バイオレットの花
「わかりました、赤和女さん」
バイオレットはしばらくユナ・アルテメシアの初期デザインを見つめたあと、NECのLaVieタブレットをアカメへ返した。カフェの中は午後じゅうずっと変わらない、低い話し声とカップの触れ合う音の混じり合いに包まれていた。カウンターの近くでバリスタが注文を呼ぶ声がしたが、その名前はエスプレッソマシンのシューッという音に半分かき消されていた。
その短い返事は、アカメが思っていた以上に、胸の重みをいくらか軽くしてくれた。一瞬、目に光が宿ったが、すぐにその表情を慌てて引き締め、テーブルの下でズボンの膝を片手で撫でつけながら、あくまで仕事らしい態度を保った。
「それでは……合意ですね」
アカメはタブレットをテーブルの上に置いた。画面が手のひらの下で暗くなる。そして再びバイオレットへ視線を戻した。
「では、どんなイメージを目指しますか。それに、実際にどんなコンテンツをやってみたいと思っていますか」
バイオレットはすぐには答えなかった。表情はいつも通り平坦だったが、アカメには、彼女が自分を無視しているのではないことが分かっていた。初めて会ったときから、バイオレットが黙り込むときは、言いたいことを頭の中で組み立てている最中なのだと理解するようになっていた。視線は彼の肩のあたりをわずかに越えたところに漂い、考えを整理している様子だった。それは、これまで人材面接をするときも、同じようなテーブルを挟んで投資家と話すときも、彼が何度も目にしてきた癖だった。
数秒後、バイオレットはもうすっかり冷めたアメリカーノを持ち上げた。
「まだ、はっきりとは決められていません」
彼女は一口コーヒーを飲んでから、彼のほうへ視線を戻した。苦味が舌の上にかすかに残る。
「すみません、少し喉が渇いていたので」
カップを卓上に戻すと、陶器の触れ合う小さな音が、間の静けさを区切った。
「私は……小説家として、VTuberをしながら自分の作品について話すことを中心にしたいんです」
アカメはゆっくりとうなずいた。ペンはまだノートの脇で動かないままだった。それはまさに、彼が彼女から聞きたかった答えそのものだった。それでも、彼女の表情には何かを隠しているような気配があった。ほんの少し前にはなかった、口元の緊張だった。
案の定。
「赤和女さん……VTuberには色々なことができると分かっています」
バイオレットは静かに息を吐き、カップの底をわずかに指先で握った。
「……あなたを失望させてしまうのが怖いんです。期待に応えられなかったら、と」
彼女は続ける前に一度言葉を止め、視線を二人の間のテーブルへ少しだけ落とした。
「それに、正直分かりません……私みたいに退屈な人間を、誰かが見たいと思うでしょうか」
アカメはすぐには答えなかった。バイオレットが疑っているのは、キャラクターデザインそのものではなく、彼女自身なのだと彼には分かった。それでも、その特定の不安については、まだ深く踏み込むには早すぎると感じていた。他にもまだ、二人の間で決まっていないことがたくさん残っていたからだ。
「そんなふうに考える必要はありません」
アカメは椅子に少し寄りかかった。木がかすかに軋む音がする。
「もう了承していただいたわけですから、僕はあなたのマネージャーということになりますよね、姫星さん」
バイオレットは平坦な表情を彼へ向けたまま、動じなかった。
「では、一つ聞かせてください」
アカメは小さく笑みを浮かべた。
「たくさんの視聴者がついたとき、自分が何を考えているか想像してみてください。彼らの前で、何をやってみたいですか」
バイオレットは再びしばらく黙り込んでから、ようやく口を開いた。指先が一度、陶器を軽く叩いた。
「……それは、まだ確定していないことですよね」
アカメの口から思わず短い笑いがこぼれ、慌てて手で口元を覆った。
「すみません、姫星さん。笑ったのはあなたのことじゃありません」
彼は微笑んだまま、軽く首を横に振った。
「ただ、少し言葉通りに受け取りすぎているように感じただけです。想像してみてほしいとお願いしただけなのに、もう視聴者が本当についてくれるかどうかを心配し始めていますよね」
アカメはテーブルの上のタブレットを指し示した。画面はもう暗く、静止したままだった。
「それに、カメラの前で使うキャラクターも、まだ完成させていません」
彼は温かく微笑んだ。
「一番大切なのは第一印象です。第一印象は言葉だけで決まるものではありません。見た目からも生まれます。だからこそ、魅力的なキャラクターデザインは、カメラの前で話すときに大きな助けになるんです」
「魅力的で個性のあるキャラクターデザインは、大勢の前やカメラの前で話すときの、その人自身の足りない部分を補ってくれることもあります」
アカメは一瞬言葉を止め、テーブルの端を指先で軽く叩いてから続けた。
「でも、一番大切なのは、まず自分自身を信じることです。だからこそ、最初の配信のときや視聴者がまだ少ないときのことではなく、すでに大勢の視聴者がついた状態で、自分が何をして、何を話しているのかを想像してほしいとお願いしたんです」
そう言ったあと、アカメはバイオレットの答えを待ちながら、湯気の立たなくなった緑茶をまた一口すすった。
数秒が過ぎ、カウンターの奥でエスプレッソマシンが一度シューッと音を立てた。
それはやがて一分近くにまで伸び、アカメが近くの客のグラスの中で氷がかすかな音を立てて崩れるのに気づき、二つ隣のテーブルで椅子の脚が床を軽く擦る音を耳にするほど長く続いた。
もっとも、今のアカメは、こうした間には慣れ始めていた。バイオレットが何かに答えようとするとき、彼女はいつも先に言葉を組み立てる時間を必要とし、それを急かさないほうがいいのだと、彼はすでに学んでいた。
ようやく、バイオレットが再び口を開いた。
「……花が好きなんです」
アカメは顔を上げた。ペンが、ようやくノートの脇から持ち上がる。
「花屋を営む家庭で育ちました」
彼女は続ける前に一度間を置き、親指でカップの縁をなぞった。
「ユナ・アルテメシアはとても美しいです。でも、テーマはもっとダークなものにしたいんです。黒以外の暗い色でも構いません」
少しずつ、バイオレットの頭の中にある絵が、アカメの中でも形になっていった。デザインそのものすべてを変えたいわけではなく、キャラクターの雰囲気とアイデンティティだけを変えたいのだと。
「それでは……名前自体は問題ないということですか。バレエダンサーという設定も、それはそのままで構いませんか」
バイオレットは軽く首を横に振った。
「いいえ」
彼女の視線は、テーブルの上の『クラストボーン』と書かれたノートへと戻っていった。
「基本的には、話すことを中心にしたいと思っています。ゲームをするときでも、ラヴクラフトの作品や、そのゲームの世界観について語り続けたいんです」
彼女は再びアカメを見上げた。
「花をモチーフにした衣装をまとう作家、というだけで十分だと思います」
アカメは小さくうなずいたが、まだ一つ、腑に落ちない部分があった。
「花……どの花ですか」
バイオレットの答えは、ためらいなく返ってきた。
「ヤグルマギクです」
「……あるいは、バチェラーズボタンとも呼ばれています」
アカメはまた黙り込んだ。その花の名前は、彼にとってまったく馴染みのないものだった。それを正直に認めたい衝動を、なんとか抑え込んだ。
あとで絵師の作業を複雑にしてしまうよりはと、彼はもっと単純な提案を選ぶことにし、ノートの上でペンを置いた。
「姫星さん」
「あなた自身の名前を使うのはどうでしょう。バイオレット」
アカメはかすかに微笑んだ。
「それも花の名前ですから」
バイオレットは長い間、何も言わなかった。テーブルの向こうで、表情は読み取れないままだった。
アカメは辛抱強く待った。カフェのざわめきが、二人の間の沈黙を埋めていった。
だが数秒後、彼女はゆっくりと首を横に振った。
「それは、あまり……」
「すみません」
アカメは、自分でも気づかないうちに彼女の言葉を遮っていた。すぐに椅子に座ったまま小さく頭を下げて謝り、それから改めて、心からの誠実さを込めてバイオレットを見つめ直した。
「失礼に話を遮ってしまって、すみません」
彼はゆっくりと息を吸い、肩の緊張を少し緩めてから続けた。
「バイオレットの花をテーマに手直しすれば、きっとユナのデザインを気に入ってもらえると思います。それに、第一印象としても強く残るはずです」
アカメは軽く首を横に振った。
「だから、他の人が自分を面白いと思ってくれるかどうか、あまり心配しすぎないでください」
温かい笑みが、彼の顔にゆっくりと戻ってきた。
「ただ、自分らしくいてください」
「それだけで、VTuberとして始めるには、もう十分すぎるくらいですから」




