47.暗闇の中で
本田啓介と杉田洋三郎は、南にある映画館に戻っていた。映画館の中は、真っ暗な闇に包まれている。
「この椅子なら眠れるな」啓介は映画館のロビーにある革張りの椅子を並べた。
「クッションがあるからベッドみたいだ」洋三郎は椅子を並べた即席のベッドに横たわった。
「洋三郎、あんまり気にするなよ」
「何がだ?」
「不倫事件のことだよ」
「気にしちゃいないさ」
「そうか? お前は怒ると見境がなくなる。もう少し冷静になれ」
「さっきの女の話か? あの女はムカついたな。でも、これで正真正銘、人殺しだ。すっきりしたよ」
「まぁ、確かにな」
「あの頃、選挙期間中だったろ? 俺はいいようにスケープゴートにされたと思っている」
「それは俺も思った。なんで選挙中に不倫事件なんか特集するのかって」
「日本人のヘイトを俺に向けたんだ。マスコミも政治家もマジで信用ならねぇ」
「それは一理あるな」
「まぁ、冷静になれって話は聞いておく」
「そうだな」
洋三郎は椅子を並べた即席のベッドの上で目を閉じた。だが、眠ることができなかった。
「眠れないのか?」啓介が尋ねた。
「あぁ」
「俺も眠れない」
「体は疲れているはずなんだが」
「そういうこともあるさ」
「不思議だよな。なんで眠れないんだろう?」
「考えても仕方のない話さ」
二人は黙ったまま、眠れない夜を過ごした。
>>登場人物
本田啓介33歳
杉田洋三郎34歳
>>設定資料




