決意のメッセージ
「今、メッセージ送るね」
ヒミコは同意するように頷き、静かな期待を浮かべながら自分の席から見守っていた。片手はまだ緩く紅茶のマグカップを握ったままだった。
バイオレットは自室へスマートフォンを取りに戻った。引き出しが閉まる小さな音が、静かなシェアハウスの中に一瞬だけ響く。それからダイニングへ戻ってきた。木の床を踏む足音は軽かった。
しかし戻ってきたバイオレットは、しばらくの間ただ画面を見つめて立ち尽くしていた。表情は読み取れなかったが、姿勢にはさっきまでなかったわずかなこわばりが滲んでいた。ダイニングの灯りが、動かない彼女の姿を柔らかな黄色の光で照らしていた。
「ヴィオ、どうしたの?」ヒミコが飲みかけの紅茶を置き、ちゃんと友人の様子を見ようと顔を上げた。
バイオレットは画面から目を離さなかった。親指はキーボードの上をさまよったまま、一文字も打ち込めずにいた。
「赤和女さんへのメッセージ、どう書けばいいのか分からなくて」ようやくそう認めた声は小さく、羞恥に近い響きを帯びていた。
友人がそんなに長い間スマートフォンを握りしめて立ち尽くしていた理由を聞き、ヒミコは小さく笑い声を漏らした。からかうというより温かい笑いで、友人の考え方の癖をよく知っている者の笑いだった。
「ほら、手伝ってあげる。あなた、こういう堅い場面になるといつも苦手なんだから」
バイオレットはようやくヒミコの隣の椅子に腰を下ろし、スマートフォンを手渡した。渡す前に指が一瞬端末の上に留まる。小さいけれど大事な何かの主導権を手放すのを渋っているかのように。腰を下ろした拍子に椅子が小さく軋んだ。
「こう返信するの。『赤和女さん、正式に加わるかどうか決める前に、まずこの仕事を試してみたいと思っています』って」ヒミコはすらすらと言葉を並べた。まるで似たようなメッセージを百回も作ってきたかのようだった。
バイオレットは友人がこちらを振り返り、次の指示を待つ様子を見ていた。表情には目のわずかな注意深さ以外、何も表れていなかった。
「私だったら、まだはっきり加わるとは言わない。まずは試してみたいって言うだけにする」
ヒミコはテーブルの滑らかな表面を滑らせるように、スマートフォンを彼女へ返した。
「あなた自身、彼と一緒に働くのがどんな感じになるか、まだ分からないでしょ?」
バイオレットはそこでヒミコに質問を返した。いつもの寡黙さを一瞬突き破るような好奇心だった。
「あなたはもう、赤和女さんに送ったの?」
ヒミコがため息をつくのを、バイオレットは見ていた。その音には、本人が見せたかった以上の疲労が滲んでいた。肩がわずかに落ち、その問いが触れたくない何かに触れたかのようだった。
「ヴィオ……いい? 堅いメッセージって、あなたが思ってるほど難しいものじゃないよ」
ヒミコは手を挙げ、指を使って一つずつ説明していった。バイオレットに何か不慣れなことを教えるときいつも見せる、あの辛抱強い、ほとんど先生のような表情で。声は昔から何度も繰り返してきた講義のような、自信に満ちた調子へ滑らかに変わっていった。
「まず、相手に挨拶する。それから、なぜ連絡したのかを説明して、何を望んでいるかをはっきり伝える。もう一度会いたいなら、いつ空いているか聞けばいい」
バイオレットはヒミコの挙げた指を一本ずつ、いつも会話ではなく読書のときに向ける静かな集中力で追っていった。
「今はそれだけで十分。難しく考えすぎないで」
バイオレットはそこで首を傾げた。困惑は明らかで、普段滑らかな表情の下で眉がわずかに寄り、指先が無意識にテーブルの端を軽く叩いていた。
「あなたがいるじゃない。今まで問題になったことなかったのに」
友人がスマートフォンをダイニングテーブルに置き、片手で頭を支えるように肘を木の面につくのを、彼女は見ていた。いつもの元気がわずかに沈み、より物思わしげなものへと変わっていく。
「ヴィオ、私だっていつも隣にいられるわけじゃないよ。私以外の人にも頼ることを覚えないと」
バイオレットはただ黙り、何の反応も見せなかった。視線は二人の間のテーブルに置かれたスマートフォンへと漂っていった。
「新しい友達、同僚……もしかしたら、もっと特別な誰かとかね」
友人の言葉に彼女は完全に同意できなかったが、その反発をいつもの静けさの奥に慎重に隠したまま、腕を軽く胸の前で組んだ。それだけで話を片付けられるとでもいうように。
「私一人で何とかできる。だったら、慣れるまであなたから学び続けるだけでいい」
ヒミコは首を横に振り、バイオレットのスマートフォンをまた手に取った。表情がより真剣なものへと変わり、先ほどまでのからかい混じりの雰囲気は一旦脇に置かれ、友人ではなく先生の役割に落ち着く。
「よく見ておいて。今回だけ、お手本見せてあげる」わざと大げさに、状況にそぐわないほど重々しい口調でそう言った。
彼女の指は画面の上を素早く、迷いなく動いていった。ダイニングはガラスに爪の触れるかすかな音と、廊下の奥から届く冷蔵庫の低い唸り以外、静かなままだった。
しばらくして、彼女は結果をバイオレットに見せた。画面をわずかに傾け、友人がすべての文字をはっきり読めるようにする。
「赤和女さん、こんばんは。本日はお時間いただきありがとうございました。ご提案について検討した結果、正式に加わるかどうかを決める前に、まずは一緒にお仕事を試させていただきたいと思っています。次回お会いする際に、今準備している作品もお見せしながら、詳しくお話しできればと思います」
ヒミコはスマートフォンをバイオレットに返した。テーブル越しに差し出すのではなく、開いた手のひらの上にそっと置く。
「あとは自分で、会う時間について続きを考えてみて。もう組み立て方は分かったでしょ?」
バイオレットは頷き、送信した。親指が画面を押す動きには、その晩見せた中で一番の確信があった。
送った直後、彼女はしばらくの間、メッセージの下に現れた送信確認をただ見つめていた。どこかで後悔がちらつくのではと半ば身構えていた。しかし何も来なかった。ただ、肋骨の奥にどこか馴染みのない、奇妙な落ち着きが広がるだけだった。
送信を終えると、ヒミコはまったく別の話題を持ち出した。
「んー……ヴィオ。前に、小説で行き詰まったら手伝ってって言ってたよね?」
バイオレットは頷いた。ほとんど気づかないほど小さな動きだったが、意識は手の中でまだ温かいスマートフォンに向いたままだった。
「だったら、こういう堅い連絡の仕方も、もっと上手くなるよう手伝ってあげる」
からかいの奥に、本物の温かさがヒミコの声に滲んでいた。本当に大切に思っている相手にだけ向ける類のものだった。
バイオレットは頷いた。表情はいつも通り平坦だったが、目の奥にはもう少し静かで確固たる何かが宿っているように見えた。
メッセージはついに送信された。
外では、シェアハウスの周りはさらに静けさを増し、夕方はすっかり夜へと落ち着いていった。バイオレットのスマートフォンの光が、薄暗いダイニングの中で一番明るいものになっていた。二人は並んで座ったまま、珍しくすっかり心地よい沈黙の中に身を委ねていた。
初めて、その決断は本当に彼女自身の手から生まれたものだった。




