借金取り――それが俺の最初の才能だった
部屋の中はあまりにも静かだった。人が生活しているとは思えないほどの静寂が、四畳半のアパートに重く沈んでいる。彼はベッドに身を投げ出し、答えの一つも浮かんでこない天井をただ見つめ続けていた。
事務所のパンフレットを東京中に配り始めてから、すでに半年が過ぎていた。それでも応募は一件も来ない。
投資家からの連絡もなく、スポンサーの返信もない。届くのは支払い通知だけで、銀行口座は週を追うごとに薄くなっていった。
「……なんでだよ」呟きは誰にも届かず、空っぽの部屋に吸い込まれて消えた。
このアパートを契約したとき、彼が描いていた未来は違った。ここは仮の事務所にすぎず、いずれクリエイターたちが並んで作業する本物の会社への第一歩になるはずだった。
その夢は、いつの間にか高い家賃を払うだけの物置に成り下がっていた。マットレスが置いてあるだけの、ただの倉庫だ。
視線を部屋の奥へ移す。デスクの上には二台のモニターが並び、無数のタブが開かれたままになっていた。
VTuberとその視聴者のために作った専用のプラットフォーム。開発途中のVTuberモデル数体。何ヶ月もかけて改良を続けてきたAI駆動のリギングシステム。さらに別のフォルダには、日本語と英語で書かれた小説の原稿が保存されていて、すでに数千人の読者を集めていた。
百万人には遠く及ばない。十万人にすら届いていない。それでも、自分の作ったものを本気で楽しんでくれる人がいる証拠は確かにあった。
だからこそ、たった一つの疑問が残った。なぜ誰も、この場所に加わろうとしないのか。
「小説は自分で書いた」上半身を勢いよく起こす。「リギングシステムもゼロから作った」指をパソコンに突き立てる。「サイトも全部自分で構築した」もう一本の指が加わる。「モデルだって自分で発注した」声が次第に大きくなっていく。「――で、俺に何が足りないっていうんだよ!」
部屋は何も答えない。返ってくるのはただの沈黙で、それは辛抱強く、そして無関心だった。苛立ちのままクッションを引き寄せ、顔を押し付けて何週間も溜め込んできた叫びを押し殺す。人生というものは、彼の見解では一度たりとも公平だったことがない。
数分後、ようやくマットレスから転がり落ちた。ドサッ。カーペットが体を受け止めたが、衝撃も気分も和らげるには到底足りなかった。
腹が大きく鳴った。まるで他の全員と手を組んで、今日という日を台無しにしようとしているようだった。上等だ。自分の身体まで敵に回ったらしい。
ピンポーン。
体が固まった。
ピンポーン。
表情が一瞬で険しくなる。
「いや」床に座り込んだまま呟く。
今日は支払い日ではなかったはずだ。……だったはずだ、と思う。正直、もう自分でも把握できていなかった。財布の中身が底を尽きすぎて、毎日が締め切りと変わらなくなっている。
背後のパソコンにはまだ画面がついていた。左半分に日本語、右半分に英語を並べた翻訳文書。海外の読者へ届けようとしていた試みは、数時間前に文の途中で放棄されている。
ピンポーン。
「今出ます!」怒鳴りながら玄関へ体を引きずっていく。
かつて持っていた忍耐は、未払いの請求書が何枚も積み重なるうちにどこかへ消えていた。
ドアを開けた瞬間、抑えていた苛立ちが一気に噴き出した。
「まだ金がないって言ったじゃないですか!!」
バン。
すぐにドアを閉めた。
静寂が戻り、彼は安堵に近いため息をついた。「よし。一件解決」
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。
こめかみに血管が浮いた。「なんでこの人、諦めないんだよ……!」本気で苛立ちながら、今度こそはっきり言ってやろうと再び玄関へ向かう。
勢いよくドアを開ける。「あんた馬鹿なんですか!? だから――」
言葉が途中で凍りついた。頭の中も同時に止まった。目の前に立っていたのは、想像していた借金取りではなかった。二ヶ月前、あのコンビニにいたレジ係だった。
一瞬、誰なのか分からなかった。制服姿はどこにもなく、代わりにレースとリボンで縁取られた黒いゴシック調の服を纏っている。長い黒髪が胸元に緩く垂れ、その表情はどんな怒った客よりも読み取りづらく、それがなぜか恐ろしく感じられた。そして――嫌になるほど見覚えがあった。
記憶が一気に呼び戻される。水のペットボトル、サンドイッチ、二百八十五円。
「……あ」血の気が完全に引いたあと、今度は一気に頬へ戻ってきて、顔全体が熱を帯びた。
彼女は何も言わず、静かにこちらを見つめている。それがむしろ、何を言われるよりも堪えた。ゆっくりと鞄に手を入れ、折られた一枚の紙を取り出す。
見覚えのある紙だった。自分の署名が入った借用書。二百八十五円と丁寧に書かれている。二ヶ月間、完全に忘れていた借金だった。
このとき、彼は本気で床が割れて自分を丸ごと飲み込んでくれないかと願った。
彼女がようやく口を開いた。「あなたに借りている二百八十五円、返してもらいに来ました」
顔が一気に赤くなった。借金そのものより、まったく別の相手に何分も怒鳴り続けていたことが恥ずかしかった。
「本当にすみません!」勢いのまま頭を下げ、続けてもう一度、さらに三度目まで頭を下げる。もはや謝罪なのか、恥ずかしさで体を折り曲げているだけなのか自分でも分からなくなっていた。
「別の人だと思い込んでいて……!」
もう一度頭を下げる。「今すぐお返しします! 失礼な態度を取ってしまったお詫びもさせてください!」
玄関先に立つ彼女は、二ヶ月前の初対面のときと同じくらい落ち着いていた。赤みを帯びた黒髪が胸元に緩く垂れ、ゴシックな装いはこの何の変哲もないアパートの通路には明らかに不釣り合いだった。
小さな紙は今も彼女の手の中にあり、そこには彼の署名と約束、そして今となっては彼の羞恥まで一緒に刻まれているように見えた。
長い沈黙のあと、彼女は再び口を開いた。「お詫びは必要ありません」
アカメの体が完全に固まった。その返答は、怒られることよりもずっと恐ろしかった。金を求められるなら分かりやすい。対処もできる。しかしこれは、まったく別の何かだった。
「け、警察には……怒鳴ったことも、返済が遅れたことも、通報しないでいただけますか」思わず口から零れ出た。「できることは何でもしますから、どうか勘弁してください」
彼女の目がわずかに細くなった。「何でも?」
言葉選びを即座に後悔した。「そ、その……はい」ごくりと唾を飲む。「もちろん、常識の範囲内で」
沈黙が続いたあと、彼女はその言葉をゆっくりと繰り返した。
「何でも……」ただ返されただけの言葉が、どんな直接的な脅しよりも危険に響いた。
「は、はい」弱々しく答える。
短い間を置いて、彼女は首を横に振った。「それでは時間がかかりすぎます」
「……え?」
「あなたの事業が実際に利益を出すまで待つとしたら」
彼はうなだれた。「……確かに」その一言に反論の余地はなかった。
彼女はしばらく彼を見つめ続けたあと、ようやく続きを口にした。「あなたの提案について、考えていました」
彼は困惑して瞬きをした。「提案?」
「もう一つの話です。二ヶ月前の」
記憶が一気に戻る。借金のことではなく、あの日必死に頼み込んだ人材勧誘の話だった。「……え?」
「あなたの提案について、考えていたんです」彼女は落ち着いた声でもう一度繰り返した。
聞き間違いだと思いたくて、彼はもう一度尋ねた。「すみません、もう一度言っていただけますか」
その言葉は、残っていたわずかな余裕にまで直撃した。
「あなたのことは今でも変な人だと思っています」彼女は続けた。
「それに、この事務所が本当に成功するかどうかも分かりません」
もう一つの打撃が続く。
「この二ヶ月間、あなたの活動をこっそり調べていました」彼の体が完全に固まった。
「あなたのVTuber事業のことです」彼女は淡々と言い添えた。声は最初から最後まで安定していて、表情もコンビニで初めて会ったときと変わらなかった。
しかし、その言葉自体は現実味を欠いていた。彼女は断っていない。だが受け入れたわけでもない。それでも、明らかに興味を持っている。
彼女は再び鞄に手を入れ、見覚えのあるものを取り出した。パンフレット、名刺。それを見せながら、名刺に印刷された名前を指先で示す。借用書の下に丁寧に書かれた同じ名前だった。
赤女 赤和女
彼はただ呆然とした。何ヶ月ぶりかで、自分の名前が他人の口から出るだけでこんなに奇妙に響くとは思わなかった。
「赤和女さん」彼女は言った。眼差しがはっきりと鋭くなる。「事務所には才能が必要だと言っていましたね」
「……はい」
「文章を書く人が必要だと」
「……はい」
「あなたのプラットフォームに命を吹き込む人が必要だと」
「……はい」答えるたびに声が弱くなっていく。
彼女は一度、はっきりとうなずいた。「私が、あなたの最初の才能になります。あなたの事務所のために小説を書きます――あなたに貸したお金を、完全に返してもらうまで」
心臓が大きく跳ねた。半年間の完全な沈黙、何百通もの無視されたメッセージ、天井を見つめて過ごした無数の眠れない夜。そしてついに、この起業の最初の才能が、目の前に立っていた。
「ただし」彼はすぐに背筋を伸ばした。「は、はい?」
「あなたが全責任を持ってください」彼女は目を逸らさずに言った。
「責任、ですか」
「私を有名にしてください」彼の体が完全に固まった。「私の小説を成功させてください」もう一つの直撃が正面から命中する。「それと――二百八十五円、まだ返してもらっていませんから。忘れないでください」
アカメの頭の中は完全に真っ白になった。半年間の失敗、何百通もの無視されたメッセージ、終わりのない眠れない夜。そしてついに現れた最初の才能は、勧誘の成果としてではなく、ただ未払いの借金を取り立てるためだけに、この扉の前に立っていたのだった。




