺も視察…みたいな、と言った。エドワードが首を傾げた。


「みたいな?」

「…前に、エドワード兄さんの真似をしてここに視察に来たら、ここの子どもたちと仲良くなって、また来るって約束したから、それを果たしに」

「また来てね!まただよ!!」


子どもたちがそうアランにせがむ。アランは、ああ、と返す。喜ぶ子どもたち。エドワードはそんな様子に羨ましそうに目をそらす。エルはそんなエドワードに苦笑いを漏らした。








子どもたちと別れを告げて、エルとアランとエドワードの三人は、教会の中庭に来た。


「…にしても、どんな風の吹き回しだ?」


エドワードがアランに尋ねた。アランは目を伏せたあと、…うん、と少し悲しそうに笑った。


「俺にもなにかできることがあればって」

「国を守る仕事をしているじゃないか」

「うん、でも、剣をふるってばっかりっていうのもさ」


アランはそう言って小さく笑う。エルは、この空気が苦しくて、あの、とエドワードに言った。


「私、少しお祈りをしてきてもよろしいでしょうか?」

「ああ、構わん。お前の教会の用はそれか?信心深いんだな」

「ああ、ええと…彼の国へ行かれたミシェル様の幸せをお祈りしておりました」

「ミシェルの?」


エドワードは、そういえば、全く連絡がないな、と呟く。 


「父上の体調が芳しくないから、一度顔を見に来たほうがいいと何度も連絡しているが、体調が悪いの一点張りだな」


向こうでうまくやっていればいいんだが、とエドワードが続ける。エルは、え、と声を漏らした。


「な、なにか、お体を壊されているんですか?」

「深刻なものではないらしい。…連絡はとっているが、なにせ俺はあいつから懐かれていないからな」


今度はアランが手紙を出してくれ、とエドワードが言うと、わかったよ、とアランは頷いた。

エルは、急に不安になってきたけれど、どうもしようがないため、とにかく今からお祈りをしようと、教会の方へ向かった。


すると、エルの前に大きく色鮮やかな蝶々が飛んだ。エルが、あ、と声を漏らしたとき、わあああっ!という声が背後からした。振り向くと、エドワードが腰を抜かしていた。エルとエドワードの目が合い、しばらくの沈黙が流れたあと、エドワードは咳払いをすると何事もなかったかのように立ち上がった。


「なにか?」


エドワードは真顔でそうエルに尋ねた。エルは恐ろしくなって頭を横に振り、なにも、と答えた。するとアランが、小さく吹き出した。


「兄さん、本当に虫が苦手だよね」

「煩い。いい思い出がないだけだ」

「なにか悪い思い出があるの?」

「……」


エドワードは黙り込むと、小さく咳払いをした。


「…虫が苦手な女性に花を用意して、その中に蝶々がいたのを知らずに渡してしまい、泣かせてしまったことがある」


エドワードが苦々しそうな顔をしてそう言った。アランが、え、と声を漏らした。


「…兄さんってそんなことするんだ…」

「6歳の時だ」

「6…」


アランが、思ったより昔だった…、と呟いた。

エドワードは重いため息をついた。


「…思えばその時から、人との、特に女性との距離の取り方を分からずにいる。…また泣かせたらと思うと、先に威嚇して、相手を遠ざけてしまうほうが楽だったから」


エドワードがそう呟く。エルは、そんなエドワードに目を丸くする。彼のあの言動は、過去のトラウマから態とやっていたのだと、そのことが驚きだったからだ。

そしてエルは、エドワードの話に聞き覚えがあった。


「(…それって、ロゼ様が言っていた……)」


エルはエドワードの方を見て口ごもる。エドワードが、そんなエルを見て、なんだ、と言った。エルは、ええと…、と目を泳がせる。


「(…本当はロゼ様にとっては素敵な思い出になってるんだって伝えても、…それはエドワード様を苦しめることにならないだろうか…)」


もうロゼは来週には別の人と結婚してしまうのだ。それなのに、そんなことを今更知ったところで、エドワードにできることなどない。煮え切らない態度のエルに、エドワードが怪訝そうな顔をする。


「…なんだ、笑いたければ笑えばいいぞ、どうなっても知らんがな」

「あっ、そ、そんなつもりはなくって!」

「ならなんだ」


エドワードがじっとエルを見つめる。エルは、あの…、その…、と言葉を濁らせる。


「…エドワード兄さんがこれまで自分に対して怖かった理由がわかって驚いたんだよね」


アランがそんな助け舟を出した。エルはそれに速攻で乗っかり、はいそうです!と頷いた。エドワードは、そんなに怖かったか…、と不服そうに言った。アランは苦笑いをすると、ほら、お祈りに行ったら、とエルに声をかけた。エルは、はい、と頷くと、教会の方へ向かった。

歩きながらエルは、本当に言わなくてよかったのか、いや、言わなくて正解だった、という考えを巡らせていた。

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